魔界転移 2
「──うーん、お隣さん……どころか、ご近所さん達の姿もお家も無いわねぇ〜?」
どうしましょ?
回覧板も……まだ回して無いのに。
「そう言えば、境ちゃん……魔界に転移させられたとか言ってたっけ???」
こういう場合の転移って言うと、アレよね?
あの──よくパパの漫画とかで観る……拒否権の無い、強制的なお引越しの事よね???
どうしましょ──お引越し祝い、あったかしら?
この前、七軒先の松井さんも異世界転移?させられて、ご近所付き合いには苦労したって言ってたし……。
強制的にお引越しさせられたのだとしても、ご近所付き合いは大事にしないといけないわよね!
「一先ず、モノが買えそうな所を探さないと……」
冷蔵庫の中身も心許ないし。
きっと境ちゃん達もお腹を空かせちゃうわ!
──主婦として、それだけは阻止しないと!!!
「待ってて、お母さんがきっと美味しいモノを食べさせてあげるからね!」
物が買えて、尚且つ……人が多そうな所を重点的に探しましょう!!!
もしダメでも、此処は森の中……辺り一面、自然の恵みが生い茂っている!
昔の偉い人だって言ってたじゃない!
──火さえ通せば、何でも食べられるって!!!
あそこに生えてる蠢くお肉も!
お空を飛んでる、あの大きな蛇……ちゃんも! あの真っ赤な川にいるお魚さんも!!!
焼けばきっと美味しく食べられるハズよ──ッ!
そうだわ、ついでにご近所さん達へのお引越し祝いにもなるかもだし!
それに……
この魔界?で、私達のお金が使えるかも分からないから、物々交換になる可能性だってあるわ!
──昔の人達もそうしてたって言うし!!!
それに……良い物だったら、逆に買い取ってもらえるかもしれないしね!
うふふ、そうと決まれば──ッ!!!
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──母さんどこぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!??
やべぇ、居ねぇ……ッ!
あの行動力の化身ドコ行った!??
何でこんなワケ理解らん場所で、来て早々に単独行動するのあのお母様ッ!?
ま、まぁ……母さんは行動力の化身であると共に、メンタルが超合金で出来てる超人だし?
簡単にどうにかなるとは思えないけど……。
それでも、コッチの身にもなってほしい! 心配なんだよ色々と!!! 母さん、天然だから!
リアルにモンスターハ●ターをやって無いと良いけど……いや、さすがに考え過ぎか?
でも、焼けば何でも食える思考だし。
いや──一応言うなら、料理は出来るんだよ。
でも、なんて言うんだろうな?
あの──常識人の皮を被った原始人、なんだよ。
良く言えば、ピンチに強いタイプ? か???
追い詰められると、内に秘めた原始人がコンニチワして来る。みたいな?
頼もしいけど、その……うん。
何なら……ある意味、原始人より原始人してる人だよ。ウチの母上。
──あれ…………放置しても、大丈夫じゃね???
「そう言えば──ピーちゃん……お前は、あのクソ悪魔の手下ってコトでOK?」
『無礼者! クソ悪魔などでは無く、コルソ──た、タマ様と呼べ!!!』
玄関を出て十数分…………コチラに伸びてくる肉の枝?を躱しながら、オレはピーちゃんに問う。
──しかしこの鳥、喋ると可愛げが無くなるな。
「はぁ? あんなの変態で良いだろ???」
『不敬ッッッ!!!!!』
ちょ、やめッ──頬をつつくな! 人の肩に止まって楽してるクセに!!!
「やめろって! んで、何でタマはオレ達を魔界……で、良いのか? に、飛ばしたんだ???」
それも家ごと。
何かテンション高く叫んではいたけど、正直、半分も理解出来て無いんだよな。早口すぎて。
お医者さんゴッコとか、そういう不穏な用語ばかりだったってのもあるけど。
『それは──推測だが、私と貴様がその……仲良さそうにしていたから、嫉妬、されたのだと思う』
「──は、ぃ???」
嫉妬ぉ? あの変態が???
『わ、私としても遺憾なのだ! 私は貴様の首を狙って、わざわざ人間界まで赴いたというのにッ!!!』
ぺぺッ! 暴れるな、羽が口に………………おい?
「ごめん、ワンモア」
聞き間違いか??? お前、いま──なんつった?
『──は? 貴様の首を狙って、わざわざ人間界まで赴いたと言ったのだが? それが何だ?』
「………………………………おい^ ^」
それが何だ? じゃ、ねぇよなぁ???
■■■
『──よし分かった! 今すぐ、あの強欲野郎共々……東を滅ぼせば良いのだなッッッ!??!?』
『チョット待テ、落チ着ケ』
落ち着いてなぞ居られるかぁ!? それに、貴様がどうなるか理解らんとか言うからぁぁッ!!!
『うぬぅ……許せん、許せんぞぉ! アマイモンめ、ご主人様を捕らえ──※※※やら※※※※※をしてご主人様を辱めるつもりなのであろう!!? そんなの、そんなの許せるものかぁーーーーーーーーッッッ!!』
『──ダカラ落チ着ケテ。案ナラアルカラ』
ガルルルルッッッ! フシュゥ、フシュゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッッッッッ!!!
『アマイモン、奴ハ狡賢イガ……純粋ナ力比ベナラ、コルソン──貴様ノ方ガ上ダ』
…………そうだな。で???
あと、タマな? 間違えるな、シバくぞ???
『デ、アレバ──今回、我々ハ二手ニ分レルト言ウノハドウダロウカ?』
二手に、分れる……だと?
『それはどう言う事だ? ガープよ???』
『──簡単ナ話ダ。オ前ハ先程言ッテイタ通リ、東ヘ向カイ、アマイモンヲ倒セバ良イ』
おん──それで?
ガープ、貴様はどうするのだ???
『ソノ間……私ハ此方デ、ゴ主人様ノ居場所ヲ探ル。ドウダ? 悪ク無カロウ???』
つまりは、二つの策を同時に行おうと言うのか?
我はアマイモンを倒す。
そして、ガープ……貴様は行方知れずのご主人様の捜索をすると???
『むぅ──確かに、それならばご主人様とアマイモンの問題を同時に解決出来るだろうが…………うむむぅ』
理屈ではそうでも、ご主人様をガープに……か。
どうせなら、我が捜索したいし──見つけて差し上げたいのだが?
うぅ………………ッ。
『無論──ゴ主人様ニハ、貴様ノ命令デ捜シテイタト伝エル。ドウダ?』
『──宜しくお願いしますガープ様(土下座)』
ガープよ、我はお前を誤解していた。
お前……良い奴だなぁッッッ!!!!!!!!
それに、ツーマンセルで動く必要はもう無いしな!
ジニマルは捕らえたし、アマイモンが幾ら狡賢いとは言っても援軍すら碌に無いのが現状だ。
何せもう、東以外は我らが支配したのだから!
──むっふふふふふ♡♡♡
今暫く、お待ち下さいねご主人様ぁ♪
我がアマイモンめをシバき倒し、我が友ガープがご主人様を捜す。そして──
魔界を足掛かりに──共に人間界へと侵攻し、支配するのだ!
何と完璧なプランか!!!
クックック……何とか、クリスマスまでには間に合いそうですよご主人様ぁーーーーーッッッ!
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