射的
●●●〜〜〜射的〜〜〜●●●
「──おッ、境ちゃんじゃねぇか!!! どうだい、いっちょやってくかい!?」
と、元気な大声で声を掛けて来たのは……子どもの頃によく行っていた玩具屋さんのオッチャンだった。
確か──今日の祭りでは『射的』をやるとか何とか言ってたっけ?
「あ、どうも。へぇ〜、随分と繁盛してますね?」
全部で八丁のコルク銃は、そのどれもお客様と思わしき方々が使用中だ。
──そして、その後ろにまで人が並んでいた。
「おうよ! 今回はウチも奮発したからな!!!」
そう言って、輝かしい笑顔で胸を張るオッチャン。
奮発……? と、景品のラインナップを確認しようとした瞬間──!
「ぬぉおおおおおおおおッッッ!!? 幻のゲーム機は誰にも渡しませんぞ、ヘイ親父! 五千円分弾をプリーズでござる!!!」
「はいよッ!!!!!」
──大変に聞き覚えのある雄叫びが、手前の撃ち場から上がる。
「何してんスか、鈴木さん……?」
「見たら理解るでござろう!? 幻のゲーム機を我が手中に収めんが為にハンター鈴木、出陣中でござる!!!」
呆れ声で問う久遠に、熱くワケの分からん事を語る鈴木。
その他の撃ち場からも……。
「……何を馬鹿な事を!」
「アレは拙者が手中に収めるべき宝也! 貴様らになど渡すものかぁ!!!」
「──それは某の射撃スキルを見てから言ってもらいたいモノですな!」
……etc。
「いやぁ、もう元は取れてるから有難いの何のってな! まぁ、ちと騒がしいがソレも客引きになってるからウハウハよ!!!」
と、豪快に笑うオッチャン。
うん。あの顔は儲かってる時の顔だな、オレ知ってる。
というか──儲かってなきゃ、オッチャンは「どうだい」なんてオレにそんな事を言って来たりはしないだろう。
「ほぅ? なら少しだけ……本物の『ハンター』の実力を見せてやりますよ」
途端、「しまった……!」という表情をオッチャンは浮かべるが──オレ、売られた喧嘩は買う主義なんだよね。
あ、一応言っておくけど……順番はちゃんと守ったからね? 喧嘩は買うが、マナーは守る派だから。オレ。
◆◆◆
「──かぁーーーーーッッッ! やっぱ境ちゃんには敵わねぇなぁ!!! 持ってけドロボー!」
「いやぁ……両面テープは中々に良かったですけど……取られたくないなら、やっぱ接着剤の方がオススメっすよ?」
サービスで袋を付けてもらい、戦利品をギュウギュウに詰め込んでゆく。
「き、境夜たん……その、幻のゲーム機はどうするつもりなのでござるか??」
「ん? オク(※オークション)に出します」
「……す、スタート値は?」
「5」
「ぬぅぅ……あの射撃スキル、いったい何者でござるか?」
「通りすがりの『ハンター』です」
等など……獲物を奪われた憐れなハンター(笑)の質問に答える。
──まぁ、その他幾つかの景品は残しておいたからオッチャンもまだまだ儲けられるだろう。
こういうのは、根こそぎ奪わないのもマナーである。じゃないと出禁になっちゃうからネ(経験談)
「やべぇ……先生マジぱねぇ…………!」
目をキラキラさせている久遠を連れて、射的の屋台からはお暇させてもらう。
キメラが喜びそうなモノも無かったし、他の屋台の様子も見ておきたいしな。
あ──そう言えば、千尋さんと綾ちゃんの姿が見えなくなっていたのだが……いったい何処へ行ったのだろうか?
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