修学旅行 〜怪異譚〜 8
「──じゃあ田中と久遠くん……ロッカーの確認をお願いするね。ホラ、あっちに行くよ佐藤ちゃん」
「嫌ですぅーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
くッ! まだ抵抗するか!!!
まるで蝉の様に脱衣場の壁に張り付き、全力でイヤイヤしている佐藤ちゃんをバアルと共に引っ張る!
「もう! 諦めなって!!!」
『そうだぞ! 元主の居ぬ間に、その下着の撮影を企てるなど……キメラに知られたら消されるぞ!?』
「──い"や"ぁ"ーーーーーーーーーッッッ! せめてッ、せめて一枚だけでもお願いしますッ!!!」
ッ!? 何て怪力だ!!?
バアルと二人がかりなのに全ッッッ然、壁を離さないんだけどこの子!!!??
佐藤ちゃん……君、ホントに人間なの???
──え? 何があったって???
あぁ、えっとね……
・ロッカーの鍵を見つける。
↓
・件のロッカーを見つけ、高確率で先輩のだろうから僕と佐藤ちゃんはプライバシーの為に後ろを向く。
↓
・佐藤ちゃんが後ろ手でスマホを操作しているのを発見。カメラモードで撮影を企てていた。
……って事でね? 今、容疑者を廊下に連行しようとしているんだけど──この子、テコでも動かない!
「あーもう! 時間無いんだって、バアル!!!」
『承知した!!! 私が左腕を、主が右腕を頼む!』
『──ふむ。では、胴は私が担当しよう』
よし! じゃあそれ──で?
『主の下着を無断撮影しようなどと……貴様には失望したぞ。この事は、後で主にも報告させてもらう!』
ブブブブブッ──と、無数の羽音と共に声がする。
それも、物凄く怒ったような……声が。
『──なっ!? クソ虫、なぜ貴様が此処に!??』
「──オレが呼んだっす」
『──主の舎弟に呼ばれた』
そう、久遠くんと虫くんが……答える。
「──っ!? 龍鬽くん、何で……!」
まるで『この裏切り者ぉ!?』とでも言うように、驚愕した顔で久遠くんを見る、佐藤ちゃん。
そんな佐藤ちゃんに、久遠くんは──
「──いや、今は先生のピンチだし──駄々捏ねてる場合じゃねぇし……出来る事はしないとだろ?」
……違うのか? ん???
と、ね?
まるで感情を削ぎ落としたかの様な無表情で、佐藤ちゃんに淡々と告げる。
アレは、間違い無く──怒ってる……ね。
そんな久遠くんの静かなるブチギレをくらって、
「ぁ──はい。その、すみませんでした……」
と、佐藤ちゃんは壁から静かに手を離したのだった。
■■■
『──私とのゲームに勝てば、君の質問に答えよう』
と、磨かれたテーブルの上にゴトリッ……オシャレな帽子を被った男が、立派な銃を置く。
ん? どうしてそうなったって???
あぁ、それはね──
・如月との話し中、何故か向こうに行かなきゃいけない。遅刻しちゃう! って、思っちゃって……。
↓
・如月の静止を無視して、走り出した。
↓
・そのまま、森の中に入っちゃって。結果、この見ず知らずの男のお茶会?なるものに参加する事に。
──そして、今に至る……のよね。いや、ホントに何で私ったら走り出しちゃったのかしら!?
帽子男の対面の席に座る如月が、冷たい目で私を見てくる……うぅ、ごめんなさい。
『この銃の中に、弾が一発だけ入っている──』
「──あぁ、ロシアンルーレットですね良いですよやりましょうか!」
ちょ!? 如月ッ!!?!?
帽子男の声に被せるように言うと、如月はテーブル上に置かれた銃を手に取り……あの、えっと…………
弾を詰める……カラカラの部分? を出して……そして、ある程度回転させた後……カチャン。
再び、銃のカラカラを戻し──そのまま、銃の銃口を自分の頭に向けると……引き金を──ッ!?
「──如月やめッッッ!!?!?!!?」
──カチカチカチカチカチ………………!
……引いた…………それも、5回も……。
『──ッ!?』
「さ、次は貴方の番ですよ。どうぞ」
そして、輝かんばかりの笑顔で銃をテーブルに置き、男の方へと滑らせ渡す。
「その銃の装填数は6。当たりが1でハズレが5……オレは5回撃って全てハズレ」
と、いう事は……?
そう──笑顔のまま、如月は問う。
「さぁ、それで自分の頭をぶち抜くか──それとも負けを認めて質問に答えるか……どちらにします?」
・
・
・
………………………………あの。
コイツ…………マフィアだったりする……???
いや、頼もしいんだけど──その、言っちゃ悪いんだけど……恐怖の方が勝るのよ…………。
アンタ、何人か人──ヤッてない、わよね???
『──にゃ〜はっはっはぁ! まったく、ボロ負けとはいい気味だにゃあ、ぼうし屋ぁ!!?』
『な!? この癪に障る声は──!』
へ? なに??? 何で、私の方を睨むの!?
途端──ボフンッ!
「──ぶぇ!?!!?」
やけにコミカルな音と煙が私の眼前に巻き起こる!
『初めまして、白ウサギ。初めまして、アリス。にゃーの名はチェシャ……よろしくにゃ☆』
眼前に現れた……か、カラフルな猫──チェシャ。
は、そう私と如月に告げ……頭を下げる。
──空中に、ぷかぷかと浮かびながら。
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