魔界転移 23
■■■──城──■■■
──ふぅ…………。
「反省したか? Mr.変態???」
『…………ゥ、グゥゥ………………』
地に伏した変態の鼻先に片足を乗せ、グリグリしつつ問うてやる。ン、ほら言うてみ???
『──あんッ♡』
『うっわ……コイツやば』
ホントにね。ここまで徹底的にボコッたって言うのに、反省どころか喜んでやがる。
「タマ……お前さぁ、マジで良い加減にしろよ? 誰が世界なんて欲しいっつったよ???」
オレいつも言ってるよな、管理が面倒だって。
それを二つとかさ、お前、控えめにオレに4ねって言ってんの?
『ェ? でも、リスト……に???』
──やっぱりかッッッ!!!!!
発端、アレか!? あのバカみてぇなプレゼントリストをこの悪魔は何処からか覗き見て勘違いを……
ってコトか!!? もうマジこの変態は!
「アレは冗談半分で書いてただけだ! だれも本気になんてしてない!!!」
『──ふぇッ!? そ、そうだったのですか!!?』
当たり前だろうが!
まぁ……真面目に書いたのも有るにはあるが──
「当然だろうが!!! 世界とか断末魔とかだったか確か? んなモン、誰が本気で欲しがるか!!」
んなモン欲しがるのは、頭のイカれた馬鹿タレだけだから本気にしなくて宜しいッ!
『それなら────も、ですか?』
「はぃ? なに──???」
今なんつった、コイツ???
顔を僅かに赤らめ……モゴモゴしながら、それでも意を決したように──奴は言う。
『そ、それなら……し、子宝も…………ですか?』
「──は???」
ナニ、言ッテンノ、コノ変態?
『だってご主人様! あの我が部下──基、あのNTR野郎と親密にしていたではありませんか!!!』
「鳥野郎……?」
お前、ソレもしかして──ピーちゃんのコトか?
『ソレはあの野郎を自らの番になされようとしたからでは無いのですか!? 我が先に居るのに!!!』
「──番て、お前……」
そういや、友人に聴いた話だが……猫って、テリトリー関連は煩いらしいね? つまり……
「お前……まさか、『嫉妬』したのか?」
『ふぇ──ッそ、そりゃあしますよ! だって、ご主人様と最初に契約して共に居たのは我です!!! それなのに、後から来たあの野郎をご主人様はとても可愛いがって。……まるで、我なんか要らないみたいに──』
………………………………。
片足を、タマから下ろす。
「確かに要らんけどな! 契約もほぼお前が駄々を捏ねるから仕方無くしただけだし!」
『ウッ──!!!』
お、どうした? いつもみたいに喜ばないのか?
「やめろつってんのにベッドにも毎回潜り込んで、朝になったらザリザリの舌で頬をペロペロされるし」
『──グゥ!』
お前の所為で、ベッドがいつも毛だらけだし掃除が大変なんだぞ? 最近じゃ、ペロペロ目覚ましが無いと起きられなくなって来たし。
「ソファに座ったら即座に来て膝の上で丸まるのも、地味にキツい。重いんだよ、お前」
『ムゥゥ……ッ』
暖かくて、それでいてズッシリだ。その所為で座った時に、それが無いとモノ足りなくなってしまった。
「あとお前、オレと同じシャンプー使ってるだろ? ちゃんとペット用のを使え。減りが早くて困る」
『ウグムムム…………』
もしくは親父のヤツを使え。安いから。
「夜中に怒られたくて、コッソリとチュー●を盗み食いするフリもやめろ。バレバレだぞ?」
『──え? バレていたのですか!?』
そらな? テーブルの上に、空になったチュー●の袋がこれ見よがしにキレイな状態で目の付く位置に置かれてたら気付くわ。バカにしとんのか???
なのに本数は減ってなかったし──まったく。
「仕事帰りで疲れてる時に限って、見計らったかのようにブラシを咥えて来るし」
「かと思ったら、倒れそうな日はベッドを整えて大人しく潜り込んで擦り寄って来るだけで何もしない」
「お前、ホントに悪魔か?」
『──悪魔です!!! コレでも!』
ははッ、そうだな。お前は悪魔だ……オレを、こんなにも『弱く』した。悪魔だ。
「最初は、マジで要らんと思っていた。変態だし、隙あらば怒らせようとしてくるし……」
『………………うぅ』
なのに──。
「お前が居なくなって、最初は喜んだよ。でも、気付いたら──家の中に違和感を感じるようになった」
『へ?』
まるで、
「──まるで、火が消えたようだった。こんなにも、家の中は静かで……寂しかったのかと気付いた」
『ッ!』
「ベッドは冷たいし、毛布を増やしても変わらなかった。ソファに腰掛けても、なんか物足りないし……だからオレはピーちゃんを可愛がったんだろうな。まるでナニかの代わりだとでも言うように」
ピーちゃんには悪いが、無意識に、そうしてしまっていたのだろうと……いま、気付いたよ。
「お前が居なくなって──寂しかったんだ」
オレは──。
『──ご主人……さ、ま』
あ、やば。もう直ぐ、来そう……!
「要らないと思っていたのに──いったい、どう責任を取ってくれるんだ……クソ悪魔?」
オレを、こんなにも弱くして。
「──こんなんじゃあ、手放すなんて無理そうだ」
『ッッッ!!!!!』
まぁ、ペットを飼うなら死ぬまでが飼い主としてのマナーでもあるからな。うん。
オレは、タマへと手を伸ばす。
「なぁタマ、お前は──オレに死ぬまで、飼われ続ける覚悟はあるか?」
寿命? んなモン、何とでもなるわ。
『ッ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!』
「どうなんだ? 変態???」
サッサと言え。こちとら、時間が無ぇんだよ。
──はいはい、ブルブル震えなくていいから。はよして、はよ言え。変態。
オレの面倒事アンテナがビンビンだから!!!
『 は い ! ! ! 勿 論 で す ! 』
──ご主人様ッッッ!!!!!
と、瞬時に猫の姿となって飛び付いてくる変態。
オレはそんな変態を抱き留め、喉をゴロゴロさせて甘えまくる変態を腕に想ふ……。
計 画 通 り ッ ! ! ! ! ! ! !
──と。
よっしゃ、お前ッオレはまだやれるぞ!
話の流れをやや強引に操作し、番だのの訳分からん所から話を晒せつつの懐柔!!!
よ〜〜〜し、よしよし。
『ご主人様ぁぁ〜〜〜〜〜♡♡♡』
ふ、気持ち良さそうに啼いとるわ。( ´_ゝ`)
パッと周囲を見る限り……使える手駒もまだ居る。
「──くくくッ(にっこり)」
『──?(なんだ? いま、寒気が???)』
不思議そうにコチラを見返す社員さんに、オレは笑顔を向ける。大丈夫大丈夫、何でも無いよ〜?
「なぁ、タマ……」
『何ですかぁ、ご主人様ぁ〜♡』
うーん、久しぶりの頬ペロ。舌が相変わらず、ザリザリする。
「お前は、今回……多くの人?に迷惑をかけた。それはちゃんとゴメンナサイするよな?」
『うぅ……はい。ご主人様が仰るなら』
おい。其処は仰んなくてもしろよ変態。
まま、エエわ。今回は許す。
「──良い仔だ。でもその前に……少し、オレのお願いをきいてくれるか???」
『? お願いですか??? ご主人様が、我に?』
頬ペロを中断し、タマは顔をあげる。
なので、その顔を手で包み込むようにヨスヨスしながら……オレは告げた。
「──あぁ、お前にしか頼めない事なんだ」
と…………。
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