訊きたい事
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「──で? 何か言う事は???」
「おぅ、出迎えご苦労!」
『ごめ"い"わ"ぐを"おがげじでずみ"ばぜん"でじだ』
(訳:ご迷惑をお掛けしてすみませんでした)
ジャバウォックの『隔絶』を解除し、『境界』へと戻ったオレとキメラに社長を始め、綾ちゃん達が心配そうに駆け寄って来たのだが──。
──皆、キメラの顔面を見た瞬間……一様に表情が固まったのだ。
ああいや、社長と綾ちゃんは顔を若干赤くしていたな……なんでだ???
「如月は後で覚えてなさい? でも、私達が今訊きたいのはそんな事じゃないのよ!」
「はぁ? じゃあ何を訊きたいんですか??」
そう訊き返すオレに、千尋さんは『マジで言うてんのかコイツ…?』的な目を向け、嫌そうな顔で問うてくる。
「はぁ〜〜〜ッ!!! 何で消える前は泣いてた子が! 戻って来たら鼻血垂れ流して嬉しそうにしてんのよ!!? アンタ達何やってたの!?!!?」
「──あー、それですか……」
キメラが気を失い、再び目を覚ました後──キメラの鼻からは鼻血さんが止まる事無く、ドバドバと流れ出ていたのだ。
……でも原因なんて、思い当たる事は一つしか無いワケで。
「バカタレって言ったらこうなりました」
「嘘でしょ……泣いてる子相手に罵倒カマすとか鬼なのアンタ!? もっとこう薔薇で背徳的な事があったんじゃ!!?」
テンション高く逞しい妄想どうもありがとう──ねぇよ。
『あ"る"じ!!!!!』
「──アンタは何で罵倒されたのに嬉しそうなのよッ!!?」
◆◆◆
「はぁーーーーーッッ!!! 結局、アンタ達は仲直り出来たって事で良いの?」
「それはまぁ、今からですかね? 祭りの案内だってまだ残ってますし、ヒナちゃん先輩達にもお礼しに行かないと……」
「──如月さん」
「先生……」
あーはいはい、そんな顔しなくても分かってるよ。
「それにキメラへの詫びの品だってまだ見繕えて無いんですよ。だから──今から、仕切り直させて下さい。勿論、キメラは強制参加だからな?」
『はい!!! 喜んでお供します主!』
「──いや、もうコレ仲直り出来てるでしょコイツら……はぁ、まったく! 世話が焼けるんだから!!!」
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「あ、そういえば──虫ちゃんに訊きたい事があるんだけど、いいかしら?」
『………………まぁ、お世話になったのは事実なので構いませんが……何ですか?』
「貴方、如月とその他であからさま過ぎない? 何とは言わないけど扱い的なモノが」
そりゃあ……、
『仕えるべき主人と、その他に差があるのは当然でしょう? 訊きたい事は以上ですか??』
「いやいやいやいや! まだあるから、そんなあからさまに面倒臭ぇなって顔しないで!?」
『事実、面倒臭いです』
本当に何なんだ、この人間は?
──まぁ、恩人である事には違い無いから問いには答えるが……。
「じゃあもうぶっちゃけ訊いちゃうけど……貴方って、その、言い方悪いけど『虫』なのよね?」
『はい、そうですけど?』
「しかも、一匹じゃなくて複数匹居るのよね?」
『そうですね。本体は私一匹ですけど、この身体は私の分体と共に作り上げているので』
「──なら! どうして涙とか鼻血とか出せるの!? もうそれがずっと気になっちゃって!」
『はぁ……?』
どうしてって……そんなの──。
『──何か出ました。故意に出そうとしたワケではありません』
「何か出た!??」
『はい。何か出ました……で? 質問は以上ですか?』
そう訊けば、「えぇ?」とか「何かで出るモノなの?」とかブツブツと独り言を呟いていると思えば、
「じゃ、じゃあコレでラストね!! 貴方、今でも消去されたかったって思ってたりする?」
『は? 何です、いきなり??』
「いやぁその──貴方に消去してくれって言われた時の如月がね、今まで見た事の無い顔をしてたから、ね?」
『主を動揺させたくて訊いているのなら答えません』
そう断言すると、
「違うわよ!? いくら私でもそこまで糞野郎じゃないわ!」
『ほぅ? では何故そんな質問を??』
慌てて言葉を返して来たので、逆に問う。
「だって貴方、結局、言ってないし。いや、二人して消えた時に如月には言ったかもしれないけど、私は聞いてないもの……ホントはどうしたいのか」
『………………はぁ。確かに有耶無耶になってましたね』
そう言い、一つ息を吐く。
『──私は主の「相棒」です。それが答えになるでしょう』
「ど、どういう事だってばよ???」
『はぁぁ……主が時折、貴女に心底残念そうな目を向ける理由が理解りました』
察しが悪いと言うか何と言うか、態々、言葉にしなければ伝わらないときたか。
『──「相棒」たる私が消えれば主が悲しみます。なので消去されてやる気は毛頭ありません』
「あ、そういう──? 確かにアイツ、懐に入れたヤツにはゲロ甘になるからね」
『それに私自身、本当は消えたくありませんでしたので』
バグなのか何なのか……理由は良く理解らないが、あの時、確かに『消えたくない』と思った。
「──え? ごめんなさい、何か言った???」
『いえ、何も。質問はコレが最後との事なので失礼しますね』
「? 何か言ってた様な気がするんだけど……ま、いっか! それよりあそこの屋台めっちゃ面白そうじゃない!? 『モンスターすくい』って、私が大物を掬ってやらぁ!」
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