真相
「──ねぇ、如月。有給休暇って、どういうコト?」
不気味なほど、ニッコニコな笑顔で千尋さんは……そう問うてくる。
「…………いやぁ、何の事でしょ──」
バ ン ッ ッ ッ ッ ッ ! ! !
「──ぴッ!?!!?」
ジリジリと後退するオレ。
を──笑顔のまま、壁ドンならぬ壁バンして逃げられなくする千尋さん!
やだ、パワハラ!? 労基さんヘルプ!!!
「ちょッ!? 歳若き幼子も居るこの病室で、何をしているのでござるか社長!?? 乱心されたかッ!」
「ふぇ!? ま、前が見えませんわ!!?!?」
「ダメじゃ金ちゃん! 金ちゃんにはまだ早い!」
──おい?
お前ら、もうちょっとオレの心配もしろや?
お嬢様の情操教育も大事だが、如月くんにも、もうちょい関心をさ……向けようよ???
「煩いわよ。アンタ達の妄想みたいな事にはならないから安心なさい。つーか、鈴木?」
ぎょろり──と、千尋さんが鈴木へと目を向ける。
──Σ(-᷅_-᷄ )
くくくッ……股下トンネルが、ガラ空k──ぬぐッ!?
「何でアンタが、如月の有給休暇の期日とか知ってるのよ? まさか、アンタも共犯なの???」
──え? ちょっと……ッ???
「何でって……拙者も許可の判を押しましたからな? しかし、社長──知らないとは、些か無理が──」
「──あのあの! オレを股下に挟んだまま、会話を進行させるの辞めてッ!? 構って?」
情け無いやら、恥ずかしいやらで泣きたくなるんですけど!? この姿! あと撮影るの辞めて!!!
おい首を傾げるな、お前に言ってんだよ後輩!
……シテ…………離、シテ……ッ!!!
「黙りなさい構ってちゃんがッ! 解放して欲しかったらサッサと白状なさい! 有給休暇って、何!??」
ッ──それは。
「一般的には、給料が発生する休みの事ですね。やんごとなき用事や心のメンテナンスが必要な時に──」
「・・・( ^ω^# )」
ギ リ ギ リ ギ リ ギ リ ギ リ ッ !
「ア"ぁ"ぁ"ーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
「馬鹿に、してるの、かしらぁーーーーーッ!!?」
痛い"痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い"痛い痛い痛い痛い痛い痛い"痛い痛い痛い"──ッッッ!!!!!
股に、身体が、両断される!!!
「違いますやん! オレは訊かれた事を正確に答えただけです、それに逆ギレとは知能の低さが知れますね!」
「 ・ ・ ・ ( ^ ω ^ # # # ) 」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリッッッッッ!!!!!!!!
「ア°ぁ"ぁ"ぁッーーーーーーーッッッ!!!!!」
・
・
・
「先生……流石に、擁護できねぇぜ?」
「先輩、ボケるタイミングは気を付けないと……」
ツンツン(´・ω・)つー_:(´ཀ`」 ∠):
違うんじゃ……つい、反骨精神が…………ッ!
「大体、少し考えれば理解るじゃないっスか……オレがこんな都合の良い金ヅルを棄てるワケが無いって」
貴女、如月検定何級ですか???
「──あ"???」
しまった、つい本音がッ! (^人^ ;)
「どういうコトだ? 言ってみろ、如月???」
・・・・・・いやぁ??? ちょっと何の事か、理解りかねますね? オレ、何か言いましたっけ?
「んー? 話が見えんでござるが──?」
──境夜たんの有給申請書には、社長のサインもあったでござるよ???
「は? 私のサイン???」
怪訝そうな顔で、千尋さんは問う。
──そして、更に締まる……股下トンネル。
「うぬ! この両の目でしかと確認したので間違い無いのでござる!!!」
そうキッパリと言い切る、鈴木。
暫し、沈黙が流れる病室……ケテ、助、ケテ──!
「あの、一つ良いじゃろうか???」
と、口火を切ったのは……爺──金盛 政次郎その人である。
「もう言うてしまうが、境ちゃん──如月くんとの契約は一時的なモノじゃよ」
「は???」
「へ? どういう事ですの、お爺様???」
………………(^_^;)
「じゃからの? 如月くんが、我が財閥で働くのは一時的なんじゃよ。契約の期間が終われば、また百鬼に戻るという内容の契約じゃ」
「………………は?????」
いやぁ、ははッ──はぁぁ。
「簡単に言えば、仮入社の様なモノじゃな? ワシは何度もスカウトしとると言うのにのぉ」
老い先短い友の誘いを断るとは……冷たいと言うか、一途な男じゃよ。本当に。
よよよッ──と、嘘泣き爺め。
ハッ、なぁ〜にが老い先短いだ嘘つきめ。まだまだ全ッ然現役のクセによ、ぺェッッッ!!!
