加護屋
◆◆◆護符屋と加護屋◆◆◆
「彼女の名前は黒華 彩芽。我が校が誇る黒魔術部の部長であり、今年の夢は──!」
「──目指せ! 同性しか愛せない学園作り!!! です!」
オレの言葉に被せるように、ヒナちゃん先輩は高らかに宣言する!
いや……まぁ、人の夢は其々だからさ? とやかく言う権利なんて誰にも無いでしょ??
──だからオレは例えヒナちゃん先輩がその心を何処で貴婦人より上位の何かへと昇華させて来たのか、とかは考えない! このままにしといた方が面白そうだし!!!
「取り敢えず、アンタ達が仲良いって事は理解ったわ。夢は置いといてね?」
また濃ゆい子が出て来たわねぇ……という視線を向ける社長。
に、対し──心が不動な明王クラスのヒナちゃん先輩はどこ吹く風で告げる。
「うぃっす! それはそうとウチの護符見てましたよね!? 『増毛』〜『恋愛』に至るまで多種多様な護符を用意してますので、よければお一つどうですか?」
その言葉に、綾ちゃんと千尋さんはピクリと反応し──並べられた護符へと視線を向けた。
──ほうほう。千尋さんの視線の先には『恋愛運上昇』と書かれた護符があり……綾ちゃんは──ん? 『仲直り』?
「あの……この護符って、人に贈る事も出来ますか?」
「え? そりゃあ出来るけど……??」
ヒナちゃん先輩が眉を寄せながら答えると、
「じゃあ、この『仲直り』の護符を一つお願いします!」
と、輝かんばかりの笑顔で護符を購入し……え?
何故か、その護符をオレに差し出してくる。
そして──、
「──キメラさんと早く仲直り出来るように……よければ、貰ってください」
と…………言っt──あ、無理。
「──ミ"ッ……(絶命)」
■■■
「………………我最早悔無哉………………Σd( ˘ཀ˘ )」
(訳:良き人生でございました)
「あ〜〜〜、今回こそはもうダメかもしれないわね」
「うわぁ、キー様のこんな満たされた顔初めて見た……彼女さん……まじパネェ……!」
「……佐藤…………」
「え!? いや、そんなつもりじゃッ!!!?」
──キメラへ
まだちゃんと謝れていないのにすまない。でもオレ……もうダメかもしんない!
尊ぇ! 取り敢えず尊ぇ!!!
ナニ? 綾ちゃんは聖女か何かなの!!? 仲直り出来るように護符を買って渡してくるって……はぁッ!?
もう無理、尊ぇ!!! とりまホルマリン買って護符漬けて永久的に──(以下略)
と、脳内でキメラへのお手紙を作成していると……
「あの、申し訳ないがお客様のご迷惑になっているので……あまり騒がないd──なッ!? 貴様は黒華ッ!!?」
「──げッ! 何でアンタがこんな所に居んのよ、白崎……」
ヒナちゃん先輩の心底嫌そうな声が聞こえる。
そしてソレに反応するように……白崎パイセンも声を上げた!
「──げッ、とは何だ! 相変わらず失礼な奴だな!? 我々、白魔術部は迷える仔羊を救済せんが為に、今日この場にて加護屋を経営しているのだ!」
あ〜〜〜、確かにそんな申請あったな。
ん? あれ?? …………もしかしてオレ、屋台の配置ミスったか?
薄目を開けて周囲の見回すと──あ。お向かいさんに『加護屋』ってありますねぇ〜(ニッコリ)
──やっべ。仲悪い奴らをお向かいさんにしちゃってるよオレ……こりゃあ面白くなるな!
当のお二人は、周囲の奴らそっちのけで言い合いしてるし──いいぞ、もっとやれ!!!
「はぁ? 迷える仔羊を救済??? 祈ってばっかりの偽善者集団に何が救えるって言うのよ?」
「──あ"ん? 力を持ちながらもソレを自己の利益の為にしか使わん貴様らよりはマシだと思うがなぁ??」
おっとぉ、中々良い感じにギスギスして参りましたぁ! こりゃオレも寝てはいられねぇなぁ!!!
と、蘇生しようとした矢先──ッ!
「──イケメンや……イケメンがおる…………」
微かな囁きと共に、社長が、先に動く!!!
──社長は瞬時に、まるで影のように白崎パイセンの背後を取ると……その肩をガッチリ掴み、一言。
「ねぇキミ……ちょっとお姉さんとお茶しない?」
嘘でも『仔羊』とは呼べそうにない猛獣が、憐れな『仔羊』へと問う。
…………いや、社長。普通に怖いから。やめろください。まだ年若い青年の心にトラウマを刻んではなりませぬ!
というワケで──警備さぁ〜〜〜んッッ!!!!!
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