VS 黙示録2
◆◆◆( ̄(工) ̄)!?!!?◆◆◆
「「「──ぃいやぁあああああッ!!! キメラやめてぇええええええええええッッッッッ!!!!!」」」
監視カメラの映像が映し出されているノートPCを鷲掴み、オレは叫ぶ!!
「諦めなさい如月くん……もう、あの狼っぽいモンスターは跡形も無いわ…………」
「「「キメラぁああああああああああああああああああああああああああぁぁッ!!!」」」
膝から崩れ落ちるオレに、千尋さんは問う。
「アンタがそんだけ落ち込むなんて……大切なモンスターだったの?」
──と。
「……はい、大切な──物凄く大切なモンスターです……」
当然だ。寧ろ、オレにとって価値の無いモンスターなんて居ないのだ!
「そうn──」
「──せっかく良い映像が撮れたのに!! あと少しだけ手を加えて編集すれば、それだけで……クッ!!!」
惜しい!! 本当に惜し過ぎる! デモンストレーションの映像付きで余ったモンスターを販売するというオレの計画がッ!!
──絶対良い値で売れたと思うのに!!!
「……あらやだ私ったら、アンタが糞野郎ってこと忘れてたわ」
「糞野郎とは失礼な。オレはただ金に汚いだけですよ!!」
「あ〜、はいはい御免なさいね〜」
適当に返事をしつつ、千尋さんはノートPCに映された映像へと目を向ける。
「ねぇ、何でこの監視カメラの映像にはエレベーターの中のモノが無いの? 確か、エレベーターの中にも監視カメラが付いていたハズよね??」
──おっと、ヤバい!!
「……エレベーターの中なんて何もする事無いじゃないですか。突っ立っているだけの人達を観たいんですか?」
「いやでも、何か嫌な予感がするのよねぇ? アンタ、なにか私に内緒で悪い事してるんじゃ無いでしょうね??」
──Σ(O_O)ギクッ!?
「うんにゃ、何もしてませんぜ旦那!」
……いや、商売は悪い事じゃないでしょ? モノを欲しがっている人に、欲しいモノを売っているだけだから!!
──結論、何も悪く無い。以上だ!!
「怪しいわねぇ……それに、このモンスターの配置……」
──ΣΣ(;O_O)ギクギクッッ!!?
「どう考えても悪意の塊じゃない。コレ、私の出番ある?」
「まぁ、十階からが本番って事ですよぉ!! 大丈夫です、頑張れば突破できる難易度ですんで!! ノープログレム!!」
頑張って(お買い物)すれば突破できますよー(棒)。
「そう……? それなら、まぁ良いけど……」
──よし!! 証拠不充分につき無罪!! 危なかったぁ〜!!!
心の中でガッツポーズするオレ。
「でも不便ねぇ? 倒されたモンスターは消えちゃうなんて……」
──ん?
「せっかく高い金額出してモンスターを買っても、倒されちゃったら買った意味が無くなるじゃない」
……んんッ!? あー、もしかして……。
「ホントよく出来てるわよね、このゲーム。大切なモンスターを倒されないようにするには、結局アンタから道具を購入するしか無いって事でしょ?」
千尋さんは大きな溜息を吐きつつ、オレの方を見る。
「……所詮はアンタの掌の上で転がされているだけなのかしらね〜??」
面白く無さそうに千尋さんは言うが、この人──なんかメッチャ勘違いしてるんですけどッ!?
というか……え? まさかマジでそう思っているのか!?
……ガルムが消えたのは、キメラの特殊スキル『捕食』の効果で……通常の戦闘なら──倒されたモンスターは持ち主の元へと戻るんですけど……。
──お、教えるべきか? これ??
・
・
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『教えてあげるべきだ! 一応プレイヤーなワケだし!!』
そう天使の翼を持つ、白いオレがほざく。
『必要ない。情報とは金だ。無償で教えるなんて馬鹿のする事だ』
ドス黒い悪魔なオレは、そう仰っている。
──どうする!? どうするんだオレ!?!?
『……フッ、尻の青いガキ共が……(´-`)』
ッッッ!? なんか神々しいオレが出て──!?
