一件落着?
◆◆◆もうそろそろ良いかな?◆◆◆
「──じゃあ、ちょっと回収しに行って来ますね?」
あれから十数分後──一二三さんと信一郎さんに頭を下げ、ジャバウォックに守護地への入り口を開いてもらう。
「ごめんなさいねぇ……私達は、倒れた子達を介抱しておくから」
「うむ。それにもう夜だからな、そろそろ家にも帰してやらなければ」
──ホントに、何でこの人達からアレが誕生したんだろ? ま、似てるトコもあるけど……。
実は割とピンピンしていたお二方に聖域の連中を任せ、オレは守護地内に足を踏み入れる。
「うわ…………」
思わず、声が出ちゃった。
──先ず、オレの目に飛び込んで来たのは、二つ風景。
一つは、緑の草花が生い茂る生命に満ち溢れた温かな風景。
一つは、霜が降り──ひび割れた地面と冷たい岩、そして亡者が闊歩する暗い命無き風景。
その相反する風景が、中央から左右にハッキリと分け隔てられているのだ。
『イザナギぃいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!』
『お、落ち着けイザナミちゃん! 儂は浮気などしておらぬ、誤解だ!!!』
そして、中央でぶつかり合う二神。イザナギも本気を出しているのか若返っている。
『浮気者はね、皆んなそう言うのよこの浮気者!!!』
『だから誤解じゃって! 確かに年若い女子に告白されて、儂もまだまだ現役じゃんッ! とは思うたが、浮気はしておらん!! セーフじゃセーフ!!!』
ギャイギャイ言い合う二人の神様よ……痴話喧嘩は犬も食わないぜ?
──と、いうワケで!
「仕事だ、キューピッド」
恋愛のプロをお呼びしよう!!!
スマホの画面を操作すると……光と共に、キューピッドがその姿を現す。
──頭上にはチャームポイントの光輪、背には一対の白い小さな翼。そしてオールバックに整えられた艶のある美しい金の髪。
堀の深い顔、グラサンによって隠された目、葉巻を咥えた口!!! 白いスーツを身に纏い、どう見てもスナイパーライフルにしか見えない『弓』を肩に担ぎ、一言!
『世界に愛をお届けするぜ……仕事かい、主?』
渋い声で、キューピッドが問う。
「──yes! 取り敢えず、何も訊かずあの神様達の痴話喧嘩を止めてほしい」
『ん? はぁ……やれやれ、またあの二人かい。okだ、すぐに取り掛かろう!』
オレの指差した方向を見て、色々と察したらしいキューピッドは即座に弓を構え、矢をセット!
『──天使矢!!!』
キューピッドの声と共に、パァン! と、弓から矢が撃ち出され……、
『ほぇッ!!?!?』
イザナギの情け無い悲鳴と共に、スパァンッ!! と、イザナギの頭を矢がぶち抜く!
『──え? イザナギ…………くん……??』
後に残ったのは、力無く地面に倒れたイザナギと、呆然とその場に立ち尽くすイザナミのみ。
『仕事完了だ、主』
フゥー、と口から紫煙を吐きキューピッドは仕事終わりの一言を口にする。
「おぅ、お疲れ!」
なので、そんなキューピッドに労いの言葉を掛けていると……。
突如──イザナギが勢い良く起き上がり、小さく悲鳴を上げるイザナミの手を取る。
──お、コレはもう始まったかな?
『イザナミちゃん……どうか、馬鹿な儂を許してほしい! 君という美しい光の側に居りながら、女子に告白されたからと言って調子に乗ってしもうた!!! もし、君の怒りが晴れぬと言うのなら──どうかその手で儂を裁いてくれ!』
キラキラのイケメンオーラ全開で、イザナミへと許しを乞うイザナギ。
『…………へ? いや、そんな……美しい光なんて、私は幽世の──生命の無い、息吹きもしない冷たい世界の主なんだよ?? そもそもとして、私には怒る資格だってホントは無いのに……御免なさい、イザナギくん…………』
シュンと、顔を俯かせてしまうイザナミ。
──アレだよ……素直に謝られると弱い系女神なんだよ。イザナミちゃんは!
だが──、
『そんなの関係あるモノか! 君が何と言おうがそれだけは譲れん!! 君は儂の光であり、儂の命そのものじゃ! 君という命があるから、儂も生きていられる。儂らは二神一体、イザナミちゃん……だからどうか、そんな悲しい顔をしないでおくれ』
イザナギのイケメンキラキラオーラは止まらない!
