襲撃 1/4
■■■side 帝王■■■
「──ふぅ、一先ずはコレでひと段落か……」
息を吐き、書類を纏める。
む……、もうこんな時間か。いかんな、健全な家庭は健全な勤務から! とっとと帰るか。
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ふぅ、最近は暗くなるのが早いな。まだ17時を過ぎて少しだと言うのに──もう大分暗い。
──コツコツコツコツ……
しかし、最近……妙に、綾が落ち込んでいる。
まさかまた、如月くん絡みか??? だが、彼はいま会社には居ないし──?
──コツコツコツコツコツ……
…………外か?
外で、綾とアレコレしてその毒牙に綾がッ!?
いやいやいや!? 彼もまだ学生、そんな事は出来な──いやでも、最近の子は色々と凄いと言うし。
──赦さんぞ? そんな淫らな事、私は、お父さんは絶ッッッ対に赦さんからなッ!!?
コツコツコツコツコツコツ……
「ッ、誰だ!? さっきから、人の背後をコソコソコソコソと! 隠れてないでサッサと出て来い!!!」
後ろを向き、怒鳴る!
………………。
私以外、誰も人の居ない闇の中に──吐き出した言葉が、呑み込まれて消えてゆく。
耳の痛くなる静寂の中、ゾクリと背筋に寒気とも悪寒とも呼べるモノが奔る。
まるで……何か得体の知れないモノに見られているような、そんな気がする。
無意識に──呼吸が早くなる。
「ハァ、ハァッ……どうした!? 出て来れないのか臆病者め!」
逃げそうになる脚を叱咤し、更に声を上げる。
相手の怒りに触れたのか、冷気が増し……吐いた息が白く染まった。
周囲からは、ピキピキと──甲高い音が鳴り響く。
『──臆病者…………ですって?』
ふと、物陰から……誰かが姿を現した。
口調やその体格からして、恐らくは女性だろう。
ただ、その顔は不気味な仮面によって隠されている為……見えない。
『汚い事をして、私の誇りを汚した貴方方が……良く言えたモノですわね!?』
女性が怒鳴る。
だが……汚い事とは、何だ? それに、誇りを汚しただと?? 私達が?
「何を言って──」
『──なので、コレは復讐……いえ、天罰ですわ!』
聞く耳持たず、とはこの事か! 仕方無い。
自衛の為だと自身に言い訳し、スマホを取り出す。
モンスターを召喚して、少し驚かせば逃げるだろう……そう思い、操作を──ッ!?
「──なに!? 手がッ!」
『ふふッ、遅過ぎますわ! フェンリル!!!』
恐ろしい程の冷気に、スマホごと、操作しようとした私の手に薄氷が張る!
いや──ッ、スマホや手だけでは無い!
ピシピシと、甲高い音が……靴や服からも上がり、張った氷により動きが、阻害される!!!
『──Grrrrrr……』
背後から、獣の呻きが聴こえ──ッ
『──それでは、さようなら』
振り返った瞬間、私の目に映ったのは……私目掛けて、振り下ろされる巨大な鉤爪。
そして……美しい程の純白だった。
──その光景を最後に……私の視界は、闇に覆われたのだった。
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