修学旅行 〜怪異譚〜 18
──誰も居ない……。
周囲の景色はまるでガラスの様に砕け散り、そのカケラはキラキラと何処かへと流れてゆく。
後に残された真っ白な世界の中──捜索するが、
──僕達は、何も見つけられずにいた。
「くそ、先生達はいったい何処に居るんだよ!?」
そう、舎弟くんは声を漏らす。
……モンスターに乗り、捜索してはいるが──周囲は既に純白の世界と化していた……。
今はまだ……辛うじて方向感覚を失わずに居られるけどそれもいつまで続くかは分からない。
そもそも、先輩達はもう──この崩壊する世界から脱出しているのかもしれない。
『──どうする? 一度、戻るか?』
そんな僕の不安を読み取ったのか、虫くんはそう問うてくる。
………………どうする……か。
──キラキラ、と砕けた景色のカケラが何処かへと流れてゆく。
そう言えば、あの兵士も……あの奇妙な音が鳴った瞬間、女王とほぼ同時に割れてしまったけれど……
──そのカケラは、何処へ消えたのだろうか?
いま、流れているこのカケラ同様に……何処かへ流れて行ったのだろうか?
──それは何処に……?
そもそも、本当に終わったのか?
『おい? どうした???』
「久保さん……?」
──先輩達が何かした。
恐らく、コレは間違い無いだろう。
そして、ソレにより……赤の女王や、その他の兵士が割れ、世界も崩壊が始まった……。
……本当に?
仮に、先輩達が元凶を倒したのだとすると──こんなに『ゆっくり』と崩壊していくのだろうか?
世界を維持していたモノが消えたのなら、もっとこう……一気に壊れるのでは無いのか?
それに、カケラとは言えこんなに残骸が残っているのにも違和感がある。
それに、この純白の世界は何?
何故、このカケラ共々……消滅しない?
──ッ、まさか!
確かめる様に、流れゆくカケラの一つを手に取る。
「え、ちょっ!? 久保さん!!?」
「──ッ!?」
弱く、だけど……確かに、何かに引っ張られる。
「成程ね……舎弟くん、虫くん! 流れるカケラを追うよ!!! 恐らく、其処に先輩達も居る!」
……筈だ!
多分、7割がたそうだと思う!!!
「──ぇ? それってどういう……!?」
『7割か──了解した』
そうして、僕達は流れゆくカケラの……その終着点へと向かった!
──先輩達が何かして、こうなったのなら……この変化の先に、何かある可能性は高い!
そして、何かしたであろう先輩達も……
……恐らく、其処に居る筈だ!
■■■
「──アンタ、これ……どうすんのよ?」
「いやぁ……どうしましょうかね???」
騒音が無くなったので、シャドウゴーレムの『穴』から抜け出したオレ達。
その側には──めっちゃデカい球体?が、ドクンドクンと脈打っていた。
「いやぁ、コレ……第二ラウンドって事っすかね?」
「どちらかと言うと、第二形態じゃない?」
はぁ……。
見た限り、この球体──何か、崩壊する世界のカケラを取り込んでるんですけど?
しかも、まだまだカケラは流れてくるし……。
え、コレもしかして──もっと大きくなるの?
「アンタが物語をメチャクチャにするからよ? 相手さんめっちゃブチ切れてるわね、こりゃあ」
「えぇ? カルシウム不足し過ぎですよソレ……探索者がシナリオ内で暴れるのなんて当たり前でしょ」
物語通りにならないからキレるなんて、何て器の小せぇ奴だ!
「だから相手さんも暴れようとしてんでしょ?」
「うーん……それは──何も言えねぇや!」
一先ず、影組を再度出して囲うか!
「社長、ティアマトちゃんは?」
「はぁ……いつでも行けるわよ」
『( ^ω^ )b』
ごめんね〜、ティアマトちゃん! 帰ったら、オジさんが美味しい物でも奢るからね〜グヘヘヘヘ。
「──よしよし。シャドウゴーレムはチャージ、蛇ちゃんはスキルでその援護。えっと他は……」
『──じ!』
ん???
「社長? 何か、言いました???」
「は? 何も言って無いけど?」
──はて? 気の所為か???
『ぁ──じ!』
あじ? え、なに??? 味……?
「──ぱ、ぃ!」
「ん──せい!」
──????????
「社長、さっきから何k──へぶッッッ!?!!?」
──聴こえませんか?
と、続けようとした言葉が……何か固いモノが顔面にブチ当たって来た事により中断される。
いったぁ〜〜〜ッ! もう、何!??
オレにぶつかったソレは、コロリと転がり落ちると……ウゴウゴとコチラへとやって来る。
「あら、カナブンじゃない」
そう、社長が素手でいったソレに目を向けると……
──ブブブブブッッッ!
「──ぉぎゃあ!??!?」
茶翅を出し、何かをアピールするように猛烈に羽ばたいている。
いや、そもそも……何でこんな所にカナブンが?
というか……何か、このカナブン見覚えが……?
『あるじーーーーーーッッッ!!!!!!!!』
「──先輩!」
「──先生!!!」
──へ? おぼッu#@!?
「ビックリしたぁ〜って、あれ? あなた達……何で此処に居るの──???」
・
・
・
「──つまり、私達を追って来たってこと?」
「うん。先輩『を』追って来たんだよ」
「……アンタ、本当に可愛げが無いわね?」
──まぁ、
『主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主主ッ!!!!!』
「──待て! ステイ!!! キメラ、ステイ!」
…………アッチよりマシね。
「先生、女社長……ホント、無事でよかッ──ぅう」
久遠くん──良い子なのは貴方だけね!
性根の腐った奴ばかりだから……貴方の善性を見ちゃうと、目から塩水が出て来るわ。
「──ちょっと待って下さい!」
「あ? 何よ、絶対悪???」
アンタは大人しく虫ちゃんに揉みくちゃにされてなさいよ、私の感動を邪魔するんじゃないわよ。
「いや、おかしいでしょ!? 百歩譲って、久保と久遠は理解ります! でも、何で此処にキメラが!?」
『あ る じ ぃ い い い い い ッ ♡』
「ちょ、ひっ付くな! やめなさい、メッ!」
と、何とか虫ちゃんを引き剥がす如月。
「ぜぇ、はぁ──コイツらが、まだ偽物である可能性だってあります! 安易に信じるなんて──ッ」
『──この間、主が通販で買ったプロテインの話しでもします? 1錠でバッキバキでしたっけ???』
「あー……あの詐欺商品か。オレ達、必死で止めたのに先生が1ダースも買って泣いてた──」
「まさかそれって、今……法務部と手を組んで、跡形も無く叩き潰してやるって言ってた案件???」
へw ちょ、それマジwww?
「きさッ──」
「・・・・・・ゴーレム、オレにレーザー」
「──ちょっ!?」
早まるんじゃ無いわよ、このバカ!!!??
ほら、アンタのゴーレムちゃんも困惑しちゃってるじゃない!?
「ほ、ほら! 間違いなんて誰にでもあるんだから気にしちゃッ──え、泣いてんの……アンタ!??」
「もうオレ此処で暮らします。探さないで下さい」
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