ごめんなさい!!!
『──アリス、アリスト共同作業嬉シイ!』
『………………グルォ』
『アリスモ嬉シイ!? ソレナラ、モットモット頑張ル! ン??? アリス、アレナニ?』
■■■
「はい、お嬢様チーンして」
「も、もう平気ですわ! それよりも、わ、私が泣いた事は──くれぐれも内密に! お願いしますわ」
お嬢様が恥ずかしそうに言う──が、お嬢様。オレだって自分の命が大事なんですよ?
あの爺にお嬢様を泣かせたなんてバレたら……ね?
「えぇ、寧ろコチラの方こそあの過保護ジジ──ま、政次郎氏には内密で、お願いしますね?」
オレもまだ4にたくは無いので。
さてと、色々あったが一先ず……爺の命令通り、お嬢様の確保は完了した。後は──
「──あ、いたいた! せんぱ〜い!!!」
ん? おぉ、久保か。
「ぴぃっ!?!!?」
…………ぴぃ?
え? どしたの、お嬢様???
そんな孵ったばかりの雛みたいな声あげて? あと、お顔が強張っていますよ?
『む、主よ……あの男は放置して大丈夫なのか?』
「あの男? あぁ、大平さんの事ね。へーきだよ、回復薬突っ込んでおいたから!」
ニコニコと笑いながら親指を立てる久保……に、オレの背に隠れたお嬢様はブルブルと震えている。
「んで? そっちはどうなったの???」
チラリ──久保が、オレを……いや、正確にはオレの背後に隠れたお嬢様を見る。
「見たトコ、落ち着いてはいるみたいだけど……こっちの社員を痛めつけておいて、まさか──」
──このまま終わるなんて、思ってないだろうね?
ニコッ、と胡散臭い笑みで言い放つ久保。
「──ッ!」
その言葉に、お嬢様はビクリと肩を跳ねさせる。
うん。まぁ、そらそうだわな???
お嬢様がやった事は、モンスターを使った通り魔みたいなモノだ。簡単に許せるモノでは無いだろう。
社長曰く──入院してる奴も居るらしいし。
「あー、えっとな久保──」
「──無論、そんな都合の良い事……私は、思っておりませんわ!」
あの爺からの依頼もあるので、オレが苦しながら言葉を紡ごうとした矢先……
オレの背後から、お嬢様が前に出る。
お嬢様、ガクガクと震えてるけど……。
「へぇ──それは良かったよ、で? それじゃあ君は、いったいどうするつもりなのかな???」
相も変わらず、笑顔で久保が言葉を突き刺す。
「君の下らない八つ当たりの所為で、怪我をして入院した人だって居る。その人に君は、どうするの?」
我が後輩ながら……グサグサ行くな、お前?
……まぁ、正論だが。
「それは──」
それは?
正直、オレも『お嬢様の答え』は気になる。自分がした事に、どう向き合うつもりなのか……。
「──謝りますわ! 誠心誠意、心を込めて!!!」
「は──?」
久保が、驚いた様に零す。
「例え許されなくとも、頭を下げて謝りますわ! だって私がした事は、アナタの言う通りなんですもの」
──下らない八つ当たり──。
お嬢様が、ハッキリと言う。
「裁きだ何だ言い訳しても──結局は、そうなんですもの! 私が、100%悪いのですわ!!!」
「──ッ」
僅かに、久保が息を呑む。
「……自分が悪いって、認めるの?」
「えぇ──認めますわ!!!」
そう断言し、お嬢様は何故か……チラッとオレの方を見てくる。恥ずかしそうに。
「私は……ずっと嘘を付いて、必死に言い訳して自分の下らない見栄を守っていましたわ。けれど──」
けれど?
あと、お嬢様。マジでこんな時に言う台詞じゃないとは思うんすけど……久保、アッチです。
「──嘘も、言い訳も、もう辞めますわ。だって、今の私が、一番素敵だと言ってくれた方が居ますもの」
「………………お嬢様」
「 先 輩 ? ? ? ? ? 」
あ、ひゃい……な、ななな何でございましょうか、my 後輩様?
