VS 黙示録4
■■■〜〜〜十五階〜〜〜■■■
『『『──主ぃいいい、今直ぐそちらへ向かいますからねぇえええええッッッ!!!!!』』』
そう大声で叫び、目にも止まらぬスピードでキメラさんは駆けてゆく。
…………キメラさんが通った跡には、モンスター達がピクリとも動かずに転がっていた。
「………………」
うん。五階と十階の私達の頑張りって何だったんだろう……?
■■■〜〜〜二十階〜〜〜■■■
『『『──主への道を邪魔するモノには死あるのみ! さぁ、纏めて消え去るがいい!!!』』』
瞬時にキメラさんの身体が崩れ、無数の黒い粒子へと変化し……まるで大波のようにモンスターをのみ込んでゆく。
……そして。
『『『さぁ、次で二十五階ですね! サッサと行きますよ!!!』』』
──即座に元のキメラさんの状態へと戻ると、次のエレベーターへと勢い良く乗り込む!
■■■〜〜〜二十五階〜〜〜■■■
『『『──主ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!』』』
うわぁ……キメラさん、満面の笑みでモンスターを瞬殺してる……。
い、一応、そのモンスター達も如月さんのモンスターなんだよね? それなのに、なんて情け容赦の無い攻撃なんだろう……。
『『『これで終わりです!!!』』』
あ、最後のモンスターがキメラさんに『捕食』された。
『『『さぁ、サッサと三十階に行きますよ! ダラダラしない!!』』』
そしてこの輝やかしい笑顔。十五階までの無表情&無感情はいったい何だったの??
──コレが課金の暴力かぁ……。
■■■〜〜〜エレベーター内〜〜〜■■■
「……あの、騎士様?」
ほぼ放心状態の私に、仲間の一人が小さな声で耳打ちしてくる。
「なんです……?」
私も小さな声で返事を返す。
……すると、少し困惑した顔で仲間は話しを続けた。
「いえ。もう直ぐ三十階に着きますけど、何も準備しなくて大丈夫なのかな? ……って」
──準備?
「準備ですか? あまりこういう事は言いたくはありませんけど……今更何かを準備したとして、キメラさんに勝てるとは到底思えません。無駄になるだけかと……」
そう。無駄になるだけ……。
「あ〜、いえ……そりゃあ、あのモンスターと戦う場合はそうかもしれないっスけど──」
何やら歯切れ悪く仲間は言う。
「──別にあのモンスターと戦う必要は無いっスよね?」
「へ?」
…………えっと、この人は……何を言っているんだろう? 戦う必要が無い? なんで??
「あくまで今回の目的は、『この会社の社長を倒す事』でしたよね?」
「あ!」
そうだ……そうだった! あくまで私達の目的は、この会社の社長を倒して──『陣営』を一つ潰す事だ!
「それで、あわよくば如月さんでしたっけ? このアプリの開発者をコッチの陣営に引き入れる事でしたよね?」
「はい。その通りです……」
「──なら、あのモンスターには真正面から挑まずに、社長を倒すまでの時間を稼ぐだけでいいと思うんスけど?」
確かに! なんという正論!! この人、天才なのでは!?(←衝撃のあまり語彙力が消し飛んだ)
でも…………それなら……ッ!!
「キメラさん! アイテムを売って下さい!!」
◆◆◆〜〜〜一方、社長室〜〜〜◆◆◆
「──ふんッッッ!!!」
「あだだだだッ!!?!? ちょっ、如月!! プレイヤーへの直接攻撃は禁止でしょ普通!!! しかも女性に対してガチのヘッドロックって──ッ!? いだだだだだだだだだだだだだだだッッッッッ!!!」
「何言ってんスか千尋さん? 現実の争いに禁止事項なんてありませんよ??」
「この鬼畜!! 悪魔!!! 男おn──ッ!!」
「──ふんッッッッッ!!!!!」
「くぎゅッッッ!!?!? ギブ!! ギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブッッッ!!! ティアマト! 助けてぇえええええッ!!」
フッ、残念だったな千尋さん。ティアマトなら其処でオネンネしてるぜ?
