修学旅行 〜怪異譚〜 10
──次回は私用の為、お休みします。
次の投稿は、11月29日です。
『──一先ず、お前の言う通り主が攫われたという場所まで来てみたが……どうだ、何か理解るか?』
『………………』
虫くんの問いに、黒いトカゲ……ジャバウォック? は、舌をチロチロさせながら──へ?
チャポンッ……と、お湯の中へと飛び込む。
トカゲって──お湯とか大丈夫なのかな……?
それも、温泉の──いや、トカゲに見えるだけで実際はモンスターだし問題ない……か?
と、そんな事を考えていると──チャポ。
ジャバウォックが、お湯から顔を出す。
『──どうだった!?』
『………………』
ジッ、と虫くんの顔を見て……舌をチロチロさせるジャバウォック。
『──そうか! それは直ぐにでも可能なのか!?』
『………………』
『ならば直ぐに頼む! おい貴様ら、グズグズせずにサッサと二人ずつに分かれろ!!!』
──え!? あの……!!?
「待って下さいキメラさん!?」
「どういう事なのか説明してくれよ!!?」
「分かれ方はグッパで良いか? よし、やるぞ!」
『おいクソ虫! それだと一人だけ余るだろう、どうするのだ!? 物理的に減らせば良いのか!??』
──というか、何であの舌チロだけでトカゲくんの気持ちが理解るんだろ、意思疎通ってスゲェ。
『ああもう一気に喋るな! あと割引悪魔、貴様は持ち主のスマホに戻れば良いだけだろうが!?』
『ハッ!? それもそうか……!』
『それと説明だが、今から主とついでに社長を助けに行く! 以上、説明終わり!!!』
な……ッ!? 先輩を助けに!??
「──なぁ、はやくグッパしようぜ〜?」
『やめて。そんな適当に決めるな! あーもう理解った、チーム分けも私がする!!!』
と、虫くんは声を荒げると……
『──久保だったか? お前と舎弟……コッチへ来い、主を助けに行くぞ』
……ッ!
僕と、舎弟くん……?
「えっと、残りの佐藤ちゃんと田中はどうするの?」
『──貴様らは居残りだ。もし、敵からの妨害があった場合に備えて此処でジャバウォックを守れ』
……ジャバウォックを…………守る?
それに、妨害???
「──意義あり!!!」
『聞かん。諦めろ。お前は其処で大人しくジャバウォックを守れ。いいな?』
「嫌です!!!」
あ、断るんだ。凄いな、佐藤ちゃん……。
「ちゃんとした理由を説明して下さい! あんな説明で納得できるワケが……」
『ふぅ──主を助けに行く為に、これよりジャバウォックに其処へ至る為の出入り口を作ってもらう』
──出入り口を、作る?
「ッ、助けに行くなら全員で行けば──!?」
『不可能だ──ジャバウォックには此処に残り、その出入り口を維持してもらう必要がある』
なるほど……だからか。
敵の拠点へ続く入口であり、此方に戻る為の出口。
……確かに、敵からすれば邪魔すぎる。それに僕達からしても命綱のようなモノだ。
『敵が何をしてくるのかも理解らん、だからこそお前には此処でジャバウォックを守ってほしい』
頼む……そう、虫くんは告げる。
「〜〜〜ッ、そんな言い方……狡いです」
『そうか』
佐藤ちゃんは、一度……悔しそうに顔を歪めると、
「──久保さん、龍鬽くん……如月さんと、あと社長を絶対に連れ戻してくれますか…………?」
そう、問うてくる──。
だから、
「──まっかせてよ! これでも先輩の後輩だからね、狡賢さには自信があるんだ!!!」
「お、ぉう? まぁ、でも絶対に先生と女社長を助けてくるから──そっちも任せたぜ! 二人とも!」
僕達だって、そう答えるさ!
そして、胸を張って答えたからには──絶対に失敗なんてしないし、出来ない!
