援軍…?
『くッ、良い加減裁きを受け入れなさい!!!』
「──嫌だね。大体、僕そんな裁きを受けなきゃいけない程の悪い事なんてしてないし」
少なくとも、こんな奴に罰される理由なんて無い。
『何ですって……よくもまぁ、そんな事が言えましたわね!? 人の誇りを踏み躙っておいて!』
キーキーと、仮面の女が喚く。
──あー、やっぱりこの女は……
「それはそれは、随分とショボい誇りをお持ちなんだね、金盛財閥の──金盛 金芽さん?」
敗者を馬鹿にして、勝者を疎む。
僕が言えた事じゃないけど、コイツにだけは罰とか裁きとか言われたくは無いね。
それに──
「──それに、正体隠して闇討ち紛いの事までしておいて被害者面しないでくれる? ウザいんだけど」
笑顔で、そう言ってやる。
別に闇討ちが悪いとか、そんな偽善的な事を言うつもりは微塵も無いけど……
ふと、社長の取り乱した顔を思い出す。
「こっちは正々堂々と戦って、そして勝った。ただ、それだけ。そこに不正なんてモノは無い」
それに、社長はそんな事が出来るほど器用じゃない。
強いて言えば、君が勝手に僻んでいるだけでしょ?
「それを誇りを踏み躙られた? 裁きを受けろ??? 言ってて恥ずかしく無いの、ソレ?」
完全に負け惜しみじゃん。と、笑う。
『なッ!!? ……ッ、フェンリルやりなさい!』
癇癪を起こしたように、お嬢様は顔を真っ赤にしモンスターに命じる。
なるほど──?
口で言い返せないなら次はモンスターを使って黙らせようって? ハッ、舐められたモノだね。
「その誇りとやらを一番踏み躙っているのは、アンタだって事に良い加減気付きなよ?」
フェンリルがお嬢様の命令に従い、その巨体で僕の方へと突っ込んで来る。
はぁ……じゃ、先ずはソッチから片付けようか。
「バアル、フェンリルに『獄炎』──ミシャンドラはヘルを狙って。ヘルを倒せば、この冷気も止まる」
……筈だ。
小さな爆発音と共に──紅蓮の炎の壁が展開し、フェンリルの動きを止める。
獣は火を恐れる。それはモンスターも同じらしい。
けれど──悠長にはしていられない。
僕と大平さんは、バアルが薄く膜状に炎を張ってくれてるお陰で無事だけど、周囲はそうもいかない。
幾ら人の通りが少ないと言っても、限度がある。その内、誰かがこの道を使うだろう。
──そうなったら、その誰かが被害を被る可能性もあるからね。とっとと冷気を鎮めないと。
動きを止めたフェンリルの脇を素早く通り抜け、ミシャンドラはヘルの元へと向かう!
だが、そうなると……
『! 隙ありですわ──ヨルムンガンド、その生意気な奴を狙いなさい!!! 「猛毒ブレス」!』
僕狙いか……やっぱり、ね。
「ホント単純だね。アガレ──ッ!?」
新たにモンスターを喚ぼうとした瞬間、グニャリと世界が歪む。
そして──
「──お邪魔しま〜〜〜すッッッ!!!!!!!!」
そんな気の抜けた大声と共に、ドズンッ!
上空より飛来した何かが、今にも、ブレスを吐こうとしていた蛇──ヨルムンガンドを一撃で仕留める!!!
『なっ!? 次から次へと……いったい何ですの!』
予想外の事態に、お嬢様が金切り声を上げる中──
「フッ──何だかんだと訊かれたら、答えてやるのが世の情け……後の諸々は以下省略」
と、ヨルムンガンドが消滅する光と土煙の中……何かが……いや、『先輩』が悠々と立ち上がり答える。
「タダ働きが嫌いな高校生──如月 境夜、推・参☆」
そんな宣言と共に──バラバラと、大量の紙吹雪が舞い落ち……
「──虫くん、何してるの?」
『今の私は演出担当のキメラだ。虫くんではない』
あ、うん……そうなんだ?
『おいクソ虫、お前寒いのダメじゃなかったか?』
『主より賜ったカイロが私を守ってくれているのだ。ふふん、羨ましいだろう割引悪魔?』
自慢するように、虫くんがニヤリと笑う。
……カイロで凌げるような冷気じゃないと思うんだけどね、コレ。まぁ、本虫が平気そうなら良いか。
『( #^ω^ )ノ●』
あとバアル、その火球はちゃんとフェンリルの方にポイッするんだよ? コッチはダメだからね???
『──ッき、如月!!? あな、貴方いったい何をしていますのこんな所で!??!???』
おっと、お嬢様が取り乱す。
ワタワタと慌てて、手櫛で髪を直したり……仮面の微調整まで──何だろ。ちょっとイラつくな。
『こ、コホン──ま、まぁ良いですわ! 如月、其処の愚か者から私を助けなさい!!!』
僕を指差し、お嬢様は勝ち誇ったように告げる。
「……は? 何故???」
『いいから早くなさい!!! 貴方は私を助けに来たのでしょう!? だったら早く其処の──』
──ズバンッッッ!!!!!
『ひッ!?』
先輩が投擲した投槍が、お嬢様の真横の地面に深々と突き刺さる!
そうして先輩は、強引にお嬢様を黙らせると……
「──あの、何か勘違いしてません?」
一つ、不思議そうに問うた。
『……へ?』
自分を助けに来たと思った先輩の、まさかの攻撃にお嬢様は間の抜けた声を上げる。
先輩は、その様子を一瞥すると……
「オレは可愛い後輩を助けに来ただけです……そもそも、誰ですか貴女???」
キョトンと、その首を傾げた。
『…………え?』
──え? あの、先輩???
それ、マジで言ってるの???
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