……そもそも、どれほどランクが高かろうがレベル『1』でオレのモンスターに勝てるとでも??
「さぁ〜〜〜て、ここかr──」
『『『──主ぃいいいいいいいいッッッ!!! ただいま戻りましたぁ!!』』』
………………ふぁッ!?!!?
◆◆◆!!?!??◆◆◆
──ッうぇ!? な、なんでキメラが社長室に!?!!?
ドアバーン! からのキメラ登場に、オレびっくりである。(←驚きのあまり語彙力が消失した)
──というか、此処にキメラが居るという事は……ッ!?
「「「…………………………」」」
あ、やっぱり居た……黙示録の皆様。(←滝汗ドバー)
……オレは千尋さんの拘束を解き、まだ荒い呼吸を繰り返している千尋さんに無言の視線を投げかける。
「はぅあッ!? ──む、昔の純粋だった頃の私が見えたわ……まさかコレって走馬灯?? ……ん? 如月、なんでそんな目で私を見t……あッ(←察っした)」
──オレと千尋さんは固まり、互いに視線のみで会話をする。
・
・
・
『どうします? いまオレ、もの凄く申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど?(0.1秒)』
『それは私もよ。見てあの入るタイミング間違えちゃったって顔……気不味いなんてモンじゃないわ』
『……これ、オレの感なんですけど……多分、時間を掛ければかけるほど気不味さが増加すると思います。つまり──』
『えぇ、そろそろ何とかしないとマズいわ(0.3秒)』
『はい……でも、どうしましょうか? いっその事、「全ては夢だった」という流れに持っていきますか?』
『具体的にはどうするのよソレ?』
『……此方が堂々とするんです(←パニック)』
『なるほどね(←焦り中)』
『まず千尋さんは何事も無かったかのように、自分の席に座り堂々と……そしてラスボスのように威厳ある雰囲気を醸し出して下さい(0.7秒)』
『分かったわ!』
『そしてオレも千尋さんの側近のように振る舞いますから……後は相手の出方にあわせてアドリブで切り抜けます』
『──理解したわ! 大丈夫、きっと上手くいく!!』
『ええ! 共にこの窮地を切り抜けましょう!!(1秒)』
・
・
・
──この間、ジャスト一秒! オレと千尋さんは互いに頷き合い、さっそく行動を開始する!!
先ず、千尋さんは何事もなかったかのように自身の席に座り堂々と、そして偉そうにふんぞりかえる……ッ!!
「ようこそ、黙示録の皆様がた! 此方がこの会社──『百鬼コーポレーション』社長の百鬼 千尋様です」
オレは千尋さんの勇姿を無駄にしない為にも、千尋さんの隣へと優雅に移動し……秘書っぽい雰囲気を出しつつ言葉を紡ぐ!
…………落ち着けオレ。頑張れオレ! 恥ずかしがるな、羞恥心を殺せ!! たとえ──どれほど生温かな白い目で見られていたとしても堂々としろ!!
「「「…………………………」」」
──せめて何か言って!!? 無言はキツいって!
提案しといて何だけど、泣きたくなってきた……その時!!
「──ご紹介にあずかりました百鬼チヒロでぇす。それで? いったい私に何の用なのかしら?? 佐藤の──あぁ、違ったわね……『帝王』佐藤のイ・ヌ・ど・も?」
ッッッ!? ……す、すげぇ! 堂々と、それでいてメチャクチャ偉そうに相手を煽っている!!!
──オレ、初めて千尋さんの事を尊敬したわ!! めっちゃ図太い神経してやがる! 恥じらいが無いのか!?
「「「…………ッ!!」」」
おッ、黙示録の皆様がたも今回は反応有りだ! さすが千尋さん!!
……そして理解した! 煽れば反応があるんだな!?
「ダメですよ社長……犬共なんて犬に失礼じゃないですか。正しくは、『帝王の使いっ走りの能無し共』ですよ☆」
「「「──なッッッ!?」」」
よし! 手応え有り!!!
