・・・その後(後編)
「──佐藤さん、佐藤さん!!! 聴こえますか、佐藤さんッッッ!!!??」
「先生! 佐藤さんの意識レベル低下、戻りません!」
「くそ、どうなっている!? 呼び掛けは続けて、ご家族にも連絡! 念の為に、オペの準備を!!!」
・・・・・・(−_−;)
「──申し訳ありませんが、退室をお願いします。娘さんは、此方へ……」
「は、はい!」
深刻な顔で、看護婦さんが告げる。
そして、そのまま……綾ちゃんだけを残し、オレ達は病室から出されたのだった。
──さらば、佐藤。
どうか……安らかに眠れ.°(ಗдಗ。)°.
■■■〜〜〜病院/通路〜〜〜■■■
「──さてと、それじゃあ特に惜しくも無い奴を亡くしたワケだけど……」
とある病室の前で立ち止まり、千尋さんは言う。
その病室の表札には──
──『鈴木 信二』──
と、書かれていた。
「すみません……外で待ってても良いっすか?」
挙手し、そう申し訳無さげに告げるが……
「──ダメに決まってんでしょ? でも、覚悟だけは決めておきなさい!!! ヤバいから!」
と…………ね?
そんな危機迫る顔で言われるとは──え、なに? 怖いんだけど???
重体なのか? 意識不明とか???
──でも、千尋さんのさっきまでの様子を見る限り、そういうのでは無さそう……なんだよな。
構うのが嫌で言っただけなのだが、なに???
え、怖ッ。何があんの?????
この病室の中には、いったいどんな鈴木が封じ込められていると言うんだ!??
「………………久保」
「──ごめん先輩、僕からはノーコメント。どうか、自分の目で確かめて」
グッ! と、親指を立てる後輩。
え──ちょ、怖いんだけどッ!??
なになになになになにッッッ!?!!? ホントに何が居るの、この病室の中に!!?
──ごくり。と、固唾を飲み……病室のドアへと手を掛ける。
シュレディンガーの猫……ならぬ、シュレディンガーの鈴木。その真意や如何に!
ガラ──ッッッ!!!!!
「し、失礼しま〜す。その、お見舞いに……」
おずおずと、病室の中を覗く。
ふむ……?
病室の中には、特別変わったモノとかは無さそうに見える。それにベッドの上には、鈴木の姿も──
「──けほ、こほッ……あ、はい……どうぞ。あれ、境夜……くん??? わざわざ来てくれたの?」
・ ・ ・ 嬉 し い 。
と、鈴木の姿をした生物が……鈴木の口で、鈴木の声で儚げに言い──小さく微笑む。
「・ ・ ・ (O _ O ) ・ ・ ・ ?」
・・・・・・・・・・・・は?????
我が優れた脳みそが『?』に埋め尽くされる! まるで理解する事を拒むように、頭が働かない!!!
「ありがとう。さ、中に入ッ──」
──バンッッッッッ!!!!!!!!
怖気が奔り、勢い良くドアを閉める!!!
・・・・・・・・・・・・・????????
無意識に、ホントに無意識に──オレは通路の窓を開けた。
SAN値チェック→→→100
1D100→→→98
ア イ デ ア → → → 成 ・ 功 ☆
すぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ・・・!!!!!
「「「──ぃ"い"い"や"ぁ"あ"あ"あ"ああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」」」
発
狂
中
「如月、気持ちは良く理解るけど落ち着きなさい! ほら、ヒッヒッフー、ヒッヒッフゥーーー!!!」
ひっひっふー、ひっひっふぅぅーーーーーッ!!!
「すみません千尋さん、どうやらオレ達は病室を間違えたみたいです帰りましょうッッッ!!!!!」
バックバクの心臓を抑え、何とか叫ぶ!
うぅ……鳥肌通り越して──蕁麻疹出て来た。何あの儚さオーラ全開の生物は!? 誰!!?!?
「先輩、落ち着いて聴いてね? アレ、一応……鈴木さん、なんだよ???」
「 嘘 だ ッ ! ! ! ! ! ! ! 」
だってお前ッ──鈴木は、鈴木はなぁ! 根っからの……根っから、の…………あれ?
すまん。ちょっとキモかった奴だったコト以外、あんま憶えてないな? あれ???
いやでも──ッ!
「少なくとも、あんな儚さ全振りみたいな生き物では無かったハズだ!!! キモかったし!」
「いや先生、それは言い過ぎ」
と、久遠。
そうか、それなら──open the door!!!
「あれ、久遠くんまで来てくれたの??? わざわざごめんね……ありが──」
・ ・ ・ バ ン ッ ッ ッ ! ! !
