何故こんなコトに…!
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──ッな、なぜ! 何故こんなコトに……!??
「待てゴラァぁああぁぁあぁぁぁッッッ!!!!!」
『神妙にお縄につけぇーーーーーーいッ!!!』
『炎壁展開☆ 其方は通行止めだ!』
ひッ! め、目の前に炎の壁が!?? このままでは突っ込んでしまいますわぁあああああッッッ!??!?
「──ひぃぃ!? フェンリル、何とかしなさい!」
『──ッ』
目の前に現れた炎の壁を、フェンリルは何とか躱──せてませんわ!? か、髪の先が焦げッ!!?
──何なんですの!? 何故、私がこんな目に遭わなくてはならないんですの!!?
何故、如月達は私を追ってくるんですの!??
私は、正真正銘──金盛 金芽だと言うのに! ハッ……そ、そうですわ!!?!?
「き、如月! 目を醒ましなさい、私は金盛財閥ゲーム開発部総責任者 金盛 金芽ですわよ!?」
仮面を──外す!
さぁ、私の顔をよくご覧なさい!!! これなら如月の目も醒め……!
「貴様ぁ──ッ、お嬢様のご尊顔まで模しやがったのか!? もう許さん、如月さんは激オコです!」
ジャコン──と、巨大な銃口が私に向ッ!?
「何を言っていますの!?? 私は本も──ッ!」
キュィイイン……と、銃口に光が集まる!??
「はい嘘乙──お前みたいな私怨塗れの通り魔がウチの気高いお嬢様なワケねぇだろが!!!」
こ の 偽 物 め ッ ! ! !
カッッッ──と、視界が光に灼かれる!
瞬間、私の身体が……一瞬、浮遊感を感じ……
次いで──転倒した様な衝撃に襲われた。
「っ! フェンリル、いったい何を──ッ!??」
フェンリルを叱責しようと、目を開ける。
……? どうして、私は地面に転がって……?
『──────ッ』
「フェンリル!? なぜッしっかりなさい!!?」
ふぇ、フェンリルが……光に、撃たッ──消えて!?!!? 脚、脚を撃たれ……ッ!
あ、回復ッ──回復をッ!!!
「さて……これでもう、逃げられませんね?」
ジャリ……と、足音が…………直ぐ、近くに……!
「ひぃッ!?」
──如月が、笑顔で歩いて、来る……!
逃げなきゃ! 逃げないとッ、こ、ころ──!!!
フェンリルはモンスター……所詮はデータですわ! ここで回復しなくとも、戦闘不能になるだけ!!!
身体を起こし、足を、逃げなくちゃッ!??!?
『はぁ。瀕死のモンスターを見捨てて逃げるか……気高いお嬢様とやらが、聞いて呆れるな?』
『──ショボい誇り……ふ、主の言う通りか』
背後から、声が、聴こえる。
「ふぅ、やはり偽物ですか?」
冷たい声が、問うてくる。
──偽物? 私は、偽物???
ち、違いますわ! 私は、私は──金盛 金芽!
金盛財閥ゲーム開発部総責任者──金盛 金芽ですわ!!! 偽物などでは、断じてありません!
それなのに、なぜ如月は……
──私を偽物などと呼ぶんですの!??
何度も、何度も、私は本物の金盛 金芽だと言っているのに! どうして信じてくれないんですの!?
──お前みたいな私怨塗れの通り魔がウチの気高いお嬢様なワケねぇだろが!
先程の、如月が言った言葉を思い出す。
チクリ……と、何かが…………痛む。
私怨塗れ? 私が???
違う、違いますわ! 私のコレは、復讐──正当な裁きであり、通り魔とか闇討ちとかでは断じて──!
──完全な負け惜しみじゃん。
違う、違う!!!
汚い真似をした癖に! ズルをして勝ったくせに、勝手な事を言わないでッ!!!
だって、そうでなくては──おかしいもの!
「ちが、う……違う、違う違う違う!!! わ、私は金盛 金芽! 正真正銘、金盛 金芽ですわ!」
──叫ぶ。
はしたない、とか……そんな事、もうどうでもいい。
「仮に……仮に、貴女を本物のお嬢様だと仮定するとして、何故、このような卑劣な事をしたんですか?」
如月が、問う。
『え? それを元主が言っ──ぶべらッ!』
『──黙れ割引悪魔。今、主が最高に格好をつけているところだ邪魔するんじゃない!』
卑劣? 私のした事が???
いえ、違う。そんなワケない!!!
「卑劣じゃ、ない……卑劣なのは、百鬼コーポレーションの方ですわ! 私のコレは復讐!!!」
そう、そうよ!
卑劣などである筈が無い!!!
だって、だって──私は──ッ!
「だって、おかしいじゃない! 私は、優秀で……失敗なんてしない! するワケがないもの!!!」
──私が、優秀だから僻んで!
──私が、優秀だからズルをして!
──私が、優秀だから……だから、私に恥を掛かせようと!
「だからアイツらがズルをしたに決まってる! だから、だから私はッ──!」
「──どれほど優秀な者でも、失敗くらいしますよ」
………………え?
私は、如月を見る。
如月は、只々──真っ直ぐに、私を見ていた。
「──ッ! 嘘を──」
「嘘ではありません。皆、失敗を経験して……その上で、努力をして成功へと繋げていくんです」
キッパリと、如月は告げる。
「お嬢様は、最初から自転車に乗れましたか? 補助輪も、支えてくれる人も無く……たった一人で」
そんなの──!
「練習して転びませんでした? それが悔しくはありませんでしたか? だから何度も練習したんでしょ?」
──ッ〜〜〜!?!!?
