修学旅行 〜怪異譚〜 7
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「──ねぇ如月、アンタ……私に言う事ないの?」
「え? あぁ、社長のスマホって防水でしたっけ?」
もし防水じゃなかったら、オレは足手まといを連れて来た事になる。それは流石に辛いな……。
「…………辞世の句がそれで良いのね?」
「社長だって、無罪のオレに跳び膝蹴りを叩き込んで来たじゃないですか。これでトントンですよ」
「おかしいわね〜? 私、その後アンタに原型留めないレベルでボコられた気がするんだけど???」
あ──ちょ、待って?
その、申し訳無いけど……そんな顔でコッチ見ないでくれない?
肩から上、肩から上……よし!
「ふぅッ──気の、せいでは?」
「無茶あるわよ、その言い訳……あと助けに来た奴を普通道連れにする? 人の心とかお待ちでない?」
──おい待て。それは流石に心外だ!
「失礼ですね。人の心くらい持ってますよ! ただ、社長を労わる心を持っていないだけです!!!」
勘違いしないでよね! ぷんぷん──( *`ω´)
「んな澄んだ綺麗な目で、そんなに力強く言う事じゃないからねソレ!?」
「ふひひ、サーセンwww」
──自分、嘘とかつけねぇもんで。
「………………^ ^」
「………………はぁ〜、で? 此処、どこなのよ?」
そう、極力……社長を避けて、周囲を見回し確認するが──
「──まぁ……オレ達を引き摺り込んだ奴の結界内ってトコじゃないですか? メルヘン?だし」
桃色の空に、カラフルな雲。地面には……
『何見とんねんワレェ? いてこますぞゴラァ!』
沢山の………………綺麗なお花さん?が爽やかな風に揺られている。あと、やかましい。
「──そうね……じゃあ、最後にこの格好についてだけど…………おい、こっち見ろコラ」
やめて。マジで、や"め"て"ッッッ!!!!!
顔を逸らそうとするが、社長が物凄い力でそれを阻止してくる!
肩から上、肩からう──あぁッ!?!!?
結果、オレは社長の全身を直視──して、しまった。
「ッ………………きっつ」
其処には、白いウサ耳&白バニースーツ姿の……社長がいrrrrrrrrrrrr──orz
………………ぜぇ、はぁ──うっぷ。
あぁ、お食事中の方……ごめんね_:(´ཀ`」 ∠):
「──きっつ(2回目)」
「いまアンタ2回言ったわよね?」
いや、あのね……聞いて?
「すみません。せめて、この辛さだけでも理解ってほしくて……すみません。社長…………」
上司の際どいコスプレを観るのは、辛いんじゃ。
それも耳やら尻尾やらがあるヤツ。
何なら、そのお腰には目覚ましサイズの時計までぶら下げられてて……再現度が高いのも、辛い。
「すぅー、ふぅぅーーーッ! よし、いけます!」
「そんな心の準備が必要な程なの??? あとね、私だって着たくて着てるわけじゃないからね!?」
それは──分かる。もしそんな衣装を自分から選んだのなら、正気を疑う。
それに、オレもだし。
この結界内に引き摺り込まれて、気が付いた時にはもう服が変わっていたのだ……。
──ま、オレは素っ裸だったから助かったけど。
「はい……まぁ、服装から考えて社長の役は『白ウサギ』でしょう? ご丁寧に時計もあるし」
「そうね……でも、アンタは???」
と、社長が訝しげにオレの姿を見る。
「? 普通に『アリス』では??? あの声も、アリスだ何だと言ってましたし……」
背中に背負った大剣を触りながら、告げる。
「──は?」
「──え?」
オレと、社長の声が見事に重なった。
「あの……アリスって可愛くて、でもちょっと不思議ちゃんなだけの女の子でしょ? なのに何で大剣なんて物騒なモン背負ってるのよ???」
──は?
アリスが、可愛くて不思議ちゃんなだけの女の子?
何言ってんだ、社長???
「何言ってんですか?」
「──へ?」
「アリスは単体で女王の手駒の竜の首をぶった斬るほどの強者ですよ?」
「ゑ……?」
その証拠に──
「──ほら、竜の血を浴びて赤黒く染まった鎧を着てるでしょ? オレの役は間違いなく『アリス』です」
■■■
「先生ッ! 女社長ッッッ!!!」
「──久保ッ! 如月と社長がッッッ!?」
「クソ!」
「如月さん!?」
鏡から出て来る大量の先輩(偽物)に邪魔されて、間に合わないッ!
「ッ! ミシャンドラ、バアル!!!」
『──!』
『く! 勿体無いが……全て叩き壊す!!!』
・
・
・
『………………』
コレで、先輩の偽物は全て壊した。
あの後、鏡から先輩の偽物が新たに現れる事も無く──先程の騒動がまるで嘘だったかのように静かだ。
「──社長さん、如月さん!」
「先生ッ! 女社長!!!」
「ぷはッ!!! くそ、湯の中を調べてみたけど何も無ぇ! あの二人、何処行ったんだよ!!?」
試しに、脱衣場の扉を開けようとするが──
ガラガラ──と、何の抵抗も無く普通に開く。
「狙った獲物を手にしたら、僕達はもうどうでもいいって事かな? は、舐められたモノだね……」
──言っておくけど、僕は……いや、おそらく僕達は……かな? それほど諦めが良くないんだよ。
「お? 何だコレ???」
おっと、言ったそばから田中が何かを見つけたみたいだ。
「田中。何かあったの?」
「ん、ああ。実はコレが、湯の中に落ちててな……なんか見覚えがあるんだけど、何の鍵だっけ?」
そう言って、田中は僕に一つの鍵を手渡してくる。
ふむふむ、鍵自体は小さいね?
金具でリストバンドに付けられていて、濡れない様に、バンドに収められるようにもなっていると?
あ、このリストバンドに番号があるね???
「………………これ、脱衣場のロッカーの鍵だね?」
「──んぇ?」
田中……お前、マジか…………。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