襲撃 4/4
■■■翌日/病院■■■
「──まさか、鈴木まで襲われたなんて……!」
「相手は完全に僕達を狙って来てる、って事だよね」
それも連日襲うなんて、大した自信家だ。
「でも何で──ッアタシ達、そんな襲われる様な悪い事は何もしてないわよ!!? なのに──!」
そう、社長は声を荒げるけど……
「──はぁ、僕に怒鳴っても仕方無いでしょ?」
正直、見ていられなくてついて来たけど──どうやら正解だったらしい。全く、取り乱し過ぎだよ。
「相手の事を考えるには情報が足りないし、そもそも知らない内に恨みを買う事くらい誰にでもある」
違う──? と、社長を見る。
「それは、そうだけど──でも!」
「いま僕達がすべき事は少しでも相手の情報を集める事だ。怒るのも悲しむのも後で好きなだけしなよ」
──突き放す。
優先順位を間違えるな……ってね。まぁ、部下思いな誰かさんには酷な話かもしれないけど。
「ッ──いえ、そうね……ごめんなさい。嫌な事を言わせたわね、私がシッカリしなくちゃいけないのに」
はぁ〜、やれやれ。
「全くだよ。まぁ、シッカリしてる社長とか気持ち悪いし解釈違いだから『いつも通り』で良いよ」
──社長は。
「何よそれ!? 人が真面目に話してるって言うのに、失礼しちゃうわね!」
「ッ──ははッ! ってホラ、病室についたよ」
話しながら、ドアを開け──
「げほ、けほッ──ん、んん?? 社長に久保、ちゃん? あぁ、わざわざお見舞いに来──ッ」
ようとしたけど──ピシャンッ!!!
直ぐに……勢い良く、閉じちゃった。
てか、ぇ──誰?????
「ねぇ、久保。いま、儚い系美青年の姿が見えたんだけど……私、疲れてるのかしら?」
「奇遇だね──僕もだよ」
僕と社長は、書いてある名前をもう一度……よぉ〜く確認する!
──『鈴木 信二』──
うん! 間違い無いね!??
再度、ドアを開──
「──あの、二人とも? いったいどうしたの?」
──バンッッッ!!!!!
ドアを、閉じる!
どうしよう、コレ……思ったより大変な事態なのかもしれない!?!!?
■■■〜〜〜17:30〜〜〜■■■
「──はぁ、はぁッ! くそッッッ!!!」
遮蔽物の後ろに身を隠し、何とかスマホを操──ッ
『フェンリル、「氷爪撃」ですわ!!!』
──ッッッ!??!???
やや甲高い女性の声と共に、獣の遠吠え……そして、バギャンッッッ!
氷を纏った巨大な鉤爪が、コンクリートの壁を抉る!
「ッ、くそ!」
遮蔽物だったモノの破片に晒されながらも、何とか足を動かし逃げる!
『無様ですわね、ヨルムンガンド!』
「──ッ!?」
空かさず、回り込んで来た巨大な蛇が……その尾を横に薙ぐ!
──ッ、どうしてこんな目に!?
尾を間一髪で避けた時……そんな事が一瞬──脳裏に過ぎったが、今はそんな事よりも、
この事態を、どうにかしなくては!
スレイプニルさえ召喚出来れば、空を飛んで逃げられるのだが……
感覚が鈍くなった──自身の腕を見る。
薄く氷が張り、少し手を動かそうとすればパリパリと、薄氷の欠片が地面に落ちる。
いや、腕だけじゃないな……足も、か。
「──くッ」
『素早くて、小賢しく逃げ回る……ふふ、まるで害虫の様ですわね? ヘル、「極寒世界」!』
女性の命令に従う様に、召喚された三体目のモンスターが──詩を、歌う。
その、詩に呼応する、ように……モンスターを中心にゆっくり、と、世界が、白に覆われ──凍って──
ッ──身体が……動か、ない。
「はぁ、はぁぁ……ッ」
吐き出す息が、白く、凍る。
空気まで凍っているのか、キラキラと、視界にダイヤモンドダストが舞い落ちてゆく。
身体中に、薄氷が……。
『おーほほほほほッ、コレで終わりですわ! フェンリル、トドメをさしなさい!!!』
狼の……爪が…………くそ。
その、凶爪を前に──意識が、朦朧とする。
視界が、白転するその刹那の瞬間──耳に、声が届──く。
「──バアル、『煉獄』発動!」
白かった世界が、紅蓮に、染まった。
・
・
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「はぁ、全く……帰りにまさか、襲撃の現場に遭遇する事になるなんてね」
『災難だな。で、そっちの……男は大丈夫なのか?』
バアル、お前ね──名前くらい憶えてあげなよ。一応、僕の仕事仲間なんだからさ?
「大平さんね。パッと見だけど、凍傷が多数と体温低下による気絶……かな? 応急処置はしておくよ」
スマホを操作して、フェニックスを召喚する。
「フェニックス、『自動回復』付与」
ポゥ、ポゥッ──と、大平さんの周囲に黄金色の小さな炎が幾つも浮かび上がる。
ん? 人間に自動回復って効くのかって???
──うん。効くよ、めっちゃ効く。
何なら、肩凝り腰痛足首の痛み疲れ目にストレスとその他諸々etcに効く。マジ万能回復だから!
──と、そうじゃなくて!
「フェニックスは暫く、大平さんを温めてあげて」
『ピィ!』
美しい鳴き声で返事をし、まるで鶏が卵を温める様に──大平さんの上に鎮座するフェニックス。
あ、服…………まぁ、フェニックスは暖かいし……体温も回復出来るだろうから、アレで良いか。
スキルのお陰で、傷も少しずつ塞がっているし。
それに──
『──ヨルムンガンド──ッ!』
「防げ、ミシャンドラ!」
蛇──ヨルムンガンドの薙ぎ払いを、ミシャンドラを召喚し防ぐ!
──いつまでも、相手さんが待っていてくれるとは限らないしね?
仮面の女性に、一つ笑いかけ……告げる。
「せっかくの良い所を邪魔しちゃってごめんね? 代わりに、此処からは僕達が相手をするよ」
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