『──プレイヤーなら自分で気付け。有償でも教える必要など皆無!! さっき無償で情報を提供してどうなった? それに、そんな事をすれば……』
・
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・
「……ええ! ですから是非、沢山アイテムを買って下さいね──千尋さん☆」
『──せっかくのアイテムが売れなくなるだろう?』
◆◆◆茶番終了! 〜エレベーター内〜◆◆◆
「──と、取り敢えず……今はまだ、アイテムを買わないという方向で……」
私はアイテムの料金表から目を逸らし告げる。
『……ほぅ? まあ、良いでしょう──エレベーターの中であれば何時でもどうぞ』
仲間の手から、キメラさんは料金表を取り上げると不敵な笑みを浮かべ言う。
「……あの、騎士様? その……大変言い難いんですけど──如月って人、本当に味方なんスかね?」
そう、仲間の一人が耳打ちしてくるが……そんなの私が知りたいよぉッッッ!!!
──如月さんどうしちゃったの!? やっぱり社長さんに洗脳されて……それでおかしくなっちゃったとか!?
『は? 主が洗脳?? 何ですかソレ?』
キメラさんは、私の思考を読み取ったのか……首を傾げている。
「何ですかって、だから! 如月さんはこの会社の社長さんに洗脳されていて……だからそのせいで、おかしくなったんじゃないのかなって……」
『はぁ? 主があの女に洗脳されている?? ……主を侮辱しているのですか貴女は?』
私の言葉に、今まで無感情だったキメラさんの言葉遣いが変わった。
──まるで、少し怒ったような……。
『良いですか、主は洗脳などされていません! 私が「断言」します!! あれが本来の主なんですよ!』
■■■〜〜〜10階到着〜〜〜■■■
──チーンッ!!!
……という到着音とほぼ同時に──チーン……と、私の中で……何かが昇天した音が聴こえた……。
「り、騎士様お気を確かに!! ほ、ほら! 十階に到着しましt──ッッッ!?!?」
薄く開いた扉から見えたのは……圧倒的な数のモンスターだった。
──うわぁ、まるで砂糖に群がる蟻みたいだぁ……って、へッ!?
「と、閉じて!! 急いでエレベーターの扉を閉じてください!!!」
叫ぶ私の傍で……、
『おや? 行かないのですか?』
そうキメラさんは訊いてくるが、行かないのでは無く……どう見ても『行けない』でしょコレは!?
『……そうですか? 教えておきますが、奴らのレベルはそれ程高くは無いですよ?』
「いやレベルじゃなくて、問題は『数』なんですけど!? あれ何体居るんですか!?」
エレベーターの『閉じる』ボタンを仲間達と連打しながら、私はキメラさんに問う!
『──二十体です』
と……キメラさんは本当にアッサリと言い放つ。
「「「………………HA?」」」
私を含め、仲間達の動きが止まる……。
──二十体? えッ? に、二体とかじゃなくて……二十ッ!? モンスターが二十体!?!?
『はい。二十体です』
キメラさんは無慈悲に頷き、答える。
「………………」
………………
………………………………
………………………………………………は、ははッ! あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははッッッ!!!
◆◆◆
「ケルベロスッ!! そのまま突っ切って下さい!!」
「──ちょまッ!? 騎士様落ち着いて下さいお願いですから!!! あーーーもうッ!? おい! 回復薬(大)を一つ買うぞ!!!」
『毎度あり!』
あははははははははははッッッ!! 右を見ても……、
──『ランクD/ゴーレム』『ランクE/ペリュトン』『ランクC/リャノンシー』『ランクD/ズラトロク』『ランクC/ユニコーン』……etc。
左を見ても……、
──『ランクE/ゴースト』『ランクC/キュクロプス』『ランクD/スプリガン』『ランクB/デルピュネ』『ランクC/ヴィーヴル』……etc。
……こんなの、もう笑うしか無い!! 何処を見てもモンスター、モンスターモンスターッ!! モンスターだらけなんだから!!!
相手モンスターのステータスなんて確認している時間は無い!! 数では私達も劣りはしないけど、おそらく上層にはまだまだモンスターが配置されているはず──ッ!!!
