修学旅行 〜怪異譚〜 9
Q:此処は何処ですか?
A:ここは森の中だよ。見れば理解るだろう?
………………そうですね──(#^ ^)
Q:では、ぶっちゃけこの世界ってなんすか?
A:この世界は──この世界さ!
………………………………(##^ ^)
Q:この世界から出る方法をご存知ですか?
A:この世界から出る? さぁ??? 知らな──
「──あ、もういいです。テメェは●ねッッッ!」
背中の大剣を抜き、帽子男目掛けて振り下──
「ッ──如月!!! ストップ如月! その人、アリスの世界では多分メイン張ってる人だから!?」
──ろそうとした瞬間、そう叫ぶ社長に背後から羽交締めにされる!!! くそッ!
「だったらオレは主人公じゃろがいッ! 本体の帽子は残すから止めるな社長ッッッ!!!!!」
「違うから!? その人、本体帽子じゃないから、ちゃんと人の部分が本体だから多分! やめなさいって!」
「──いいや止めないね! この野郎、人を完全におちょくりやがって地獄見せてやる!!!」
「アンタだってよく人をおちょくるでしょうが!」
………………は???
「──オレはちゃんと情報を持った上で、それを小出しにしてニマニマするだけだ! 一緒にするな!」
「余計にタチ悪いわッッッ!!!!!」
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「──ふぅ、ふぅッ!」
「ぜぇ、はぁ……ッ!」
ふ、中々やるじゃねぇか……社長…………!
『──まぁまぁ、お二人さん……落ち着きにゃって』
あ? えっと……チェシャ、だっけ???
が、オレの眼前へと姿を現し──ぷにゅぷにゅの肉球付き前足でテシテシと頭を叩いてくる。
『ぼうし屋が使い物にならないのは、いつもの事にゃよ。ここはにゃーに任せにゃ、アリス』
『──はぁぁッ!? 猫風情が何をッア°ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!』
おい──役立たずは黙ってな?
「え……あれ!? 如月いつの間にッ!!?」
ふん。いつまでも大人しくしているとは思わん事だ、社長。隙さえあれば、抜け出すなど朝メシ前よ!
ん? 痛いか……オレのコブラツイストは???
なぁ──ぼうし屋さんよぉ〜〜〜?
「そんでア●ルーよ、何か良い方法があるのか?」
『ア●ルー……?』
お、なんだ? メ●ルーの方が良かったか???
『? よく理解らにゃいけど、この近くに物知りの老人が居るから其処に案内するにゃ。さ、コッチにゃ』
と、ふよふよ浮かびながら……ア●ルーは森の中を進んでゆく。
──猫しか勝たん! ハッキリ理解んだね!!!
猫>>>帽子と、完全にオレの中での位置付けが決まった瞬間である。
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・
『ほわぁ〜〜〜誰じゃお主らは〜〜〜〜〜?』
………………物知り老人……コイツが?
いや、それよか──老『人』???
「なぁ、ア●ルー? まさか、このムッチムッチの幼虫がその──物知りの老人なのか???」
オレの目線の先には……それはもう、何とも立派な芋虫が切り株の上に鎮座していた。
『そうにゃよ? 爺さん、久しぶりにゃ!』
『んん〜〜? 誰じゃお主はぁ〜〜〜ワシに孫なぞ居らん! 詐欺にはあわんぞぉッ!??』
プハァ〜っと、タバコをふかす芋虫。
──どうしよ。前言撤回したくなって来た。
いや、そもそもコイツ老『人』じゃねぇじゃん! 老『虫』だろ!? 誰か、通訳呼んでくれ!!!
■■■
一先ず、佐藤ちゃんは大人しくなったので……そのまま、田中と久遠くんにロッカー内を探ってもらう。
「──あったぜ! 先生のスマホ!!!」
「でもよ、ロックが掛かってるけどどうすんだ?」
『ああ、ロックは気にしなくて良い。主の指の動きでパスワードは把握済みだ──貸せ』
そう言い、虫くんは田中と久遠くんから先輩のスマホを預かり……操作する。
『──? ほぅ、なるほど……』
ん? あれ??? いま、一瞬──虫くんの表情が固まったような……?
「…………? どうしたの、虫くん???」
と、問うと……虫くんは僅かに笑みを浮かべて、
『──いや……何でも無い。あと、主のジャバウォックだが……召喚されてはいないようだ』
そう、告げる。
成程……という事は、僕の推理は完全にお門違いだったというワケか。
ドヤ顔しといて、恥ずかしいな……。
「それはつまり、如月さん達を攫ったモンスターとプレイヤーが別に居るって事ですか?」
と、佐藤ちゃん。
それは……まぁ、そうなるだろうね。
先輩のモンスターでも、僕達のモンスターでも無い……それが確定したようなモノだし。
『それはまだ不明だ。私の分体達をホテル内に放ったが……お前達以外、人間の姿はない』
眉間に皺を寄せ、虫くんは言う。
「えっと……つまり、どういう事なんだ久保?」
「先輩達を攫った連中がホテル内の何処にも見当たらないって事だよ、田中」
呆れつつ、状況整理も兼ねて説明する。
「──なるほど! じゃあ、攫った如月達と一緒に居るんだな!? ハッ……アイツ大丈夫なのか!!?」
理解→気付く→焦る、を順に披露する田中。
はぁ…………器用だね、お前……。
『大丈夫と言い切れはしないが、多少ならば──』
「──どうすんだよ!? 社長は兎も角、如月は全裸で攫われたんだぞッッッ!??!?」
『…………は? え、全裸って……どゆこと???』
と、バアルの方を見る虫くん。
『元主は入浴中に攫われたのだ。社長と共にな』
『…………は、ぇ………………ま?』
「「「「『──ま』」」」」
『…………社長と?』
『あぁ。社長と攫われた』
『………………………………全裸で???』
『あぁ、全裸で』
まさか──気付いていなかったのか? と、バアルは煽るように告げる。が、
『ジャバウォーーーーーック! 出て来い!!! 今すぐ、此処に、姿を現せッッッッッ!!!!!』
あー……あれは、全く聴いてないね。
──というか、僕の推理は多分お門違いだろうから、そのモンスターを出しても意味は無いと思うよ?
聴いてないだろうけど……。
あと、先輩のスマホ──メチャクチャ乱暴に操作してるけど、大丈夫かな……?
『──早くしろ!!! 主の一大事だ!!!!!』
『………………?』
『寝惚けている場合か!? お前、スキルで相手を攫ったりとか出来るか!!? どうなんだ!!?!?』
そんな藁にも縋るような、虫くんの問いに……召喚されたジャバウォックは──コクリ。
え──うそ?????
先輩のスマホから這い出るように召喚された、小さな黒いトカゲのような生き物が頷く。
あれ? 僕の推理……もしかして──
『出来るんだな!?』
『………………(コクリ)』
チロチロと舌を出していたトカゲが、不意に顔を上げ……周囲を見回す。
『それならッ──あ? なに……この空間そのものから、同胞の力を強く感じる……だと?』
それはどういう事だ──と、虫くんは問いを続ける。
──割と、イイ線いってたんじゃ……???
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