この度は、本当に申し訳ありませんでした!
──あ? お前、オレが『やめろ』って言って、やめた事があったか???
悪魔の悲鳴に、オレは思わず……ほくそ笑む。
ククク、にしても──なるほど、なるほど〜〜〜。
「おや、何を仰いますかご主人様ぁ? ご主人様は、私など足元にも及ばぬ崇高なお方──」
『──いやぁあああああぁぁッッッき"も"ち"わ"る"い"ぃいいいいいいぃぃぃッッッッッ!!!!!!!!』
変態には、変態を。
流石、知能も10倍如パンマン!!!
「さ、ではこの虫ケラめに仕置きを……♡」
『──ごめんなさいごめんなさい本当にお辞め下さいご主人様ぁあああああああぁぁぁッッッ!!!!!』
目の前で、ガックガクと震える悪魔。
うん。初めから、こうすれば良かったんだ!
え? 何が起きてるのか理解らない???
ふむ──そんな良い子達の為に敢えて説明するならば、あの悪魔は、やはり根っからのMだったって事さ。
そりゃ、オレもさ……出来る事なら、こんな変態野郎を真似たくねぇよ? でもさ???
罵倒する→喜ぶ。
物理に訴える→超喜ぶ。
褒める→喜びながら自家発電する。
結論→どうせぇ言うねん……(泣)orz
蔑んでも、罵倒しても、痛めつけても、褒めても喜ぶこの最強の悪魔を──オレにどうしろと!?
そう、思いもしたさ。
でもさ、ごめんなさい√に行く為には……どうにかしなきゃじゃん?
そう諦め、10倍の知能を精一杯フル稼働して絞り出したのが、この──
──もう相手と同じ事をすれば良いのでは?──
…………だ。
他にも攻略法があるのなら是非とも教えてほしい。試すから。
だが何より、効果はあったのだ。それも、かなり絶大な効果がな。
「またまたぁ──何を仰いますか……ご主人様♡」
『ひぃいいいいいいいいいいいいッッッ!!!!!』
オ"ェエ……言っといて何だけど、やっぱキツいわ。口から、砂、吐きそう。
「(冷たい目)」
「(ドン引き中)」
「ぇ、え? あの……ごめんなさい。いったい、何をしていますの??? きさら──」
「──シッ! 人には、言えん趣味もあるんじゃよ」
お嬢様に、爺ッ! いつの間に!?
あと、社長と久遠はその……ソレやめて? 心まで10倍にはなって無いんよ。オレ。
『「先輩/元主、5万でどう/どうだ?」』
──何が?????
「『(無言撮影中)』」
二人とも何か言って!? あと無言でオレの痴態を撮影らないで、お願いだからッ!!?
「…………お前、男性ホルモンどうなっ──」
「──やめなさい! 田中くん、メッ!!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「ご主人様……」
『ひぃぃッ!?!!? な、何でしょうか!?』
…………もう、ゴールしても、良いよね?
「良い加減、手、離してもらえます?」
『ふぇ!? あ、はい! ご主人様♡』
時間は稼いだ。
「それで、ご主人様ぁ? このまま、オレにご主人様として崇められたいですか???」
『──絶対に嫌ですッッッ!!!!!』
即答か。だが……この悪魔への仕置きには、なった。それに攻略法も理解ったし。
「それなら──とっとと尻尾巻いて家にでも帰ってろ、この救いようの無いド変態めがッ!!!」
ガンッ──と、やや乱暴に悪魔の鉤爪を蹴りつけ……詰る。
『〜〜〜ぁ♡♡♡ ひ、ひゃい! ご主人様ぁ♡』
一瞬、ビクンッ! と、悪魔が震えたような気がしたが……気の所為だよな? うん、気の所為だ!
バサァ──と、巨大な翼を悪魔が広げる。
オレの努力が、遂に実っ──
『──あの、ご主人様♡ 今回の粗相に対する仕置きは帰ってから、していただけるので?』
………………………………。
顔を赤らめ?言う、悪魔に──にこり、とオレは微笑む。
そして──
「──とっとと家に帰れッこの役にも立たないデカいだけの※※※※※がぁッッッッッ!!!!!!!!」
気付けば、そう、叫んでいたのだった。
…………いや、マジであの悪魔を元居た場所にクーリングオフる方法って無いかな???
無い? ぁ、はい………………。
◆◆◆
すぅ〜〜〜はぁ〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!
