修学旅行 〜怪異譚〜 20
一日遅れですが、メリークルシミマシタd:(´ཀ`」 ∠):
『──グッ……たとえ我が肉体が滅びようとも、我が意志は不滅──そう、フェニックスのように!』
『そうか、では燃やしてやろう! 燃え散れ!!!』
バアルの手に掴まれたまま、炎に包まれる使い魔。
『あっつ!? ちょ、ホントに火をつけるとか酷くない!?? 消して! 消火班、消火班ーーーッ!』
『おい割引悪魔、火を消せ。私が攻撃出来ないだろう』
と、虫くん。
余程、ご立腹なのか……顔は笑顔なのに、背後には般若が見える。まるで、マジギレした先輩みたいだ。
『──私の目の黒い内は、何処の馬の骨とも知れん奴に主はやらん! 番など以ての外だ!!!』
怒鳴り、腕が解けるように無数の虫へと変わる。
『え? ちょっと、あのド畜生とのご関係を詳しく──ぁいだッ!? ちょ、マジで痛い!!?』
『クソ虫! 貴様、なぜ私まで攻撃する!!?』
使い魔とバアルに、虫が群がる……。
『………………』
『──無視ッ!? 燃やすぞ貴様!!?!???』
火の粉を散らせ、バアルは叫ぶけど──それは君が馬の骨認定されてるからでは? とは、言わない。
「あ、オレは先生の様子を見とくんで……パスっす」
「よっしゃ! じゃあその分も上乗せして、私達がヤっとくわね──ティアマトちゃん!!!」
『(`_´)ゞ』
いや社長、それ以上はマジでoverkillに──あ。
『ぐふぅッ!? ふ、良い……一撃、だった……ぜ』
『だから、何故……私、まで…………』
ティアマトちゃんの強烈な回し蹴りが炸裂し、使い魔と──あとバアルが、身体をくの字に吹き飛ぶ。
ん? 鈍い音がした???
…………さぁ? 気の所為じゃない???
なんかバアルが消滅し掛けてるから、ちょっと回復薬をかけて来るよ! じゃあねッ!!!
◆◆◆
『( ノ^ω^ )ノ』
「よし、巨悪は滅びたわね──ハイターチッ!」
『いぇーい! これで主の平穏は守られた!!!』
と、僕がバアルに回復薬をぶっ掛けに行ってる間に、仲良くハイタッチし合っている二匹と一匹。
『解せぬ……燃やして来て良いか、主?』
「やめときな。次は回復薬じゃなくて蘇生薬をお前に使う事になるから大人しくしてて」
大人しく、使い魔の拘束係をやってなって。
『──フッ、ククククククククク!』
『うわ……いきなり笑い出すな、気持ち悪い!!!』
と、バアルが引いたような声をあげた瞬間──
──キィィイイイイイイイインンッッッ!!!!!
「ッ!?」
「うるさッッッ!??」
「なんだ!?」
『くッ!』
『グゥ!?』
突如、頭が割れそうなほど……音が、鳴り響く!
その音の、発生源は──あの、球体……。
ッ──しまった。完全に、油断した……!
「くッ、ゴーレム! あの球体を、攻撃して!!!」
先輩のシャドウゴーレムに指示を出す!
けど──!?
「──なぁッ!??」
ゴーレムから放たれる光線が、球体に触れる前に歪曲し──霧散する!?
いや、それだけじゃない!!?
『──ガァッッッ!??!?』
シャドウゴーレムの身体が、水銀の様なモノで覆われて……その姿が、鏡像へと変わる!
──ピシッッッッッ!
そして、シャドウゴーレムだった鏡像に亀裂が!?
『ククッ──残念だったねぇ?』
その様子を見て、使い魔が笑う。
『この世界を維持する為に散らばらせていたあの子の「力」が集まり終わったみたい』
ニヤリと、嫌味ったらしく嘲笑する。
……世界を維持する為に、散らばらせていた?
つまりは、この世界の為に分配していた力を──再び、自分の元に集束させたって事か!?
『さぁ──あの子が出て来るよ』
使い魔が、そう言うや否や……
『──ぁアアりぃイイいイスぅううウウウッ!!!』
球体が割れ……巨大な腕の様なモノが──ッ!?
「舎弟くん! 先輩をッッッ!!!!!」
「ッ──しま!?」
──先輩を捕らえる!
「ふがッ!?」
そして、その拍子に先輩が目を覚ます!
こうなったら、一か八か!!!
