鉢合わせ 2
(──何故、こんな事に…………?)
拝啓 皆様。
いったい、オレが何をしたと言うのでしょう?
どうしてオレは今──
「如月さん……さっき、あ〜んされてましたよね?」
「されてたね。先輩、甘いモノが苦手な筈なのに食べてたし……それに、仕事は? どうしたの?」
──尋問……されているのでしょうか?
四人席に、女子が三人も居るというのに……さっきから、心臓がメッチャ痛い!
そしてオレの隣の席を陣取ったお嬢様が、
「如月、誰ですの……この庶民達は?」
機嫌を、損ねかけている。
「あ、すみません……私、如月さんの知り合いの佐藤 綾と申します」
「…………如月センパイの頼れる後輩、久保でぇす」
ッ〜〜〜、ぅう寒気が。
綾ちゃんは兎も角、久保からの冷たい視線がマジで痛い! 口調は明るいのに、その無表情は辛いって!
「如月の、知り合いと後輩? 本当ですの?」
ジロリ、とオレへ目を向けてくるお嬢様。
ぃや、あの……本当ですけど…………?
お嬢様は──何で、不機嫌そうなの?
「は、はい。まぁ……そうです、ね」
顔が、引き攣る。
やましい事はあまり無い筈なのに……胃がキリキリして、目が泳ぐ。
「それで、僕達は自己紹介をしたけど……君はしないのかな? ねぇ、金盛財閥のお嬢様?」
や め て ッ ッ ! ! ! ! !
久保、ステイ! やめて!!?
何でケンカ腰なのお前!? どうした、アレか女の子の日なのか!?? ヤダもうこの子怖い!
「──なんですって?」
ほらもう! お嬢様がカチンて!! 本格的にお切れになられてしまいましたで候!!!
オレの努力を返してよもぅーーーーーッ!
「私は、金盛財閥ゲーム開発部総責任者──金盛 金芽ですわ!!! 宜しくする気はなくってよ!」
──痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……ッ!
やめてお嬢様! 身体を密着させてオレの腕に自分の腕を絡めないで!!!
凄い力だけどgr…お嬢様は、ゴリラだった?
「──ゲーム開発部?」
「ふぅん? で? 何で、先輩が……金盛財閥の金芽さん? と、一緒に居るのかな??? デート?」
何故だ……?
久保の背後に、般若が見える。
目を光らせて、口から煙を吐き出している! え、待って何でオレ何かした!??
「で、ででででデート!? ぇ、えッ!?? そうなんですか如月さん!!!??」
「ち、ちがッ──!」
「──そうですわ! 一仕事終わったので、そのご褒美にデートをしているのですわ!!!」
ゴリラァァアアアアアアアアアアーーーーーーッ!
おまッ、はぁ!? 何言うとんのじゃこの金髪縦ロールメスガキゴリラは!!?
あと終わってない! 仕事まだある!!!
お前が駄々こねたから、仕方無くお供してんだよコッチは! 如月さんはまだ忙しいの!!!
「ふぅ〜〜〜〜〜ん????????」
「如月……さん? 本当なんですか???」
──増えた!? 般若が増えた!!!??
シャ〜コシャ〜コって……刀を、研いでる!!!
は、ハイライトが、二人の目から、ハイライトがき、消え──ッ!
「当然でしょう? 良く出来た部下に褒美を与え、褒めてやるのも上司としての務めですわ!!!」
お前、もう黙れ。
「──え?」
「部下? 先輩が??? まさか……」
………………あ。もう無理(^ཀ^ )
「お嬢様ぁ! もうそろそろ仕事のお時間ですので戻りましょうそうしましょーーー! んねッ!??」
もう、もうこのプレッシャーに耐えられない!
胃が、胃が爆発する!!!
だから、オレは──
「きゃッ! ちょっと、如月!!?」
──お嬢様の腕を振り解き、席を立つ。そして、お嬢様の方へと回り込み……やや強引に、姫抱きにし、
『にげる』コマンド一択!