──文字通り、全力を尽くす!
「ッ、そうですか…………理解りました! 如月さんと、あと社長を宜しくお願いします!!!」
「お? 話し終わったか!? じゃ、二人とも頑張ってな! いってら〜〜〜ッ!!!」
はぁ…………田中。お前、もうちょっと空気よめ。
頭を下げる佐藤ちゃんと、元気良くバイバイしてくる田中に背を押され……僕達は虫くんの側に歩み寄る。
『──では、ジャバウォック……頼む』
『………………!』
虫くんがそう言った瞬間──ッ!
なに……あれ?
お湯の底──床に黒い渦が現れ、徐々に大きく広がってゆく。
『アレに飛び込む。行くぞ!』
「──ッ!」
「おし! 待ってろよ、ぜってぇ助けてやるからな、先生、女社長!!!」
そうして僕達は、黒い渦へと飛び込んだ……!
・
・
・
「──行っちゃいましたね……」
「そうだなぁ〜。でもさ、行きたいなら今からでも追えば良いと思うけど……良いのか?」
追わなくて?
そう、田中さんは言う。
「そりゃあ追いたいですよ。でも──」
でも……。
「──頼まれちゃいましたからね……だから、ちゃんと皆んなが帰る場所を守らなくちゃ」
「成程な! 約束したから、それを守る! 悪ぃ、余計な事を言った」
そう、謝る田中さんに……私も笑う。
「はは、構いませんよ。それに、私のモンスターって攻撃力よりも守備力の方が高いので──」
実は──守る方が、理にあっているのだ。
「──キメラさん、それも見越してたんだろうなぁ」
脱衣場の方から、ドタドタと音がする。
「へぇ、じゃあ守りは任せても良いか?」
「えぇ。その代わり、攻撃をお願いしても?」
物音が、段々と大きくなる。
鏡、結構な数割ったと思ったんだけどな……。
──どうやらまだ、残っていたらしい。
「ははッ! 任せとけ!!!」
田中さんは、大きな声で笑う。
そして──
「──出て来い、ゴーレム!!!」
モンスターを召喚し、脱衣場からワラワラと中へ入ろうとする偽の如月さんやフロントマン達を一掃した。
……これは、私も負けてはいられない!
「ケルベロス! 炎壁!!! さらに特殊スキル、『地獄の番犬』を発動!」
ケルベロスの『地獄の番犬』は、早い話、守備力を大幅に増加させ、自動回復効果を付与するモノ。
その代わりに……その間、攻撃出来なくなる技。
けれど、相手もケルベロス以外を攻撃出来なくなる。
更に、炎壁はフィールドスキル……相手に微量とはいえ持続ダメージを与え続ける……謂わばコレは──
「──うっわ、クソ害悪コンボじゃん!」
「その通りですけど言わないで下さい!」
正直、相手に効くかどうかは五分五分だったけど。
……どうやら、私は賭けに勝てたらしい。
廊下から押し寄せる偽の如月さんや、フロントマンもまるで吸い寄せられる様にケルベロスに向かって来る!
──敵は幽霊や妖怪じゃない、モンスターなんだ。
スキルだって効いた!
それなら私達は戦える──例え、
──戦い方が害悪だったとしてもッッッ!!!!!
うぅ、でも……守る為なんですから、如月さんも許してくれます……よね???
■■■〜〜〜一方〜〜〜■■■
「──社長! 情報の為、早くパフパフを!」
『さぁ、カモォオオオオオオオオオオオンッッッ!』
「──い"や"ぁ"あああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ
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一部、訂正点を失礼します。
ケルベロスのスキルは『地獄の門番』では無く、『地獄の番犬』でした。申し訳ありませんm(_ _)m
11月25日現在では、訂正済みです。
ご迷惑をお掛けし、大変申し訳ありませんでした。
──引き続き、当小説をお楽しみいただければ幸いです。長々とすみません。