お買い物 逃
■■■──人気の無い裏路地──■■■
「──居ましたわ、お姉さ……ま"…………は???」
居たッ!??
良かった! でも、貴女その声は──まさか、あのクソ守銭奴と綾ちゃんに何かあったんじゃ……あ"?
地を這うような声を出した金ちゃんの目線の先を追い、そちらの方へと目を向ける。
はッ? アンタ、ナニしてんのよMr.如月???
あぁ、いや……訊き方が悪かったわね、ごめんなさい。じゃあ、改めて──
「──こんな人気の無い所で、その娘に、いったいナニしようとしてたのよこの変態?????」
金ちゃん同様、自分でも驚くぐらいの低い声で……私は眼前の如月へと問う。
私、結構ガチで心配したのよ???
それなのに、それなのにねぇ……如月?
──アンタ、こんな人気の無い裏路地に綾ちゃんを連れ込んで……手に『鞭』なんて持って…………
いったい、ナニしようとしてたのかなぁぁッ???
怖がらずに言ってごらん?
大丈夫よ、私だって大人だもの。拳を出すのは、話を聞いてからにするわ??? でも、先ずは……
「──上野、標的を発見したわ」
『ま? 何処っすか、アンフィーちゃんの能力を使って追ってたんスけど狭い所は追い切れなくて……!』
アンフィーちゃん……? あぁ、もしかしなくてもアンフィスバエナの事ね。じゃあ、空か。
「人気の無い裏路地に綾ちゃんを連れ込んでたわ。あと、手に鞭も装備してる」
『──は………………ッ????????』
「ちょっと待って下さい!? 話をk──!!?」
漸く固まっていた罪人が、弁明をしようと言葉を発するけれど……。
罪人とのお話は後よッッッ!!!!!!!!
「──来なさいワイバーンちゃん。上空に向けて火球発射! 上野、その火球を目印にして。下に居る」
『りょ、了解っす! アレっすね!!?』
そして……数秒も経たずに──
『──@tf2=☆のzp364こはたfzc47♪!?!!?』
スマホの向こうからは、最早なんと言っているのかさえ不明な悲鳴とも雄叫びとも取れる声があがる。
「いや、だから話を──あぶッッッ!!?」
チュイン──ッ!!!!!
と、甲高い跳弾音が上がり……顔を青くした咎人の足元には、真新しい弾痕が産声をあげた。
『〜〜〜〜〜し、紳士の皮を被ったケダモノっす! 即刻、駆除してやるっすよぉおおおッ!!!!!』
・
・
・
──は、発砲して来やがった!!?!?
おま、56す気か!??
この国でそんな事をして、タダで済むと思っているのか上野!!? まだ間に合うから、やめて!
……んぇ? お前も、バカスカと超電磁砲をぶっ放してるだろって???
・・・・・・・・・・・・え、何の事ですか?
オレがぶっ放しているのは、あくまで武器に擬態したモンスターなんですけど???
要は、くっつき虫を投げてるのと同じだよ?
──実物じゃないから! 虫だから、実物に限りなく似た虫を投げてるだけだから!!!
セーフだ! セーフッッッ!!!!!
それに比べて上野のコレはアカンだろ!?
明らかにアウトだ!
ポリスメェェェンたしゅけ──ふぁッ!?? な、何で撃たれた筈の銃弾が溶けて……!!!??
──ま、まさかッッッ!
『聴こえてるっすか、このケダモノ!!! 一応教えておいてやるっすけど、それはモンスターの技っすよ!』
上空から、上野の大声が降ってくる!
『要は雪玉を投げてるようなモンっすから周りに助けを求めても無駄っすよ! さぁ、諦めろっす!!!』
ハァ、巫山戯るな──着弾地点に弾痕が残るような雪玉があってたまるかッッッ!!!!! ペェッ!
「久保ぉ、助けてくれ!!!」
そしてナメるな! このオレには、人望があるというコトを!!! お助け下さい、後輩様!!!!!
「………………ミシャンドラ……」
フハハハハッッッ勝った!!! じゃ、オレは今の内に逃げっかr──
「先輩の足を狙って。動きを止めようか!」
「──久保ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!??!???」
なして!? なして、お前はオレを裏切ると言うのか久保ぉおおおおおおおッッッ!?!!?
「先輩、合意も無く……そういう事を無理やりするのは良くないと思うな。僕……」
「──してない! 先輩してないから!!!」
しようとも思ってない! お願いだから信じてk──ほぁあああッッッ!??!?
薄氷が!?
