3A
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『──ッ、ぅ…………』
「ッッ!? キメラ!」
キメラの『本体』を弾丸で撃った後……キメラは倒れ、ピクリとも動かなくなった。
──そのキメラが今、小さくだが呻き声を上げたのだ!
そして、真っ黒な人影の様な姿から……再び、オレを真似た姿へと『擬態』し、その口を開く。
『…………ぁ……るじ…………?』
「──ッああ! オレだ、キメラッ!!!」
……? 鼻の奥がツンと痛み……声も若干鼻声状態で、心なしか目も潤んでボヤけるが──風邪でも引いたのかな、オレ。
まぁ、そんな瑣末な事は置いといて、今はキメラの方が大事だ。
──キメラが倒れた後、慌てながらそのステータス画面を確認したが……表示は全て正常に戻っていた。
だが、キメラ本人に無事を確認するまでは安心出来ない。
「身体は大丈夫か? 何か異常があれば直ぐに──」
『──私を、消去して下さい……』
◆◆◆
「はッ?」
思わず、本当に思わず……そんな間の抜けた声が、口から洩れた。
──だって……消せってなんッ──え? ドッキリ?? ドッキリなのかこれ? だとしたらカメラは何処に???
『ドッキリではありませんよ、主……』
「じゃあ何で──ッ、り、理由は!??」
予想だにしていなかった展開に、声が震える。
『態々、言わずとも理解るでしょう?』
それに対し、キメラは無表情に淡々と告げる。
『──私は、主を手に掛けようとしました。本来であれば、護るべき存在であるハズの貴方に……刃を向けた。消去されて然るべきです』
その言葉を受けて、操られていたキメラに意識があった事を知る。
意識があったのに、身体を操られた……止められなかった。
と、そういう事なのだろう。
──でも、それは……。
「それはオレの落ち度だ。可能性はあった、だがまだ仕掛けては来ないだろうと油断していた。お前の所為じゃない」
『いいえ、私の所為です。私が身勝手な怒りを抱き、主の側を離れたからこの事態を招いたのです』
努めて冷静に話そうとするオレの言葉を、キメラはキッパリと切り捨てる。
………………。
「お前を怒らせた事だって、そもそもの原因はオレだ。オレが悪い」
『違います。そもそもとして主である貴方に怒りを抱く事が間違いなのです、つまり私が悪い』
………………………………。
「いや──オレが悪い!」
『いえ──私が悪いのです!』
「──もうどっちが悪いとかどうでも良いからとっとと仲直りしなさいこのバカ共ッ!!!!!」
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「何と言われようがオレは絶対にお前を消去したりなんてしない! そもそも分体とは言え、お前とG美を間違えたオレが全部悪いんだよ御免なさいね!!!」
『だから違うと何度も言っているでしょう主の分からず屋! 創造主である主に身勝手にも怒りを抱き単独行動をした上に操られた私が悪いんですよ、だからこんな不出来な私なんて……私、なん、て──ッ消えて、しまえば……いいん、です』
そう、歯切れ悪く言うキメラの目からは……ボロボロと、涙が溢れていた。
………………。
「──ジャバウォック、『隔絶』。指定はオレとキメラ」
途端、周囲の騒音は消え……聞こえてくるのは、キメラの嗚咽のみとなった。
……はぁ、少し熱くなり過ぎた。もう少し早く、こうしておけば。
「悪かったキメラ。今、この場に居るのはオレとお前だけだ。だから──存分に泣いていい」
そう言い、キメラの頭をポンポンとあやす様に軽く叩く。
──なにも虚勢を張るところまで真似なくても良いのに、この強がりめ。
『──ッ、泣ッ、きませっ、ん! これ、はッ汗、です!』
はいはい。お前は目から汗が出るんだなぁ、声もしゃくり上げてるけどオレの気のせいだなー。
──あとパラサイト、ちゃっかりついて来てるけどお前は空気が読める子だってオレ信じてるからな? 要らん事すんなよ??
「そっか。それで? オレは意地でもお前を消去さないけど、納得は?」
『しませッ、ん!』
「主の頼みでも?」
『また操られたら、今度こそっ、主を、殺して、しまうかもしれないのに! どうしてッ消去してくれないんですか!?』
まるで咆哮のような怒声で、キメラが問うてくる。
──ま、色々と言ってはいたが、結局キメラの理由は元から、『オレの為』。
オレの為に、自分を消去してくれと言っているのだ。
あっはっは………………巫山戯るなよ?
「そんな『今度』は来ないし、オレは死なない! だからお前も絶対に消去さない!!! 以上だ!」
と、誓って宣言する!
それでも『どうして……そこまで私なんかを…』とかまだ言ってくるので、オレは両手でキメラの両頬をガッチリ固定した後、
「──『オレのキメラ』はお前だけなんだよ、何処にも代わりなんて居ない! 大切で大事なオレの相棒、それがお前だ理解ったかこのバカタレ!!!」
と、真正面からハッキリと言い放つ!
うん。色々恥ずかしい事を叫んだけど、事実だしね……いや、まぁ──キメラはオレの事を相棒とは見てないのかもしれないけどオレは……(以下略)
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あの……キメラくん、アレからずっと無言なのですが?
結構時間経ってるんだけど、ウンともスンとも言わない。
──というか、オレはいつまでキメラの頬を固定してるんだろうね、離そうか。
そう、頭の中での緊急会議にて意見が出たので……案外、触り心地の良かったキメラの頬から手を離す。
すると──バタンッ!
途端に……キメラくん、正座したまま上半身のみが真後ろにぶっ倒れるという芸当を披露──
「──じゃなくてキメラ!!? おい、シッカリしろ何があったキメラぁーーーーー!?!!?」
『…………(3Aだな、理解るぞキメラ)』
◆◆◆〜〜〜3Aとは〜〜〜◆◆◆
・主の顔面ドup
・主から相棒宣言
・主マジ格好よす
↑の諸々と主より放出されるアルジニウムを過剰摂取した場合に起こる現象、それが3Aである。
要するに、幸せのキャパオーバー&興奮してぶっ倒れただけである。
パラサイト談
見てくれてありがとうございます!! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします( ´∀`)
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オカメにシリアスは無理なんだってばぁああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!! (心からの叫び)