修学旅行 〜怪異譚〜 5
■■■ホテル内温泉/男湯■■■
「──あ"ぁ〜〜〜〜〜……」
朝風呂、しかもお一人様貸し切り状態のデカい風呂に思わずだらしの無い声が上がる。
伸び伸びと入るデカい風呂、最高ですな!
結局……昨日はあの後寝落ちした所為で、風呂にも入れなかったからなぁ。はふぅ〜〜〜。
あー、でも──もうちょいしたら出ないと、飯を食いそびれるな。昨日の夜も食えなかったし。
うぅ、でも、もうちょい。あと、少しだけ。
この幸せ空間を堪能したい!!!
──タッ……タ…………タ………………
あ、でもさっきの不快感は何だったんだろ?
軽い貧血でも起こしたかな? でも、それからは特に何とも無いし……
まぁ大方、空きっ腹で風呂に入ったからかな。
健康には気をつけておかないと怖いからなぁ〜。
──タタッ……タタタタタ…………
「? 何だ???」
誰かが、走ってる……のかな???
脱衣場で走るなんて子どもか? まったく、親御さんは何してんだか……怪我してからじゃ遅いのに。
にしても……これでお一人様幸せタイムも終了か。
ふぅ、どっこらせっと!
「はぁ。残念、ざんね──ッ」
──スパァァァアアンッッッ!!!!!!!!
「──見つけたわよ如月ぃいいいいいッッッ!!!」
………………………………ふぇ?
え、へ?
しゃ、社長……??? 怒っ!?
なん、え????? 此処、男湯……?
オレ、今──産まれたままの姿晒して……?
「き──きゃぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ"あ"あ"ッッッ!!?!?」
──ッ!?
コチラへと助走をつけて駆け、勢い良く高く飛び上がり……え??? 社長が降ってく──?
「くらえッ如月ぃいいいいいいいいいッッッ!!!」
動かない身体。固定された視界。
増殖する『?』に侵食された脳。スローモーションとなった我が視界に映るは、社長の膝。
視界いっぱいの──膝!!!!!
これは、俗に言う膝蹴ッ──!?
「──り"ぃ"ん"ッッッッッ!!?!!!???」
と、言葉と共に顔面への衝撃。そしてそのまま真後ろへと倒れ、湯の底に後頭部と腰と尻を強打。
ザバァァンッッッ──と、荒ぶり波打つ湯。
「シャオラァアッッッ思い知ったか如月ごらぁ!?」
「ちょッ!? 社長さん此処男湯ッッッ!」
「せんせぇーーーーーーーーーーッッッ!?!!?」
「うわぁ、コレ如月死んでね?」
「ごめん先輩。僕にはあの暴走マシーンを止めれなかったんだ、本当にごめんね先輩……!」
ゴポゴポと、水音と共に声が耳に届く。
いや、あの………………オレ、何か、した……?
と、走馬灯が流れる時間も無く──オレの意識は、闇の中へと呑み込まれていったとさ。
──めでたし、めでたし。
(完)
■■■
いや、めでたしめでたし(完)。じゃねぇな!?
「──ぶはぁッッッ!? げほッ!」
深淵から意識を奪い返し、勢い良く上半身を起こしそのまま水上へと顔を出す!
「はッ、はぁッ!」
あぁ、新鮮?な空気の何と美味いことか!!!
ドクドクと忙しなく動いていた心臓の鼓動が、徐々に落ち着いてゆくのを感じる。
「ふぅッ、ふぅぅぅ──は?」
漸く安定したオレは、濡れた服のままガッツポーズをしていた社長に目を向け……問う。
「は?」
──と。
人間、ガチで驚くと「は?」しか言えなくなる。いやマジで。現にオレは、真顔でそう問うている。
だが、言っておく。この「は?」に含まれるのは、何も疑問だけでは無いのだ。
理解りやすく表すと……
「は? (疑2&怒3&殺95)」
……である!
ん? 右の数字???
あぁ、その「は?」に含まれる感情の割合だ。
上記の場合……疑問2割、憤怒3割、ぶっ●すぞテメェ95割。となる。
ここ、テストに出るから覚えとくように!
はい、ではね?
雑談はここまでにして……
「──ぴぃッッッ!?!!?」
ざぱん。と、産まれたままの姿で起き上がり……顔にへばりつく髪もそのままに、社長の方へと向かう。
久遠がオレに、信じられないモノでも見る様な目を向けてくるが……どうした?
そんな小鳥みたいな悲鳴まで上げて???
「──Fuuuuu……Shuuurrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr…………」
「ひッ!? き、如月さん!!?」
「き、如月! 社長だって悪気があってああしたワケじゃなくてだなッ!?」
「社長、南無三」
あらあら? どうしたの三人とも^ ^
そんなに顔を引き攣らせて……?
オレ、何もしないよ? 社長にも、ただちょっっっとお話をね? 聞かせてもらうだけだからサ???
そんなに怯え無いデヨ? ネ?
◆◆◆〜〜〜拷問中〜〜〜◆◆◆
「──は? 鏡から人??? 頭、大丈夫ですか?」
「え? コレ、アンタの仕業なんじゃ???」
…………はぁッッッ!?!!?
「するわけ無いでしょ!? 何で修学旅行に来てまでそんな面倒な事しなきゃならないんですか!??」
「「「「──え????」」」」
「(やっぱり。でも、それなら誰が……?)」
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