修学旅行 〜怪異譚〜 14
『やめて! 主にバラさないで!!!』
「うん無理! コレは流石に先輩案件だよ!?」
イヤァーーーーーッッッ!!!!! と、悲鳴を上げ膝から崩れ落ちる虫くん。
『うぅ……主に、主に嫌われるぅ──バアルみたいに! バアルみたいに!!!』
『──お? 喧嘩売ってんのかクソ虫???』
しかも2回言ったよ、虫くん。
『今まで何でも完璧にこなして信頼もぎ取って来たのに! まさか毒バレだなんて!!!』
…………完璧に? 信頼をもぎ取っ──うん?
僕、虫くんって結構おっちょこちょいなキャラだと思ってたんだけど、違うのかな?
夏休みの時とか、結構アッサリ操れたような……?
『──あ"?』
「いや、何でも無いよ!? でもホラ、やっぱりこういう劇物関連はちゃんと先輩に報告をね!??」
あっぶな! く、意思疎通か……。
『そう言えば、貴様……私を利用して、主を攻撃させたんだったな???』
「え、ごめん。何の事か全く分からないなぁ」
………………………………。
『おい、割引悪魔……』
『──記憶に無い。憶えておらず申し訳ない。急ぎ事実確認をした後、会見にて報告致します』
ウンウン、憶えて無いなら仕方無いって多くの偉い人だって言ってるよ!
『………………』
「………………」
『………………』
「あの──ちょっと良いっすか?」
『「『ッ──何かな!!?!??』」』
声をハモらせながら聞き返す僕らに、舎弟くんが一言……告げる。
「ぇ、あぁ……この人の話しを聞く限り──赤き女王ってのがこの世界を支配してるっぽいんで、先ずは其処に行きません?」
──もしかすると、其処に先生や社長だって居るかもしれねぇし?
と……言って──ぁ、はい。
「そ、そうだね? 先ずは、行動しなくちゃ!」
『あぁ! 一刻も早く、主を救出しなければな!』
『こうしては居られん! サッサと行くぞ!!!』
『「『──ほらそこ! サッサと僕/私達を赤き女王の元へと案内しろッッッ!!!!!』」』
■■■
『──この世界は今、邪悪なる赤き女王によって支配され……多くの者が苦しみの声を上げています』
「へー?」
「ちょっと如月……アンタもうちょい真面目に」
え〜〜〜? いや、だって……。
『どうか、この世界の為──貴方方の力を我々にお貸し下さい。伝説の救世主達よ』
↑、になるじゃん?
あのさ? 急にそういう設定生やすとか辞めた方が良いよ? いや、展開的には好きな人多いけど。
オレ? いやオレもまぁ好きだけどさ???
「え──嫌です」
「如月ぃーーーーーーーッッッ!?!!?」
『好き』なのと、実際に『する』のは別なのよ。
『………………え?』
ボランティアで世界救えとか、は???
人間の強欲舐めてんのか? 『え?』じゃねぇわ!
「──オレ達は元の世界に帰りたいだけなので、そういうのはご自分達でどうぞ?」
「ちょ、確かにそうだけど!? え、こういう展開ってアリなの!?? どうなのッ!!?!?」
一息に言い切るオレに、そう慌てる社長……そして
『………………』
無言の、白の女王。
──さて、どう出る?
これはこの物語に対する、明らかな破壊行為。
オレに『アリス』という『役』を与えた者にとっては、コレは避けるべき展開だろう?
もしかすると、この物語通りに進んだ方が安全且つ楽だったかもしれんが……考えてもみてほしい。
そも、オレを此方側へ引き摺り込んだのは誰だ?
言わずもがな、この世界という名の結界を作り上げオレ達に襲撃かましてくれやがった誰か。だろう?
オレの入浴タイムを邪魔して、社長達を襲撃してくれやがった誰か。
その所為で──
オレは社長に飛び蹴り喰らって……
こんな茶番に強制的に付き合わされている訳だ。
・ ・ ・ ふ ざ け ん な よ ♡
なんでオレが、そんなカスみてぇな奴の思い通りに動く人形ちゃんになってやらなきゃならないんだ?
人形遊びなら一人でやれ。
此処いらで、いっちょ派手に物語を崩壊させても罰は当たらねぇだろ?
寧ろ、今まで付き合ってやった事に感謝しろ。
『……そ、そのような事は…………許されません』
と、口を開く傀儡。
「──え? じゃあそれってお願いじゃなくて、命令じゃないですかぁヤダァッ!!!」
力を『貸して』じゃなくて、『貸せ』じゃん。
意地でもお断りします♡
──誰が貸すか、ペェッ!
『ッ、この世界がどうなっても良いと言うのですか?』
「──一向に構わん、オレが許可する!」
自分達のお尻くらい、自分達でお拭き? 何でもやってもらおうだなんて、ダメ人間になるわよ!!!
『赤き女王の支配からこの世界が解放された暁には、この世界の半分を貴方方に──』
「──管理が面倒なので要らねぇっすわ」
だから某、魔王みたいな事を言うのはお止し? 世界征服企むのは、ウチの子達だけで充分です!!!
『ッぅ〜〜〜〜〜』
「あれ、もう終わり??? いいの、このままだと物語崩壊しちゃうよ? ン?? いいんスか???」
「アンタ、煽りスキル高くない?」
そりゃあ、機嫌悪いっすもん。
お腹も空いたし……茶番には巻き込まれるし……。
もういい加減、キレても良くない? 良いよね??
それに──
「先の見えた物語に興味無いんですよね、オレ」
「なるほど……要は、飽きたって事ね?」
ハハッ、正解!!!
結局は、従う事に飽きたのだ。
オレ、飽き性なもので……てへッ!
あと、タダ働きさせられそうになったから我慢メーターが一気に振り切れたのも追加しておく。
『──な、ンで? アリ、す???』
「あ、言っとくけどオレは『アリス』じゃないんで! オレの名前は如月 境夜だ。覚えとけカス」
「それなら、私だって百鬼 千尋よ!」
覚えときなさい! と、胸を張る社長。
「ちな──身体は大人、頭脳は子どもだ覚えとけ!」
「何でいきなりディスんのよ!? だったらアンタはお金大好きな金の亡者な癖に!!!」
「──そうだぞ! 覚えとけ!!!」
オレを操作したいなら、先ず、現ナマを用意しなさい話しはそれからだお客様! 分かったか!?
「無敵か!? あーもう、何かあの女王様明らかに雰囲気がヤバい方に変わったから、私の背後に──」
「──ほら社長がんばッ! 応援なら任せろ!!!」
何やってんの? 早くモンスター出して!!!
『チガう、ちガうちがウッッッぁァああアぁアああァアぁアアあああアアぁアあアアアああ──ッッッ!』
「じゃ、頑張ってティアマトちゃん! 肉盾!!!」
「アンタ、後で一発殴るわ」
『( ノ`ω´)ノ』
◆◆◆
『フッ──物語が崩壊したか。だが、それも全て我が計算の内だ……如月 境夜!』
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