『如月は 尋問から 逃げ出した!』
即座に、店の出口へと駆け出したのであった。
「──あッ!」
「──ちょっと先輩!?」
あーあーあーあー、聴こえない聴こえない!
オレの耳はどうやら今、故障中らしい。
なので、また後で連絡します。
絶対……きっと…………多分………………。
・
・
・
「──強引、過ぎます……わ」
■■■夕方/自宅■■■
「ただいまぁー…………はぁ」
覚束ない足取りで、玄関へと足を踏み入れる。
あの後も、文句を言うお嬢様を宥めすかし──仕事と報告を終え、漸く、帰路につけたのである。
正直……めっちゃ疲れた。
コレなら、社長のお守りをしていた方が数百倍マシなくらいだが──目的がある以上、そうはいかない。
今はまだ、耐える時なのだ! 如月 境夜!!!
「あ、おかえり先生! 荷物ならオレが運──ぅおッつめて!? ひょ、へんへッ!!?!?」
『んなぁごー!? にゃぁああん!』
(冷えプレイですか!? 我にもお願いします!)
ぁ"ーーーーー、癒される。
モチモチはしてないが、程良い弾力がありポカポカと温かい。
コレは、癖になる!
「へんへぇ! はんへ、ほれほほっへははっへふはほははひへふへほ!!!」
(せんせぇ! 何で、オレのほっぺを触ってくんだよ離してくれよ!!!)
──む、嫌そうな顔をしている。
もうちっとくらい、疲れているオレに安らぎを与えてくれても良いだろうに……!
はぁ、仕方ない。
「……女社長と、何かあったんすか?」
と、解放した頬を撫でながら訊いてくるが、
「ん〜、いや」
『女社長』とは、何にも無かったのでそう生返事を返し……ターゲットを変える。
「タマ……いいか?」
『なぅ! にゃぁご!!!』
(はい! いつでもどうぞ!!!)
ほぉ、ヘソ天とは……随分と受け入れ体制万全ではないか? では──
「──すぅーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
『ふなッ!??』
(はへッ!??)
「せんせぇ!?? な、何して──ッ!!?!??」
ん……何って…………猫吸い、というものをしているのだが?
猫を飼っている奴が、めちゃくちゃ癒されるからやってみ。と、言ってたんだ。
タマは変態で悪魔だが──ガワは猫だ。
だから癒される筈……だろ?
「すぅーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
『んなぁ! ふなぁん!!!』
(やだ! ナニこれ新しい扉が開いちゃう!!!)
「いやでも、ソイツ嫌がってない……のか? ひ、一先ずオレ、荷物置いて来るな──先生」
そそくさと、その場を離れる久遠。
何だ? そんなに、見るに堪えない光景なのか……コレは? 猫を吸っているだけだぞ???
あぁ……でも、ほんの少し……疲れが取れて来たような気がするな。コレ。
「すぅーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
『なぁああああああああああああんんッッッ♡』
「ふぅ──ただいまぁ〜〜〜ってオギャァアアアアアッッッ!!?!? へ、おまッ、何してんの?!」
(……正直、猫を捕食してんのかと思った)
(父談)
■■■百鬼コーポレーション/社長室■■■
「──と、いうワケよ」
「成程。社長に愛想を尽かして先輩があのお嬢様のトコにね〜?」
ふーん……?
「何よ、その顔? まさか、アンタまで辞める気?」
「うーん、どうしよっかな〜〜〜?」
先輩がそういう動きをしていたのは何となく知ってたけど、まさかあのお嬢様のトコに行くなんてね……。
それもこの時期に。
狙いは、やっぱアレかな──?
「なによ、その顔は! ハッ!? アンタ、まさか何か知ってたんじゃ無いでしょうね!??」
それなら……丁度良いか。
僕だって、負けっぱなしは嫌だしね。それに、先輩との約束だってある!
その為には──
「──ねぇ、社長? 先輩をギャフンと言わす為に、僕と手を組まない?」
「は──?」
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