肝試し
■■■〜〜〜行動力が違うわ!〜〜〜■■■
「──結局、あの触手は何だったんでしょう?」
その綾ちゃんの一言に、BBQを頬張っていた男性陣の動きが止まる。
──いやぁ、良いモンだね……砂浜でのBBQも乙なモノだ。夜空を観ながらってのがまた良い。
「綾……あの触手については忘れなさい。いいね?」
「同感でござる。変態触手なんて最初めから無かった……イイね、綾たん?」
「アレは大海へと帰ったんだよ、佐藤」
……遠い目をして、被害者達は告げる。
「成程、つまりオレは無罪って事ですね? やったぜ!!」
まぁ──元からオレに罪なんて無いがな! オレはただモンスター達に束の間の休息を与えてやっただけだし……??
……あの一件だって、イカとタコが暴走しただけだ! つまりオレは無罪だ、やったね!!!
「いやアンタは有罪よ……つーか、木に吊るしてたわよね?? 何で平然と混ざって一緒にBBQ食ってんのよ?」
と、空かさず千尋さんは鋭いツッコミをカマして来るが……甘い、甘過ぎる!
「フッ……あの程度の拘束、学内リアル泥警大会『脱獄王』であるオレからすれば児戯に等しいんですよ」
──少し関節をズラしたら簡単に抜け出せたわ!
「アンタが通ってるの本当に学校? あ、そういえば……異世界に転移したアンタの同級生はいったいどうなったのよ?? 連絡はきたの?」
ああ……それね。
「どうぞ」
そう言って、問題児共から送られてきたメッセージを千尋さんに見せる。
『まじスマン。ログアウトしたら戻れたわ……ご迷惑お掛けしますたm(_ _)m』
『PS:折角なので夏は異世界で過ごそうかと思います。なので帰ったら宿題見せて下さい神様仏様如月様! ゲーム部より♡を込めて』
「…………最近の若い子ってやっぱ行動力が違うわ! 尊敬する!!!」
スマホから顔を上げ、そう断言する社長。
「──いや、それはこの問題児共がちょっとアレなだけっスよ? コイツらと一緒にしないで下さい!!」
と、抗議してみるが……ダメだな。千尋さんったら考える事を放棄したような顔してるわ!
■■■〜〜〜夏の夜といえば…〜〜〜■■■
「──ふぅ! じゃあ腹も膨れた事ですし、肝試しでもしましょうか!!!」
「は?」
「へ?」
「え??」
「なッ!?」
「ゑ?」
「嫌ッス!」
──オレの言葉に、皆さんは驚愕の声を上げる。
「あ、言っておきますけど強制ではありませんよ? オレもそこまで鬼じゃないんで、参加は自由です」
「じゃあ不参加で!」
「私も……その、怖いのは得意じゃないので」
「てっきり強制かと──不参加で!!!」
「もう夜だしね……子どもは寝る時間だろう」
「先生すみません……オレもホラーはちょっと」
「絶対に碌でも無い事を企んでそうなので嫌ッス!」
──そっか。全員不参加っと!
「ソレは残念です……明日の朝日が無事に拝める事を祈っていますね!」
「は? ちょっ──それ、どういう意味!?」
「言葉通りの意味です。いやぁー残念だなぁ! 皆さん不参加ですかそうですか!!! 無事に明日再会出来ると良いデスね!」
そうオレは笑顔で告げる。
「あの、如月さん……その肝試しって、もしかして何か取って来る系だったりしますか?」
お、珍しく察しが良いね綾ちゃん。
「うん、そうだよ! しかも取って来たモノは持って帰っても良いからね、まぁ……夏イベみたいな? 無償でアイテム配布しようかなーって!!!」
いやぁー、参加しないなんてホントに勿体ないなーーー!
「…………ちな、その取って来るアイテムとは何ぞや??」
お、またまた良い質問だ!
「──ん? ただのモンスター避けの御守りです☆」
「そういえば……アンタ、昼にスリルがどうのとか言ってたわよね? もしかして、あの変態触手以外にもモンスターを??」
千尋さんの表情が固まる。
「……召喚してました♡」
そりゃあ、モンスター差別は良くないからね! みんな平等に召喚したさ!!!
「──アンタまじ巫山戯んじゃないわよ!?? 何人様の島に勝手にモンスター放って魔境に改造してんのよ、挙句に明日の朝日を拝みたかったら肝試ししろとか暴君なの馬鹿なの!!?!? いや馬鹿よね!?」
「これがホントの魔改造ってヤツですよ(笑)」
「喧しいわッッッ!!!!!」
こうして──社長の雄叫びと共に……明日の朝を無事迎える為の『肝試し』が開始されたのだった。
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