──薄氷が、オレの手足に!?!!???
「金ちゃぁあああああんんッッッ!?!!????」
悲鳴と共に、あまりの冷気に息が白く凍る。
「如月……貴方が教えてくれたのですわ。誰だって間違えるモノだと! そして、それを認める心を!!!」
「──冤罪ですッッッッッ!!!!!!!!」
冤 罪 な ん で す ッ ! ! !
お願いですから信じて下さい!!!!!!!!
「久遠! 助k──」
「──せめて……せめて、介錯はオレがします! だから、素直に認めてくれ……先生!!!」
やだ、オレってばもしかして……人望/zero?
────Σ(° - ° )────
「さぁ、神妙にお縄につきなさい如月!!!」
「………………ふ、そうか。そうかよ! 所詮、仲間だなんだと言っても──結局はこうなるのかよ」
人は、所詮は一人ぼっちなのだ。
綾ちゃんも固まっている現状、最早……この裏切り者共に弁明は無意味だろう。
──モンスター共に囲まれて、
──退路をほぼ潰されて、
──誰も、己を信じてくれない。
ブブッ、ブブブブブッッッ!!!!!
く、クククッ!!!
「──ア〜〜〜ハッハッハッハァァッッッ──!」
最早、最早……笑うしかない。笑うしか、無いだろうこんなクソ展開!
それでも──まだ、諦めてなるものか!!!
ブブブブブブブブブブブブブブブッッッ!!!!!
ほら、聴こえるだろう……我が虫臣の羽音が!
「はぁぁぁ……来い! 我が腹心にして、半身!!! カモン、キメラくんッッッ!!!!!」
テメェら、オレはまだ諦めちゃいねぇぜ!?
キメラには意思疎通がある! 故に、オレの無罪を此処に証明してくれるハズだ!!!
さぁ、キメラ! その身姿を現し、我が無罪を──
『──主、その……私は、理解ってますから』
ぅ、うん……?
あの、なんで登場早々──目を背けるの???
お前、まさかまた……なのか? また、意思疎通を何処かにポイ捨てして来たのか──虫???
『あの、疲れてたんですよね? その気は無くて、疲労故の過ち…………的な???』
「──キメラ?????」
おま、嘘だよな???
『大丈夫です、大丈夫ですからね主! 如何に主の性癖が歪んでいようとも、このキメラ、何処まででも主と共に歩んで行きますので!!!』
──ね! と、汗ダラダラの顔で笑いかけてくるキメラくん。
あーーー、忘れてたわ。
綾ちゃんの手を掴み、オレは踵を返す。
「じゃあの☆」
そう言うが早いか──オレは一気に走り出す!
「──逃さないわよ!!!」
『──逃さないっすよぉおおおッッッ!!!!!』
……我が半身って、肝心な所でポンコツでしたわ。
■■■──魔界/南の大魔城──■■■
『──う〜〜〜む…………』
『コルソン、ジニマルヲ牢ヘト入レテ来タガ……ドウシタ? 何カアッタノカ???』
あぁ、ガープか。あとタマと呼べ。
『はぁ、感謝する。それと、その疑問については肯定しておこう』
溜息混じりに、我は告げる。
少なくとも、我にとっては死活問題なのだ。
『マサカ……アマイモンノ奴ガ何カ仕掛ケテ──?』
アマイモン?
『いや、奴は関係ない。東から出て来んからな』
『──デハ、何ガ問題ナノダ???』
…………まぁ、此奴になら明かしても良いか。今は同じご主人様を愛する、戦友だし。
『──────テナ……?』
『ン? スマン、良ク聴コエン』
ッ、だから!!!
『ご主人様に、会いたくてな……あわよくば罵倒していただきたいのだ。モチベ維持の為にも!』
『──ハッ?』
『くっ! まだご主人様とお別れして一日しか経っておらんと言うのに、もう身体が! 頭が! 心がご主人様を欲しておるのだ!!! 会って蔑まれて、冷たい目で見下され、あわよくば! あわよくば※※※※※※※して※※※※※して欲しいし、何ならもっとこう激しく※※※※※※※※※※──(カット!)』
『──ウワ』
あぁんもぅ! こんなにも我の心を揺さぶるなんてご主人様ったら、なんてイケナイ御方♡
『と、いうワケで辛抱堪らんのと……あとついでにモチベ維持の為に我は一度、人間界へ戻る!』
それじゃ、後よろしく!!!
ご主人様ぁぁん、今、貴方様の下僕が帰りますからねぇええええええええええええええッッッ♡♡♡♡♡
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