VS 辰3
◆◆◆
「──ッ!」
最初にオレを襲ったのは『熱』だった。
……そして肺から一気に空気が抜けるような強烈な『衝撃』にチカチカと目が眩み、僅かに咳き込む。
地面を穿っていた棘が、まるで爪痕のように地に深々と引っ掻き痕を残していた。
──オマケにメッチャ腕が痺れている。こんなん人に向けて撃っちゃイカン一撃だろと思う。普通に死ねる、というかパラサイト寄生させてなかったら逝ってた!
自分が作ったゲームで死人が出るとか胸糞案件過ぎるので、コレ帰ったら制御プログラム的なモンを作るべきかもしれない。
……自己責任という素晴らしい言葉が脳裏を過ぎるが──うん、その内……社長かしらが問題を起こしそうだし頑張って作ろう。誰とは言わないけどね!
そんな事を考えていたら、相手のレーザーの勢いが落ちている事に気が付いた。
──まぁ、息継ぎは必要って事か。ずっと撃ち続けてはいられないらしいな?
「……パラサイト、盾はそのままに『銃形態』!!」
途端に右手の手甲部分が変形し、ボウガンの先端? みたいな形になった。
う〜ん、コレどう表現すればいいんだろ? 簡単に説明するなら、戦闘モノのアニメや漫画で見るタイプの……腕に直接装備する系のボウガン……みたいな?
と、そこで──混沌龍の攻撃が止まる。
──今Death☆ と、ばかりに第一射発射じゃい!!
「っ!? 撃ち落とせ混沌龍!!!」
オレの攻撃に気付き、坊ちゃんが慌てた様子で混沌龍に指示を出す。
空を暗雲が覆い、雷撃がオレの放った一矢を撃ち落とそうとするが──甘い。
オレの放った矢は雷撃を躱し、『不自然な軌道』を描きつつも混沌龍へと届く。
だが、所詮は『ちっぽけな矢』だ。この一撃で混沌龍を倒すには当然ながら至らない。
「……は? 何だよ、何ともねぇじゃねぇか……驚かせやがって……」
──と、坊ちゃんも安堵している。こんなちっぽけな矢一本に何をビビっているんだか。
さぁてと……お喋りはココまでにして、『耐久戦』を頑張るとするか!
戦闘姿勢は『ガン芋』&たまに攻撃で!!
注意点は線からはみ出さない事! 以上だ!!
──ああ、そうだ。偶に坊ちゃんを揶揄って『煽る』のも忘れないようにしないとな?
◆◆◆
「…………どうなってんだ……?」
小さな声で坊ちゃんが呟く。
──今更かよ。
と、思うが口にはしない。
そして今──オレは、五発目のレーザーを盾で防ぎ切る。
一発目よりも『断然軽く』なった一撃に、思わず笑みが溢れた。
まるで……「何をしやがった?」と言わんばかりの困惑した顔を向けてくる坊ちゃんに、オレは我慢出来ず声を出して笑ってしまう。
いやぁ、まさかココまで上手くいくとは。
「──ッ!! 何がおかしい!??」
坊ちゃんは得体の知れないモノでも見たかのように怒鳴ってくるが、いいねぇ……そういう顔が見たかった。
本来なら「訊かれたところで答える馬鹿はいない」と呆れ顔で言うところだが、教えてやろう! 特別ダゾ☆
「何がって……まだ気が付かない? 最初に混沌龍の攻撃を受けた時、オレはやっとの思いでその攻撃を凌いだワケだけど──さっきの攻撃は?? 今のオレを見て、やっと攻撃を凌いだように見える?」
笑いながら、出来の悪い生徒にモノを教える教師のように……ゆっくりと問いを投げかける。
「………………」
無言のまま坊ちゃんは睨みつけてくるが、はいはい怖いね〜無視して続けよう。
「──じゃあ質問を変えよう。君がゲームで勝てない敵と遭遇した場合、どうする? 能力値も武器も相手の方がずっと格上で、普通に相手をしたら攻撃すらも通らない。さ、君はどうする??」
すると、ハッ! と、した様子で坊ちゃんは自身のスマホをオレに向けてくる。
うんうん……理解の早い脳みそは好きだよ。説明の手間が省けるし。
「そう。自身を強化するか、それが叶わない……それでも倒せないのなら、相手を毒などの状態異常にして直接HPを削る。もしくは──
──『弱体化』させて弱くしたり──とかね?」
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