鉢合わせ
◆◆◆久保side◆◆◆
「──おいひぃ〜〜〜ッ!!!!!」
「………………それは良かったね」
生クリームを口の端に付け、メチャクチャ幸せそうに笑う佐藤ちゃん。
「あれ? 久保さんは食べないんですか?」
「あー、いや……コレでも食べてるんだけど──」
……おかしいな〜? この娘、身体どうなってんだろ──明らかに、身体の許容量以上を食べてるよね?
何で体型が一切変わらないんだろ?
いや、そもそも胃どうなってるの? ブラックホールと接続でもしてるのかな?
「でも残念ですね……社長さん、来られないなんて」
「──まぁ、あの仕事量じゃね……僕が休みをもぎ取れたのだって奇跡みたいなもんだよ」
佐藤ちゃんに「女子会しませんか?」って誘われて、此処に来たは良いけど……会社の方は大丈夫かな。
後で、何か差し入れでも持ってった方が良いか?
でもなぁ……今の社長は色々とヤバいしな〜。
正直言って、あまり関わりたく無──
「──あれ? 彼処に居るのって、如月さん???」
「え? 先輩……?」
佐藤ちゃんの目線の先には、確かに──先輩が居たんだけど……え? あの隣に居るのって……?
◆◆◆如月side◆◆◆
はぁあああ〜〜〜〜〜ッッッ、最悪だ。
マジで最悪。もうマジで今すぐにでも仕事辞めて逃げ出したい。
オレが何をしたと言うんだ?
ただ──会社を裏切って、そのライバル会社とも言うべき所に行っただけなのに……ッ!
「──ふむ、まぁまぁですわね! 庶民相手なら良いでしょうけど、私を満足させるには足りませんわ!」
嘲笑し、全方位に喧嘩を売ってゆくお嬢様。
『じゃあ他所行けや』
って、店員さんの冷たい笑顔が痛い!
お客さん達のヒソヒソ声もね、もう刺さりまくってんのよ! 何でコレで気付かないの!??
お願いですお嬢様、マジで気付いて!
「ホラ、如月も食べなさい」
「──え……?」
め、命令っすか?
「あーーーッ……と」
「──どうしましたの? 如月???」
………………(^_^;)
「その…………お嬢様のモノに口を付けるなんて、恐れ多いので──じt」
「──私は気にしませんわ! はい、あ〜ん」
ずいっ、と差し出される生クリームたっっっぷりの苺クレープに……全身の毛が総毛立つ!
………………土下座か?
土下座すれば、エエんか???
それともクレープの代わりに、その靴をprprでもすれば許されますかね? ダメ???
「如月? どうしましたの???」
──不味い……若干、怪訝そうな顔をされている。
ッ〜〜〜、えぇい!!!!!
「いえいえ……少々、感極まってしまって──では、失礼しますね」
笑顔をキープし、髪にクリームが付かないように押さえつつ……クレープに顔を近付ける。
「も、もう! 如月ったら……!!!」
ヤメて! 恥ずかしくなったのか、手をプルプルさせるのは勘弁して!!!
おぐぅ……甘い匂いが、辛い!
意識が、遠の──く。
「ッ──(ぱくッ)」
──もちゃもちゃもちゃもちゃ……ゴクン!
「ご馳走様でした! とても美味しかったです!」
音速で甘味から離れ……且つ、笑顔を向け、お嬢様にお礼を言わなければならないのが下っぱの辛ぇ所だ。
いやぁ〜、でも美味しかったよ。小指の爪の先ほどに齧った、クレープの皮は!
「ちょッ、ちょっと如月! 貴方これ、まったく食べていないじゃありませんの!!!」
顔を赤くし、金切り声をあげるお嬢様。
──なにを!? ちゃんと食べましたよ!
「はははッ、申し訳ありませんお嬢様。ですけど、やっぱりオ──私には少々、刺激が強かったので」
コレ以上食えと言うなら、目の前でリバースする事になりますけど……よろしおす?
と、言外に言えば──
「〜〜〜ッ、もう! 仕方ありませんわね!!!」
照れたような……嬉しそうな声で返される。
いったいどんなメデタイ想像をしたのかは知らんが、一先ずは助かったと思っても良──
「──如月さん?」
「──先輩?」
「ぴぇッッッ!?!!?」
な、なななんで此処に……綾ちゃんと久保が!??
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