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◆◆◆独りよがりの理想◆◆◆
「あの……先生?」
「ん? どうした久遠??」
あの一戦が終わり、現在は社長がモブHさんと戦っている。
──社長はティアマトちゃんで戦うと言っていたので、負ける事は無いだろう。
そして、先取制の試合なので二勝すれば無事試練はクリア……後は、教皇を倒せば長かった一日も漸く終わる。いやホントに長いわコレ!
「オレ、あんな勝ち方……ッ!」
悔しそうに言葉を絞り出す久遠に……内心でクソデカ溜息を吐きつつ、オレはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「──あんな勝ち方したくなかった……か?」
そう訊いてやれば、久遠は無言で頷いてくる。
「なら……お前はどうやって勝ちたかったんだ?」
再度訊く。
「え? そりゃあ、正々堂々と戦って真正面から相手を撃ち破りたかったっスけど……」
「──あの戦闘中、あの状況下でソレが出来たか?」
途端、久遠は苦い顔を浮かべた。
「自分でも理解ってるだろ? あのまま戦っていたら、負けていたのはお前だ」
「──でも!」
断言したオレに対して、久遠は苦い顔のまま何かを言おうとして言い淀み、俯く。
「まったく、力無い理想ってのは本当に愚かだな」
「……え?」
吐き捨てるように言ってやると、久遠が顔を上げオレを見てくる。
なのでオレも、久遠と目を合わせたまま話しを続けた。
「──ああしたかった、こうしたかった……そう言うだけなら自由だ。好きなだけ吼えればいい。でも、『そうする為』の力は有ったか? 方法を知っていたのか?? 吼えるだけで自分の思い通りに事が成せると思うな」
「…………ッッ!」
否定はしない。笑いこそするがソレも一つの考え方だと理解している。
その上で問う。
「あのまま正々堂々と戦って、負けたとしよう。それはお前だけの敗北か?」
「それは──ッ」
「──違うよな? オレ達、全員の敗北だ」
キッパリと言い切る。中坊なんだ……『責任』の重みだって理解出来るだろう。
「…………はい」
と、そう短くだが──久遠は肯定を返す。
「お前の独りよがりの理想が、オレ達全員の敗北よりも価値が有ると……そう胸を張って言えるか?」
「──言え……ません」
そう答え、久遠はまた俯く。
…………まぁ、一つ成長はしたって事で。
「理解ればいい──それに悔しかったのなら今度は力をつけ、方法を知った上で……正々堂々と戦って、真正面から相手を撃ち破れば良いだろ!」
俯く久遠の背を一発、バシンッ! と、叩き言う。
「いッ──え?」
「悔しい事は悪い事じゃない。自分の弱さを知れるチャンスだからな! 力が足りなかったのなら鍛えればいい、方法を知らなかったのなら学べばいいさ。何なら……報酬次第だがオレが教えてやろうか??」
満面の笑みで言ってやれば、久遠は顔を上げ──少しポカンとした表情を浮かべていた。
まぁオレ、他人の顔色なんて知ったこっちゃ無いんで一方的にセールストークでもさせてもらおう!
「必要とあらば勉強、運動、美容の秘訣……好みの恋人の作り方に至るまで何でも御座れだ! 今なら手駒割で一般より安くしとくぞ??」
『──すみません主! それモンスター価格って幾らですか!??』
おっと、いきなり食い付いて来たな! でもコイツ、割と万能超虫なのに何について知りたいんだろ??
「……プッ! 何スかそれ、無茶苦茶お得じゃないっスか──じゃあ……」
と、久遠が笑って何かを言い掛けたところで──、
「──ッ! いいわよ、私の負けを認めるわ!!」
と、社長が…………HA????????
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