「先輩! 早くその腕から脱出して!!! じゃないと、先輩が手篭めにされちゃうよッッッ!!!!!」
「──へ? ごめん、いま何て???」
◆◆◆
拝啓──お前ら。
起きて早々、何がどうしてこうなった???
あと、手篭めってナニ? TE・GO・ME???
『──主! はやく、早く逃げて下さい!!! 主がエンダァしてお嫁さんになるなんて耐えられない!』
「うん。とりま落ち着こっか、キメラ」
主、男。なるなら、お嫁じゃなくてお婿な?
………………いや、違うな? いま、ツッコむべきは其処じゃない。其処じゃない、よな???
つか、逃げろつったって──どうやって?
オレ今、何も無いんだけど???
道具無し、モンスター無し……でどうやってこのバカデカいモンスターから──って、コイツだれ?
「ちょっと、社長。このモンスなんスか??? スマホでステ教えて」
「──へ? あぁ、ちょっと待ってね」
はよ。はよして!
まぁ、多分あの球体から出て来たんだろうけど……中々、格好良い姿してんね? キミ。
龍みたいな腕が四本あるトコとか、好みだよ。
「あ、出たわ──って、え???」
「どしたんっスか?」
そんな素っ頓狂な声あげて……?
あと、久保の近くに置いてあるその鏡の像なに?
オレが意識飛ばしてる間に、ナニがあったの?
「ジャバウォックって、書いてあるんだけど……?」
「──え???」
え? ジャバウォック???
コイツ、ジャバウォック?????
オレが知ってるのと、えらく様変わりしてんな? 造形もだいぶ違ってるし……どしたん、お前。
「え? 僕の予想当たってるじゃん──じゃなくて、今は脱出! 先輩、今は早く其処から逃げて!!!」
と、久保が叫ぶ……が。
「いや無理だって。めっちゃガッシリ拘束されてて、何かフィットしてきたまである」
もう一眠りしたいまであるよ。
「やべぇぞ、久保さん。いま先生、無能モードだ」
「うん……僕達が何とかするしか無いね…………」
『クククククク──エンダァアアアアアアッ!!!』
──ん?
あれ、お前……何で???
確か、雪山に埋めた筈なんだけどな。
しかも、エンダー?
なに? 誰か結婚でもすんの???
『──主です! そのままだと、主が、結婚する事になるんです!!! ソイツと!!!!!』
と、半泣きで叫ぶキメラ。
「え、マジ??? コイツ、雌なの?」
『──うんにゃ。雄ですぜ!!!』
「いや先生! 気にするのソコじゃねぇから!!!」
いやいや、大事な事だぞ久遠。
「えーと、ジャバウォック……くん?」
『──! アリス!!!』
ん? アリス???
「いやいや、notアリス。あの、悪いんだけど──オレ好きな人居るから……キミとは付き合えないんだ」
──ごめんな?
キッパリ、ハッキリとお断りしよう。
『エ…………デモ、ぁ、アリス???』
「オレの名前はアリスじゃなくて、如月 境夜。悪いけど、キミとは付き合えないから離してくれる?」
オレを掴む、龍の腕がカタカタと震える。
『アリス、喜ブッテ……世界ツクッタノニ……!』
『──ぎくり!』
『ほぅ? そうやって利用したのか、最低だな貴様』
うーん……?
「そりゃあ喜ぶ人も居るだろうけど、全員がそうじゃない。だから、本当に好きならちゃんと調べないと」
ま、それでも上手く行かない事もあるけどね?
『──ゥウ……ナラ、アリス……ドコ…………?』
白銀の龍が、鳴く。
その図体に見合わず……弱々しく。
一人ぼっちは嫌だと……泣いているように。
「──うーん……ごめんね。そのアリスちゃん? が、何処に居るのかはオレには分からないな」
『ソ、ンナ……』
龍の、牙だらけの口が歪む。
──でも。
「そのアリスちゃんが見つかるまで、ウチに来るか? ウチにもキミと同種の子が居るから──」
……そのアリスちゃんについて、何か知ってるかも。
と、続けようとした言葉が──
──ガシャァアアアアアアアアンッッッ!!!!!
突如、鳴り響いたガラスが割れるような破砕音によって掻き消される。
それと共に……
「──如月さんッッッ!!!!!!!!」
「助けに来たぜぇーーーーーッ!!!」
『──グルガァアアアアアッッッ!!!!!』
綾ちゃんと、田中の声。
二人を背に乗せた、オレのジャバウォックの雄叫び。
『──ッ!?』
……が、木霊する。
そして、
『………………アリス、見ツケタ……!』
小さく、あの龍の声も。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