──私が……私とケルベロスが……一体でも多くモンスターを倒して、少しでも戦力を残しておく!! その為なら……、
………………私のお小遣いくらいどうにでもなれぇーーーッッッ!!!
キメラさんから買ったアイテムを惜しみなく使用し、ケルベロスのステータスを強化する!! あとは……、
「──全力で『前』へと突き進むのみ!! 総員、死ぬ気でついて来て下さいッ!!」
「「「り、了解!!!」」」
私の雄叫びにも似た声に、仲間達は戸惑いつつも了承してくれる!!
「さぁ行きますよ──ッッッ!!!」
◆◆◆
──もう少し、あと少しでエレベーターまで辿り着く!!
「騎士様! こちらのアイテムをお使い下さい!!」
仲間の一人が、回復薬を差し出し言ってくれる!!
「ッ!? あ、ありがとうございます!!」
……先程、キメラさんから購入したアイテムは殆ど使い切ってしまっていた私にとって、仲間がくれた回復薬は正直とてもありがたい!!
「──ケルベロス!! もう一踏ん張りです! 頑張って!!」
そのまま回復薬を使用し、ケルベロスの体力を回復させる!
──おおおぉぉおおおおおおおおオォォオオオオオンおおおおおオオぉぉォォォッッ!!!
次の階へ行く為のエレベーターを塞いでいる一つ目の巨人が雄叫びを上げ、その手に持つ棍棒をケルベロスへと振り下ろす!!
……ッ、まずい!! 直撃するッ!!
「──管狐!! 騎士様のケルベロスに『障壁』!!」
仲間が召喚した小さな白狐は、鳴き声を上げるとケルベロスの周囲にドーム状の膜を形成する!
瞬間──振り下ろされた巨人の棍棒と形成された膜がぶつかり合い、鈍い音と共に火花が迸る!!
だが、振り下ろされた棍棒は膜に阻まれ、その動きを完全に停止させた……。
今だッ──このチャンスは逃さない!
「ケルベロス、『怒爪』!!」
スキルを発動させ、ケルベロスは巨人へと鋭い一撃を叩き込む!
『……ふむ、なかなかやりますね。主も喜ばれる事でしょう』
崩れ落ちる巨人を尻目に、キメラさんは満足そうに呟く。
『それに、次の階へと続くエレベーターには到着していますし……この階での勝敗は、皆様の勝利とします』
そして……意外な程アッサリと、キメラさんは自分達の勝利を手放した。
まるで最初から──勝利を私達に譲ろうとしていたかのように……。
■■■〜エレベーター内〜■■■
あの激戦後、キメラさんはまるで当然のように配置していたモンスターを纏めて『捕食』し、エレベーターに平然と乗り込むと再び私達を相手に商売を始めた。
……流石に、これ以上戦闘を続けるのは無茶だ。でも、退路は当然のように断たれているし……一度、父さんに連絡しておいた方が良いよね……?
そう思い、父さんと連絡を取ろうとした矢先、
『……無駄ですよ』
キメラさんは静かな声で告げる。
『やってみれば分かるとは思いますが、外部と連絡を取る事はできません。主がそのようになさったので』
──ッ、まさか!!
『そのまさかですよ……集団殲滅の基本は相手を一箇所に集め、孤立させる事だと主が教えてくれました!』
フフン! と、胸を張り……キメラさんは自慢げに言い放つ。
……如月さんが……そんな事を……。
ダメ元で父さんに連絡しようとするが、キメラさんの言うように繋がらない。
『だから言ったでしょう? 主にミスなど有り得ません! 主は凄いのです!!』
先程までの無表情&無感情とは違い、キメラさんは無邪気な笑顔で告げる。
『あぁ、それと主から商売についても教えてもらいました!
「相手の足元をよく見て商品の値段を設定するように……何なら、『初心者専用パック』とか言って適当にアイテムを詰め込んで相手の財布の紐を緩くする事」と!』
顔をキラキラさせながら、ドス黒い事をキメラさんが言う。
……撤退する事も、増援を呼ぶ事も出来ない。そして、何なら財布にされている感まである!
この戦い、私達に勝ち目なんてあるの!?
この度は──略!
面白かった、続きはよ!! と、思われましたらブクマなどをお願──略!!!