そんな目されると、オレ、こ、困っちゃうな〜?
「ですから──」
ふぇ? ──一歩、一歩……お嬢様は、久保の元へ進んでゆく。
「──私がした事は、完全に負け惜しみ。下らない八つ当たりですわ」
一歩、進む。
「このショボい誇りを守る為に、正々堂々と戦ったアナタ方に──不正などと言い掛かりまで付けて」
また一歩、お嬢様は進む。
「加害者なのに被害者面をして、卑劣な行為に手を染めてしまいました」
一歩進み、久保の眼前でその足を止めた。
「私の誇りを一番踏み躙っていたのは──私自身ですわ。此度の件、本当に申し訳ありませんでした!」
真っ直ぐに久保の顔を見て言葉を紡ぎ──お嬢様が、頭を下げる。
「ッ! どうして、僕に頭を下げるのさ?」
訝しんだ顔で、久保が問うと……
「アナタにも、多大なご迷惑をお掛けしてしまったからですわ! 本当にごめんなさい!!!」
お嬢様は、更に深く頭を下げる。
「ちょ、先輩──ッ」
と、珍しく慌てた様子の久保。ふむ、ならば……オレがすべきは。
久保の元へ、歩き……オレもその眼前で立ち止まる。そして──
「せ、先輩?」
「──此度の件は、私の監督不行き届きによるものでもあります! 誠に申し訳ありませんでした!!!」
頭を下げる。
「はぁッ!?!!? ちょ、ちょっと先輩!?」
『主!? ぇ、なんッ、え!??』
キメラくんや……上司にだけ、頭を下げさせるワケにはいかねぇだろうが。
それに、監督不行き届き……だしな?
爺にお嬢様を任されていたのに、こうなった以上オレにも責任はある。あと、モンスター売ったし。
「き、如月……どうしてッ!?」
「今回の件は、オレにも責任があります。なので、謝るのならオレも一緒に謝ります」
僅かに、お嬢様が息を呑む。
「──ッ、本当にすみませんでした!」
「誠に──申し訳ありませんでした!」
さてと、コレをあと何回繰り返す事になるのやら。
それでも、お嬢様がそうすると決めたのなら……部下として腹を括るとするか。
例え、許されなくとも──。
諸君も覚えておくと良い。回収と謝罪……同時にやらなきゃいけないってのが部下の辛いところだ。
でもまぁ、一緒に謝る上司が居るのなら──多少、その辛さは軽減できるが、な。
「──ッ、分かった! 分かったから、二人とも頭を上げなよ! これじゃあ僕が悪者みたいじゃん!!!」
・
・
・
「はぁぁ……そもそも、先輩は良いの? ゲーム、色々されたんだよね?」
「う"ッ! そ、その事についてもす──」
──言わせんよ?
「……それはもう許したから良い。それに、そのお陰でマッちゃんの協力も取り付けられたしな」
悔しく無いと言えば嘘になるが──
この程度の失敗で、この成果はお釣りが来る。
「だから──もうオレに謝る必要はありませんよ、お嬢様。その分は、別の方にお願いしますね」
またウダウダ言おうとしている、お嬢様目覚ましを停める。
──もし次、同じ事言ったらチョップな?
「うぅ……こ、子ども扱いをしないで下さいまし! あ、頭も撫でないでッ!!!」
はっはっは! いま、ちょっとだけ爺の気持ち理解っ……ッ!?
「──パラサイト、壁盾! キメラ、お嬢様、久保はオレの背後に!!!」
『あれ私は!?』
うるせぇ! お前も来たかったら来い!!!
壁盾を構える!
なんだ!? 『何か』が降ってくる!!?
『──見つけたわよ如月ぃーーーーーッ!!!』