「え? で、でも! 如月は、百鬼の会社を辞めたと言っておりましたわよ!?!!?」
はい、言いましたね。
「ははぁーん──敵を騙すには、まず味方からって事だね先輩???」
一連の会話で、どうやら全てを理解したらしい我が後輩が、不敵に笑う。
「──? どういう事っすか???」
「意味不でござる。kwsk説明をお頼み申す!」
「・・・・・・。」
まぁ、もう隠すのは無理か。はぁぁ……オレのサプライズ企画が。
◆◆◆〜〜〜真相〜〜〜◆◆◆
「──良いかな? もう最初に言っておくけど、先輩は百鬼コーポレーションを辞めるつもりは無い」
まるで探偵のように、久保は語り始める。
「ん!? え……それは、そうでござろう!!? 何故、そのような事を今更言うのでござる!?」
と、言う鈴木の問いを軽く無視して──
「それなら、あの『退職届』は……まさか」
あれ? 心無しか、また足に力入れてません? 身体が、千切れそうなんですけど???
「──十中八九、その『退職届』の中身は『有給申請書』だろうね?」
ギリギリギリギリギリギリッッッ!!!!!
「ぉ"あ"ッ──!」
「大方、ブチ切れた社長は封筒の中身までは見ないだろうと考えたんでしょ? 先輩???」
フッ──奴は単純故な……( ´_ゝ`)
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリッッッッッ!!!!!!!!
「く"お"ぁ"あッッッ!!!!!」
「私のサインはどうしたの? 申請書を通すには、私のサインと……三人の幹部の許可印が必要のハズよ?」
そーだ! オレがどうやって、社長にバレずに社長のサインを入手したと言うんだ!!!
不可能じゃないかーーーッ!
「それは僕と同じ方法を使ったんじゃ無いかな?」
──ヒョ???
「ッ、まさか!?」
「そう……書類に『紛れ込ませた』んだ。ボクがやったみたいにね」
………………え? ちょい待ち???
「お前もやったんか? アレ???」
「うん。チョロかったよ!」
あー、まぁ千尋さんは単純だs──ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリッ──!
え!? 何で力を強めるの!!?
──今のは、如月さん悪くないよ!??!? 久保君ちゃんだよ、言ったの!?
ちょ、冗談抜きで……マジで出る!
「あー、だからサインがあったんでござるね? こんなクソ忙しい時期に正気か!? と、思ったでござる」
納得した様に言わなくても良いからさ? あの、助けて??? 出そうなの、内臓が。
あと、仕事についてはマジでスマン。
そこそこ反省している。
「そ。社長のサインがあるのなら、必然的に幹部達も判を押すでしょ? 後は、封筒に入れるだけ」
──『退職届』と書いてある、封筒にね。そうでしょ、先輩?
と、久保が笑顔で問うてくる。
まぁ、ここまでバレたのなら──認めるか。
「……御名答。反論のしようも無い、完璧な推理だったよ──仕事の件は、本当にすみませんでした」
股の間に挟まったままだが、謝罪する。
「お嬢様も、騙してしまい申し訳ありません」
はぁぁ……ホントに、格好がつかないなー。
「まぁ、大変だったでござるが……普段は、境夜たんにそれほどの負担を押し付けていたと言う事でござる。此方こそ、ごめんなさいでござるよ!」
「私も色々やってしまいましたもの。如月だけを責めようだなんて思いませんわ!」
鈴木……さん。お嬢様。(´;人;` )
「──理由は?」
「え? 社長……???」
千尋さんの唐突な問いに、久保は声をあげる。
「ここまでの事をして、結局、如月──アンタは何がしたかったのよ? わざわざ財閥に入ってまで」
………………何が、か。
もう気付いてるだろうに、それを敢えて、言わせたいのか。
それなら──ケジメとして、言おうじゃないか!
「そうですね──オレは、如月 境夜として……一人の男として、リベンジがしたかったんです」
だって負けたままで、居たくないし。
次こそは、絶対に勝ってやると──そう、心に決めて……行動した。
その為なら──
「──使える手札を全て使って、出来る事は全てやり切った。その上で、社長……貴女に、勝ちたかった」
小っ恥ずかしい事、この上無いが──コレが、オレの本音だ。
所詮はオレも、唯の男の子だってコトさ。
それも──負けず嫌いなガキ、なのだ。
「……そう。それは、残念だったわね?」
ニヤリと、千尋さん……社長が笑う。
ッ──クク。『残念』と言うのか、この人は。
なので、オレも負けじと笑い返す。
「えぇ、本当に。でも、次こそは負けませんから──覚悟しておいて下さいね? 社長」
「上等よ。やってみなさい?」
暫し、笑顔でバチバチした後──ふと、社長が真顔になる。
「それはソレとして……私の事を金ヅル扱いした事と、退職届の件についてはまだ許して無いから──きっちりケジメはつけましょうね? き・さ・ら・ぎ♡」
──ッ!? いや、ちょッ待て!
今のは完全に無罪放免からのチャンチャンって流れだったじゃないですk──
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「──先生、急患です!!! 急患一名、意識不明の重体です!」
「何だって!? くそ、今しがた漸く佐藤さんの意識が戻ったばかりだと言うのに!」
「この病院、呪われてるんじゃないですか?」
「馬鹿な事を言うな、怖いじゃないか! それはソレとして、オペの準備だ。急げ!!!」
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