深呼吸を終え、改めて──お嬢様と向き合う。
長かった……本当に、長かったよ。
「お嬢様、くそじじッ──いえ、お爺様とちゃんとお話しは出来ましたか?」
問う。
コレで出来て無いなんて言ったら、キレるかもしれんけど……主に、オレの血管が。
──だがまぁ、その心配は要らないか。今のお嬢様の顔を見れば、嫌でも理解る。
「えぇ。勿論ですわ、如月!」
「迷惑を掛けたようですまんのぉ。今度、改めて詫びを入れさせてもらおう」
何処か、憑き物が落ちた様な……そんな顔をしている。これなら、大丈夫だろう。
「──それで、約束通り……説明はしてもらえるのかしら? 如月」
今まで、黙っていた千尋さんが口を開く。
まぁ、当然だが──その目は冷たい。
「えぇ。約束通り、きちんと説明はさせていただきます……ただ、その前に──」
「──私の話を、聞いてはいただけませんか?」
お膳立てをしようとした矢先……お嬢様が、一歩前へと踏み出した。
「はぁ? 貴女が???」
「お嬢様……?」
「──話に割って入ってしまい、申し訳ありません。けれど、どうしてもお伝えしたい事があるのですわ」
凛とした顔で、お嬢様は告げる。
…………成程、膳立ては無用って事か。了解です。
どうぞ、とお嬢様に道を譲る。
「──如月ッ!」
「約束は守ります。ですが、千尋さんだってお嬢様に言いたい事や訊きたい事があるのでは?」
そう言うと、千尋さんは僅かに息を呑む。
「…………ありがとうございます、如月」
「どういたしまして」
ニコニコと送り出すが、問題は此処からだ。
「──それで? 私にお伝えしたい事っていったい何なのかしら? ねぇ、金盛財閥のお嬢様???」
嫌味というか、皮肉たっぷりに千尋さんは言い放つ。
「それは……此度の襲撃と、これまでの私の無礼についてですわ」
お嬢様は、歩みを進める。
「──言い訳なら、要らないんだけど?」
「はい。その様な事は、致しませんわ」
「へぇ? じゃあ認めるの、自分がやったって?」
「──はい。此度の、御社の社員である皆様を襲撃したのは私ですわ」
そうキッパリと言い切り、千尋さんの眼前でお嬢様は立ち止まる。
「そう──御自慢のお爺様に何とかしてもらおうって魂胆なのかしら?」
「いいえ……と、言えれば格好もついたかも知れませんけど、そうかもしれませんわね」
そう、苦笑しつつ──お嬢様は真っ直ぐに答える。
謝罪だけで、全てが許されるワケでは無い。
責任能力の面を考えても……まぁ、そうなるだろう事は理解できる。
と、爺の方を見ると──
──まぁ、見ておれ。と、見守っていた。
「へぇ? 自分でいらない事をしておいて、結局はお爺様任せ……はぁ、本当に嫌になるわね」
「えぇ、返す言葉もありませんわ。私は愚かで、本当にどうしようも無いガキでしたわ」
ジッ、とお嬢様の目を見た後──千尋さんは、一つ……大きな溜息を吐く。
「なに? 今は違うって言うつもり?」
静かに、けれどもハッキリと通る声で……千尋さんは、お嬢様に問う。
それに対し、お嬢様は首を横に張ると──
「──いいえ。きっと、今も私は愚かなクソガキのままなのですわ……けれど」
それを言い訳にして、逃げたくは無いから。
真っ直ぐに千尋さんを見据え、告げる。
「──この度は、私の愚かで身勝手な行動のせいで、御社に数多くのご迷惑をお掛けしてしまいましたこと誠に、申し訳ありませんでした!!!」
そう言葉を紡ぎ……お嬢様は、頭を下げる。
それに続いて──
「此度の件は、そもそもがワシの甘やかしに端を発しておる──誠に、申し訳ありませんでした」
──お爺も、だ。
ホントそれな! と、思いはすれど……
「此度の件は、私の監督不行き届きにも原因はあります。この度は誠に、申し訳ありませんでした!」
罪は罪なので、オレも大人しく頭を下げる。
──何なら、土下座でもしよか?
「はぁぁ……温度差で風邪引きそうなんだけど? 言いたい事はまぁあるけど、一先ず……」
お嬢様とご老体は、顔を上げなさい──。
と、あれれ? なして、オレだけハブられたんですかね、千尋さん???
「綾ちゃん、氷を分厚い板状にして出してもらえる? 如月は座りなさい、地面に。あ、正座してね」
・ ・ ・ W h a t ' s ? ? ?
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