修学旅行 〜怪異譚〜 19
──ドクン、ドクン……
と、薄気味の悪い脈動を繰り返し、崩壊する世界のカケラを取り込む球体。
そして──
「──もうオレ、此処で暮らします。世界なんて滅んじまえ……ペッ!」
と、その側で体育座りしている……先輩。
「あのねぇ如月……詐欺られる事くらい、ププッ、よ、良くあるわよ? 気にするだけ、ふッ、無駄よ」
「そうだぜ先生! 止めるオレ達を振り切って購入したのは先生だろ!!! 気にすんなよ!」
ニカッ! と、社長とは違い……純度100%の笑顔でそう言い放つ舎弟くん。
「──かひゅッッッ!」
『あるじ? あるじぃーーーーーーーーッッッ!?』
虫くんの叫びも虚しく……アレは、もうダメだね。
先輩、白目剥いてるし──暫くは使い物にならないよ。せめて、ゆっくりと寝かせてあげて……。
モンスターの指示は、取り敢えず僕が出すよ。
「──で? いったい何がどうなってこうなったの? あと、その痛々しい格好は何??? コスプレ?」
随分と素敵な格好だね、目が潰れるよ。
と、社長に問う。
……あ、違うよ虫くん!? 先輩の格好はマジで素敵だから! だからそんな目で睨まないでッ!??
「はぁッ──んなワケ無いでしょ! 気がついたら着てたのよ!!! 如月も!」
………………えぇ? マジで???
あーでも、『役』って事かな? でなきゃ、着替えさせる必要無いし……それとも、まさか趣味???
それにしても、社長が『ウサギ』って……ふッ。
「──何よ? 言いたい事があるなら言いなさいよ」
「いや、別に? それで、何があったのさ?」
口は災いの元……チャック、チャック。
「……ボランティアの誘いを如月が蹴ったら、キレた女王様に襲われたの。だから返り討ちにしただけよ」
「ごめん。何て?」
ボラ──え? 返り討ち???
「先ぱ──?」
「ふッ──」
『主も「タダ働きなんぞ誰がするか」と言っている』
…………そ、そう。不思議と、今の先輩の顔がドヤ顔に見えてきたよ、僕。
「そんで、何か変な音が聞こえたと思ったらあちこち壊れ出して……ああなったの」
と、社長が指差すのはあの球体だ。
一見すると、鏡のカケラを強引に集めて作った卵にも見えるけど──結局、何かは理解らない。
「まったく、何なのかしらねコレ? 女王様の第二形態??? 今回はホントに理解らない事ばかりで」
──嫌になるわ。
と、疲れた様に溜息を吐く社長。
まぁ、気持ちは理解るよ。
今回はそもそも、何から何まで理解らない事だらけだしね。
相手も、その目的も……見当がつかない。
唯一分かっているのは、先輩を狙ったって事だけ。
「──どうして先輩を狙ったのかすら、分からないんだけどね……」
『…………復讐だ』
「──へ?」
■■■┐
『──何故、奴を狙ったのか……それは、我が復讐の為! 貴様らは、それに巻き込まれたに過ぎぬ』
「なっ!? 誰だ!!?」
僕は声を上げる!
──まさか、敵が自分から出て来るなんてッ……。
それに、先輩への復讐だって?
確かに──先輩を恨んでいる人は多そうだけど、誰がそんな命知らずな真似を!?
『くくくッ──知りたいか? 良かろう、今……我が神々しき姿を見せてやる! さぁ、刮目せよ──!』
と、何かが……球体の上に立ッ──ぁ?
人人人人人人人人人人人人人人人人人
< >
ババー<┌( ┌ ^q^ )┐<ビックリした? >ーン!
