そして、時は流れ……
■■■社長side■■■
「──社長、サッサとこの書類に目を通して判」
「上野くんだったね? 悪いけどコレをコピーして全制作班に配ってくれる? 宜しくね」
……プルルルル──ッ!
「──なに? うん、了解……後で取りに行くよ。ああ、約束通り社長には了承を取ったよ」
そう、言い終わると久保はスマホをポケッ──
「──なにコッチ見てるの? 書類は? ちゃんと判は押したんだろうね???」
「えッ!? あ、ちょっと待ってね……」
と、言い終わるや否や頭上からは……溜息と共に冷たい視線が降ってくる。
「はぁ……まだ? 何してるの、やる気あるの?」
ひぇ──ッ! コイツ、顔に出る分こういう時は如月より怖いわね。
「は、はい……コレで、良いわよね?」
「──うん、問題無いね。じゃあ僕は今からバグの修正データを受け取りに行ってくるからサボらないでよ」
別にサボらな──ふぇ?!
「え!? アンタ、受け取りにって……まさか、外部にバグ修正を依頼したの!!?」
「そうだよ。ウチの学校の連中に話したら是非って」
しかも学生!? あ、いや教師の可能性もあるのかしら……って、そうじゃなくて!
「──そういうのは先に私に許可をッ」
「取ったよ。37枚目の書類で……ちゃんと読まずに判を押したのは社長だけどね?」
ふぁッッッ!?!!?
さ、さんじゅうッ──え、ちょ、どれよ!??
「因みに報酬は、そのゲームのエンドロールで自分達の事も載せて♡ってさ」
「〜〜〜ッ!」
「まさか一度は了承しといて、やっぱりダメなんて言わないよね? 社長???」
一枚の紙を手に、ほくそ笑む久保。
やってくれたわね……ッ、はぁ!
「──大丈夫なんでしょうね?」
「仕事の腕は確かだよ。それに、バグを中途半端に放置してお客様をガッカリさせるよりはマシでしょ?」
…………まぁ、それも……そうね。
我が社はお客様、そして社員第一!
コレ以上、仕事量を増やすくらいなら……確かに、いっその事外部を頼るのも手か──。
久保のお墨付きなら、腕は確かだろうし。
「はぁ〜〜〜ッ、分かった……分かったわよ! そのエンドロールの件、了承したわよ!!!」
うぅ、頭が痛いわ。
「当然だね。帰り、何か買って来てあげようか?」
「アイスをお願い。私は、エンドロールの件を」
担当者に言ってくるわ……と、言おうとすれば、
「──それはもう手配済みだよ」
「は? え、いつ……」
「て・も・と♡」
コイツまさか──ッ!
急いで先程判を押した書類へと目を向ける!
すると、うわッ。書類の隅の方に……確かに……何か書いて、あるわね?
それも注視しなきゃ、見逃しそうな位置に!
「──ッ、くぅ〜〜〜ぼぉぉ〜〜〜〜〜ッッッ!」
「あっははは! じゃ、行ってきま〜す!!!」
はぁぁーーーーーッ、流石はアイツの後輩……手口は違っても、アンタにそっくりよ。如月。
■■■如月side■■■
「──お嬢様ぁあああッ、後生です! 後生ですからちゃんと仕事をして下さい!!!」
土下座でも何でもするので、お願いします!
「む! 何ですの如月、それじゃあまるで私がちゃんと仕事をしていないみたいじゃありませんの!?」
──だから、そう言うとるんじゃい!
無論、そんな事は口が裂けても言えないので、
「いえ、お嬢様の頑張りは良ぉく存じております! けれども、持って来た書類を読み難いからと片っ端からゴミ箱に突っ込んだり、少し判を押しただけで疲れたからお出掛けしましょう! って──」
──仕事ナメとんのか己は???
「お嬢様は出来る子なんですから、もうちょい頑張れますって! ね???」
ハイ、笑顔! オブラート君もガンバ!!!
「むぅ……それは、そうですけど──」
なら、やれや。
ご存知なら、初めから、そうせぇや。
「──で、ですけど! それなら、あの……その、頑張りに相応しい褒美が必要じゃありませんこと!?」
あ"? 何言うとんのじゃ、この女は???
本来であれば、貴様がその褒美とやらを与える立場であろうが違うかゴラ?
まぁ、だが──
「成程。それで、相応しい褒美とは?」
──欲しいモノの一つや二つで、このgr…お嬢様が仕事をちゃんとするのなら安いモノだ。
しかし、この金持ちが欲しがるモノis何?
「そ、それはあの……えぇと…………」
途端に口篭るお嬢様。
しかも、頬を赤くして何でかオレを見てくるのですが? どした……
ハッ──もしかして、お嬢様の欲しいモノって……
「…………お嬢様」
「な、何ですの如月!?」
気が付かなくて、悪かったな。
「──一つ、賭けをしませんか?」
だが、それならこの現状を打開できる!
「か、賭けですの? その、内容は???」
珍しく食いつくお嬢様に、オレは確信する。
そして、それと同時に心の中でガッツポーズし──告げた。
「もし、今度開催されるあの祭典にて金盛財閥のゲームが他を圧倒したのなら──」
今度こそ、『オレ』が企画したあのゲームで社長を負かす事が出来たのなら──
「──したのなら?」
僅かに、お嬢様が息を呑む。
「お嬢様の欲するモノ──敷いては、褒美を……必ずやこの如月 境夜がご用意致します!!!」
──これでどやッ!?
仕事するよな? なぁッッッ!??
「ッ〜〜〜そ、それってつまり……はぅッ」
ん?
あれ??? お嬢様?
顔を真っ赤にし、ピクリとも動かない。
え? うせやろ???
まさか──気絶した?
失礼を承知で、肩を揺するが……カクンカクンと、首が力無く動く。
あ、マジで気絶してるわ。
えぇ……そこまで嬉しいモノなのか? まぁ、女子には確かに買いにくいモノなのかも知れんけど……。
──しゃーない、折角のチャンスでもあるワケだしな。ちょっと良いのを仕入れておくか。
■■■スマホ内/匿名希望K視点■■■
『──フッwww』
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