「あら、私とした事がウッカリ……でも、そうよねぇ。あ〜んなメッセージを簡単に信じて、乗り込んで来るんですものね〜?? ププッ、た・ん・じゅ・ん☆」
「──まったくですよ……罠にハマっているとも気付かずに、ホンット馬鹿な連中ですよねぇ〜」
ゲスな笑みを浮かべ、オレと千尋さんは相手を煽りまくる。やるからには徹底的にな!!
「──ッッッ! ケルベロス!!」
遂に我慢が限界を迎えたのか、綾ちゃんはモンスターを召喚しオレと千尋さんを睨みつけてくる。
……うん。そりゃあいきなり喧嘩を売られたんだから怒るよね。ごめんね、綾ちゃん。
「総員、騎士様に続け!! モンスター召喚、セイレーン!」
「──デュラハン!」「ヴォジャノーイ!」「レーシー!」「グレンデル!」「マサン!」「バニップ!」「ウェンディゴ!」──etc。
綾ちゃんを皮切りに、黙示録の皆様がたはモンスターを次々と召喚していく。
……それにしても壮観だなぁ。社長室が無駄に広くて助かったわ。
「きゃ〜、怖ぁあい(棒)! お〜た〜す〜け〜(棒)!」
うわぁ〜、腹立つぅ!! むっちゃ腹立つわぁ千尋さん!
「怖いからぁ、ティアマトちゃ〜ん助けて〜!!」
──あれ? でも、たしかティアマトは今……??
『………………(チーン)』
「あれ……ちょッ、え!? ティアマト!??」
──だよね? オレのモンスターとの戦いで瀕死一歩手前だよティアマトちゃんは……。
『ちょっと如月ッ!!? ティアマトを早く回復させて! アンタの事だからどうせ回復アイテムくらい用意してあるんでしょ!?』
……千尋さんは視線にてオレに訴え掛けてくるが……あ、目にゴミが〜(棒)。
──困ったなぁ〜、千尋さんが何かを訴え掛けてきている気がするけど全く理解らないぞぉ〜〜〜(棒)!!
あ〜! なんかオレの懐からこんなモノ(←アイテム一覧表)がぁ〜(棒)! そぉだ〜(ぼう)!
……コレ(アイテム一覧表)を使えば、千尋さんが何を欲しがっているのか丸わかりじゃないか〜〜〜(ぼ〜)!! というワケでそぉい!!!(←机にバァン!!)
「…………ッ!?」
オレの行動に、千尋さんは困惑しているようだが……爽やかな笑顔でも返しておこう。
──窮地を脱するのと、商売は別だから仕方ないね!
『何なのよこの紙は? えーと…………ッッッ!? 如月ぃいいい、アンタ裏切ったわね!?』
そう般若のような顔を千尋さんは向けてくるが、
『え? 裏切りとかぁ、ちょっと何言ってんのかよく理解んないですボクぅ……』
ムズカシイ事はよく理解んないのボク。
『──ぎぃいいいッ!!! 窮地を切り抜けるとか言っておきながらこういう事を平気でする奴だったな、お前な!!』
……まぁ、実際に平気だからね。うん。
『そう褒めないで下さいよ恥ずかしいじゃないですかもう……\(//∇//)\』
『──褒めてねぇな! むしろ最低だって貶してんだよ!!』
ふッ、騙された負け犬が何か言うとるわ( ´_ゝ`)
『オレを貶しても状況は変わりませんよ? それにほら、はやく決めないとモンスターの大群に襲われちゃいますよぉ千尋さぁ〜ん??』
『グゥウウウウウゥゥッッッ!!! 理解ったわよ、買えばいいんでしょ買えば!!? 回復と強化アイテムを片っ端から寄越しなさい!!!』
さすが千尋さん! アリガトウゴザイマ〜ス!!!
……オレは輝かんばかりの笑顔を千尋さんに向ける。
『──毎度ありッッッ!!』
と、言うように──。
見てくれてありがとう!!
続きが気になりましたら是非ともブクマなどをお願いします(雑)!