そしてもう……コチラが胸焼けするレベルの甘々展開ありがとうございます他所でやって下さいませ。
■■■一件落着?■■■
『イザナミちゃん!』
『イザナギくん!』
互いに熱い抱擁を交わす二神。
と──、
「ケッ! ああいうイチャラブカップルってね、破局も早いものなのよ!! はいはいどうせ負け犬の遠吠えよ、笑えばいいでしょ笑えば! オラッ、どんと来い!!!」
──一人、不機嫌の絶頂を迎えている社長。
いや、予想外なんだけど? だって他の連中は、
「うッ、置いて行くなんて酷いッス先生……」
「あ、アテナ様があんなゾンビ連中に寄って集られ貪られ──ぅう、アテナ様ぁあああああッッッ!!!!!」
『主人よ、よくも謀りましたね……久々に強烈なのを見た』
現世で守られていなかった奴らと、そういうの(グロ)に耐性の無い面々は軒並みダウンしているのに……怒りが恐怖を呑み込んだのか? こわぁ。
ちな、現世で守られていた綾ちゃんと──元々グロに耐性のあるキメラは平然としていた。
むしろキメラに至っては、持たせていた機器で撮影までしていたよGjだ! キメラ!!!
「──はいはい、言いたい事は後で聞きますんで……とっとと結界から出ますよ!」
そう一方的に告げ、拗ねる社長を引き摺りながらもオレは結界を後にした。
◆◆◆
「あ"ーーーーーッッッ、気ぃ悪!!! 結局私フラれ損じゃないのよコレ! 如月、やっぱ飲みに行かない!? 綾ちゃん達もどう!!?」
「ウンウン、辛カッタネ〜(棒)」
結界から抜け出した後──アテナが敗北した事実&佐藤二号として働かされる恐怖! の、ダブルコンボを喰らい、イヤイヤと号泣しながら全力で抵抗していた教皇を信一郎さんと一二三さんに任せ……オレ達はライトアップされた御山を降っている。
まぁ……流れ的には、今日のところはもう夜なので帰り、聖域の連中については後日、話し合いという事だ。
──話し合う余地があったのなら最初からそうしとけ!
と……思いもしたが、そんな事になればアイテムやモンスターが売れなくなるからオレは何も言わない。
長かった一日が漸く終わろうとしているのだ──一つの問題を残してな!
──このウザ絡みしてくる社長どうしよう??
↑の問題さえ解決すれば、クッソ長かった今日が漸く終わる! この問題さえ!! 解決すれば!!!
「なに? 今日って私の厄日だったりするの!? 今日だけで二回もフラれてんのよ私! 可哀想だとか微塵も思っちゃくれないワケ!!?」
「あーはいはい、じゃあそこでイチャイチャしていらっしゃる神様二人と飲みに行ったら良いじゃないですか」
そう、案を出してみるも……。
「──ふざけてんの? 自分をフッた男とその男の想い人と一緒に酒を飲めって?? どんだけメンタル強強人間に思われてんの私?」
メンドくさッ!
「じゃあ聖域の連中と行けば──」
「──そっちにも私をフッた男とその想い人が居るでしょうがいい加減にしろッ!」
そっくりそのまま言葉を返すわ、お前がいい加減にしろ!
……あーもう面倒臭いな!
「おい、キューピッド……追加料金払うから、あの人の相手頼んでいいか?」
そう近くに居たキューピッドに小声で依頼する。
『ふむ? 具体的には??』
「一緒に酒を飲んで、愚痴を聴いてやればいい。時たま相槌をうって『うんうん、辛かったね』って慰めてやって」
キューピッドにそう説明すると、少し考えるような仕草をした後……コクンと頷き、了承してくれる。
「じゃあキューピッドと行って来れば良いでしょ。キューピッドも酒強かったよな?」
『ああ、レディ……貴女さえ宜しければ是非ともご一緒に』
千尋さんの手を取り、その甲へと恭しく口付け柔らかな笑顔で誘う恋愛のプロ。
さすがキューピッド! オレ達では到底真似できない事を平然とやってのける、そこに痺れる憧れる!!
「………………如月……」
「はい?」
「ガキはとっととお家に帰んなさい! 私達はこれから大人なお時間をエンジョイしてくるわ!!! さ、行きましょダンディなオジ様!」
言われずとも(`・∀・´)b
──ふぅ。やっとコレで長い一日が終わったのだった!
〜(完)
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