「なぜ貴方がその事を知っているんですの!??」
「ん? そりゃあ、貴女の爺様から嫌と言うほど聞かされましたのでね? 可愛らしいじゃないですか」
か、かわッ──!?
「まぁ、つまりは……お嬢様、どれほどパーフェクトレディであろうと人は失敗をするって事です」
………………失敗、する。
どれほど優秀でも──どれほど完璧でも?
「おいバアル。今回の百鬼コーポレーションのゲーム、不正なんて無かったんだろ?」
『──ふむ。主の言を借りるなら……正々堂々と戦った。不正は無い……そうだ』
炎を操っていた、男が言う。
「だよなぁ! つーか、社長にそんな頭ねぇーし」
如月も、楽しそうに笑う。
──何故、そんな風に笑えるんですの?
悔しくは、無いんですの? あの女の言葉を借りるなら、作者にとって自分の作品は──!
「……どうして、そんな風に笑えるんですの?」
目の奥が、ツンとする。
気持ちが、抑えられない……ワケが理解らない、どうして──どうして笑えるの???
「負けたん、ですのよ? 百鬼に、あの会社に私達は負けたんですのよ? 私の──私のせいで!」
視界が、滲む……胸が痛い、苦しい……。
本当は、本当は理解っていましたわ。
自分が何故、責任者の任を解かれたかも──なぜ、あの祭典で……百鬼に負けたのかも!
全部、全部──理解っていましたわ!!!
あの祭典で、百鬼のゲームを観た時から!!!
私では勝てないって、理解ってしまった!
独りよがりな私が弄ってしまったゲームと──多くを笑わせて、喜ばせる事が出来ていた百鬼のゲーム!
どちらが勝つか、なんてそんな事──最初から分かり切っていましたわ!
そも、私は彼女から相手にもされていなかった!
でも、それを認めれる勇気なんて──私には、無かった。だから──
「──貴方は悔しく無いんですの!? 作者にとって、自分の作品は我が子も同然なのでしょう!??」
もっと怒れば良い!
──お前の所為だって!!!
見栄を張りたくて、貴方の作った子を無茶苦茶にしてしまった私に!
「本当は理解っていましたわ! 私は気高くも無いし真っ直ぐで優秀でも無い! 唯の──」
──凡庸なだけの、世間知らずだって!!!
私は叫ぶ!
涙で視界は滲み、堰を切ったように次々と言葉が濁流のように流れ出て来るから、喉が痛い。
「お爺様も、本当の意味で私をお認めになったワケじゃない! ただ私が孫だから、そうしただけ!」
だって私は──優秀などでは無いのだから!
どれほど手を伸ばしても、其処には、あの背中には……手が届かない。そんなの、知っていた!
「力になりたくとも、私の力などでは──あの背中を支える事など出来ないって、理解ってた!」
如月の事だって、そう!
彼は、私では無く……お爺様の元へとやって来た。
羨ましかった──お爺様から信頼されている彼が。私とは明らかに違う、そんな彼が。
「何でも出来る、如月……私には、貴方がとても眩しかった。貴方のようになりたかった!!!」
でも、私は見栄っ張りで。
相手に教えを乞う事すら出来なくて。
だから──
「──貴方に、あの賭けを持ち掛けられた時……柄にも無く、張り切ってしまったんですの」
本当に、どうしようも無い。
対等に見てくれた……なんて勘違いまでして。
挙句、権力を振り翳して──ゲームを無茶苦茶にして、財閥の名を穢した。
「最低な世間知らず……ですわよね」
両手で、顔を覆う。
私を──見ないで。
「貴方の後輩が言っていた『完全に負け惜しみ』という言葉……正に、その通りですわ」
苦笑する。
ハナから誇りなんて呼べる高尚なモノでは無いけれど、それを一番踏み躙っていたのも──私。
「──ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい」
八つ当たりをした。
彼らは、正々堂々と戦って──私達に勝った、だけなのに。
「──ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
見栄を張った。
その所為で、貴方の大切な子をメチャクチャにしてしまった。
「ごめんなさいごめんなさいごめん──ッ」
「──はい、ストップ!」
ポンッ──と、まるで目覚まし時計を停めるような気軽さで、頭を軽く叩かれる。
「はぁ。とりま、オレの分の謝罪は受け取りましたんで、残りは後の人達に取っておいて下さい」
ちょっと失礼しますよ──っと、手を退かされる。
「うっわ、酷い顔ですね」
そう言いつつ、如月はハンカチで私の目元を拭ってくれる。
「目は赤くなってますし、鼻水まで……お嬢様は、パーフェクトレディなんかじゃありませんね」
そうですわ……私はそんな凄い人間などではありません。
私は、醜い……そんな人げ──
「──でも、今のお嬢様が一番素敵だと思いますよ。少なくともオレは、ね?」
■■■〜〜〜一方〜〜〜■■■
「オラ、早く如月の居場所を吐きなさい!!!」
『ぬ"ゃ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーッッッ♡♡♡』
(誰が教えるかぁーーーーーッッッ♡♡♡)
ギリギリギリギリ──ッ!!!
「ちょ、社長さん! 乱暴はダメですよ!!!」
「猫に逆エビはやり過ぎだって!? あ、でもソイツ喜んでるのか??? で、でも──?」
「早く、言いなさい! 止めるわよ!!?」
『──ッ!? わ、分かった! 言う、教えるから──も、もっと激しくして欲しい……にゃ♡』
「この変態がよぉーーーーーーーオラぁッッ!!!」
ギリギリギリギリギリギリ──ッッッ!
『──あぁぁああああああああああああああああぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁッッッ♡♡♡♡♡』
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