「──どうだった?」
「すみません、誰っすか──アレ!?」
ホラぁ!!! オレは、間違って、ない!
アレは鈴木では無い! 鈴木の姿形をした、全く別の生き物だ──例えるのなら、謎の物体Sだ!
それでも尚、アレを鈴木と言うのなら──
「──お嬢様、鈴木に何をしたんですか!? 性格がもう、もぅ……うぅ…………ッ」
思い出しただけで、蕁麻疹が。
返して、返してよぉ〜。
元の、元のどうしようも無くキモかった鈴木を返じでよぉぉ〜〜〜!!! (´;Д;` )
「ぇ、えぇ!? そ、そうは言われましても……私、そういうのはサッパリでして──はッ、もしや!」
そう言って、お嬢様は自らのスマホを操作し──
──ピロン♪
何 か を 購 入 し た ?
・
・
・
「──よし来い!!!」
オレはそう叫び、
「あの、境夜くん? いったい、何を……???」
困惑する物体Sを背後から羽交締めにし、その動きを封じる!
「よし来ましたわ! では、行きますわよ!」
そう、片手に『解毒薬』を持ったお嬢様がにじり寄る。よし、ヤれぇええええええええええッ!!!
「あれ、君は──ガババババッッッ!!!??」
「──ごめんなさい! 後でちゃんと謝りますから、どうかコレを飲んで下さいまし!!!」
・
・
・
「………………………………。」
お嬢様に協力し、物体Sに解毒薬を飲ます事に成功はしたが──
──奴は、ピクリとも動かない。
「お、おかしいですわね……その方は、確かヨルムンガンドの毒を正面から喰らっていましたので……」
……もしやと思ったのですけど?
と、お嬢様は眉を顰める。
成程。ヨルムンガンドの──『神殺しの毒』を正面から喰らったと……?
そして何やかんやで、儚い系美青年に成った。と?
──なんで?????
え、オレこのゲームの制作者だけど……知らん、何それ…………怖ッ。
「でも、困ったわね……これじゃあ──」
「──ふ、ふふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふ、でゅふふふふふふふふふふふふッッッ!!!」
何やら、社長が言葉を紡ごうとした矢先──それは、起きた。
物体S……いや、鈴木が笑い出したのである。
そして──
「──やぁーーーっと、気分が悪いのが無くなりましたぞぉーーーーーぃやッほぉーーーーーッ!!!」
と、ね???
──うん???( ゜д゜)???
◆◆◆
「えーと……つまり? ヨルムンガンドの毒をモロに喰らって、気分が悪かっただけ……と???」
そう問う、オレに──
「──いやぁ、ご心配をお掛けしましたな! マジでしんどくて、テンションが乙ってたのでござるよ!」
いつも通りのテンションで、鈴木は語る。
あー……そう、ですか。
「境夜たん達が治してくれたお陰で、今や気分は最高にハイッてヤツでござる! 完・全・復・活──」
──なのでござるぅーーーーーッッッ!!!!!
と、大変に喧しい鈴木。
「…………えー、と……こ、この度は、私の身勝手な行動により多大なご迷惑を──」
お! 行くのか、お嬢様凄いな!!?
「──迷惑だなんてとんでもない! とても楽しいイベでござったよ、また是非とも再戦願いたい!!!」
お嬢様の謝罪の言葉を遮るように、鈴木は言う。
「え??? あの、でも私……」
「次は負けんでござるよ! 拙者は日々、進化し続けているのでござる!!!」
──あー、でもコレだわ。めっちゃ安心する。
この適度に人の話を無視する精神、良く理解らん『ござる』口調。
そして……
「ところで、其方の名は?」
「──え? あの、金盛 金芽ですわ……」
「なるなる! では、今後は『金芽たん』とお呼びするでござる!!! 『金たん』でも可!」
……あーーー、このお気に入りの呼び方よ。
まさか、コレに癒される日が来ようとは。
「え? いやその……???」
「でゅふふふ、先ずはお気にのモンスターの話でもしゅる? 拙者は──」
「──いや話を聴いて下さいまし!!?」
一方的に紡がれる会話のドッヂボール。
流石のお嬢様も、アワアワと完全に会話のペースを鈴木に握られていッ──
「──ところで境夜たんは何時、会社に戻って来るのでござるか?」
「ふぁッッッ!?!!?」
え……ちょッお前ッッッ──!??
「有給休暇の期限は確かもうじき終わりでござろう? 早く拙者も、境夜たんが作ったゲームをやりたいでござるよぉーーーーーッッッ!!!!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「──は? 有給休暇……ですって???」
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