< >
人人人人人人人人人人人人人人人人人
「( ˘ω˘ )……すやぁ」
「………………」
「………………」
「………………ぇ、あの……誰っすか?」
『? 誰だ、キサマ?』
『──はぁあああああッッッ!?!!? 其処で寝ているド畜生に雪山に埋められた使い魔ですけどぉ!? え、嘘……まさか誰も憶えてない? 嘘でしょ?? 嘘だよね??? ぇ……まさか、マジ?』
………………………………。
「バアル……ちょっと、アレ捕まえて来て」
『──? 承知した』
召喚したバアルが、瞬時に……えっと使い魔?を捕らえ、降りて来る──けど。
『主よ、捕らえて来たが……』
『──イヤァーーーーーッッッやめて! アタイに乱暴する気でしょ!? エロ同人みたいに、エロ同人みたいに! あの、ホントにやめて貰えません??? ウチ、自分受け地雷なんスわ。マジ、さーせん!』
………………………………。
ビチビチしながら、頭が理解を拒む言葉を叫びまくってる。
『あの、もう離しても良いか? 主……』
「ごめんバアル。まだダメ!」
未知への遭遇からか、バアルの鳥肌がヤバい。あんなに怖がってるバアルは初めて見たよ。
「──えっと、その……使い魔、ちゃん? それで、先輩への復讐ってどういう事か教えてもらえる?」
まぁ、十中八九……先輩が埋めた事だろうけど。
『ふ、良かろう……ボーイッシュな女の子も悪くは無い。そう、アレは冷たい雪の中のこと──』
◆◆◆もわぁんもわぁんもわぁん……◆◆◆
──そう、それはあの日。
誘惑に釣られ、冷たい雪の中に埋められた後……
『うぅ、寒い。こうなったら、この身に宿る我が妄想パゥワーを解放し、この地を常夏のリゾート地へと変えてやるぅ──おのれ、おのれぇ如月 境夜ぁ!』
我は、奴への憎しみを胸に……頭の中では、とてもじゃないがお口に出せない様な事を妄想していた。
いったい、どれ程の時間……そうしていたのかも、分からなくなって来た頃──
『…………ァ……リス…………』
──声が、したのだ。
小さな、小さな……弱い声。
その声は、弱々しくも──何かを探している様で。
『え、誰──どしたん、話し訊こか?』
余りにも暇だったから、そう声を掛けた。
『──アリ……ス…………?』
『え、人違いです! なに、キミ迷子???』
『分カラ、ナイ……アリ、ス…………ドコ?』
最初は、困惑した。
だが、話しを聞く内に……この子は、自分だけのアリスを探しているのだと理解した。
自分だけの愛娘──アリスを。
──もうピーンッと来ましたわ! あ、コイツ……自分の番を探してんだなって!!!
こちとら伊達に紳士淑女の皆様に、夢を綴った本を描いて出してねぇーんだわ!
シンパシー感じた!!!
それと同時に、コレは使えるな! って。
何にって──勿論、復讐にだよ!
『我を此処から出してくれ……さすれば貴様の番、基、アリス探しを手伝ってやろう!』
◆◆◆
『──いやぁ、マジ秒でしたわ! もうこの子、一瞬で如月 境夜を番認定しましたよヤッタネ!!!』
『 は ? ? ?』
ちょ、待って!? 急展開過ぎないソレ!!?
要は、え? 一目惚れされたって事???
──先輩が?????
あと虫くん、そんな声出せたんだね……キミ。
『この子の力でもう色々と嫌がらせも出来たし、後は二人でエンダァアアアッしてもろて、我は壁になる!』
『 は ? ? ? ? ?』
嫌がらせって……まさか、あの偽者達の事? 確かに、先輩は社長にボコられたけど……。
『巻き込まれた人が居たのには驚いたけど、まま、良いアクセントにはなったでしょ?』
「 あ" ? ? ?」
「アレがアクセントだぁ? マジで言ってんのか?」
アレがアクセントとか……ちょっと理解が出来ないかな?
『この世界にまで乱入して来たり……物語を滅茶苦茶にしたり! もう色々とハプニング続きでマジでおもろかったー! ネタをありがとう!!!』
……コッチは面白くもクソも無かったけどね???
『あ! 何なら、結婚式も見て行きま──』
「──総員、戦闘準備! この頭のイカれた使い魔を一片のカケラも残さず滅ぼすわよ!!!」
「「『『──応ッッッッ!!!!!!!!』』」」
『シャーーーーー( ノ`ω´)ノーーーーーッ!』
『──え? ちょ、何で皆さん怒って……ぎゃぁぁああああああああああああああああああッッッ!!!??』
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