修学旅行 〜怪異譚〜 4
「──レストランで先輩を見た?」
「えぇ。でも、たぶん偽物だと思うわ……綾ちゃんの悲鳴を聴いても顔色一つ変えなかったし」
レストランで出会った如月?について、久保達にも情報を共有する。
「歌なのか詩なのかは理解らないけど、ずっと口ずさんでいて正直、かなり不気味だったわ……」
うぅ、思い出すだけで鳥肌が立つ。
「──歌……詩、それに鏡……か。ふーん?」
と、ブツブツと呟き──久保は薄く笑う。
コイツ、もしかして……何か気付いたんじゃ?
「ねぇ久保? アンタ、何か気付いて──?」
「まぁ、一先ずはそのレストランに行ってみようか。もしかすると、その先輩の偽物も居るかもしれないし」
私の問いに言葉を被せ、久保は不敵に笑う。
コイツ、如月に似て勿体ぶる癖でもあるのかしら?
『失礼な。オレにそんな悪癖はありませんよ!』
と、イマジナリー如月が言うが……アンタ、説得力無いわよ? と、脳内で捩じ伏せる。
──って!
今にも鼻歌でも歌い出しそうな程、上機嫌にレストランへと歩いて行く久保の後を私達は追った。
■■■
「──あれ? 誰も居ない……?」
レストランへと辿り着き、中へ入って早々、久保が素っ頓狂な声を上げる。
……? どうしたのかしら、コイツ???
「社長、先輩が居た席って何処?」
「へ? えーと、確かあそこの席よ」
と、如月?が座っていた席を指差す。
って、はぁ!?
──え? 何やってんの、コイツ???
「ん〜? 何も無いけど……ホントに此処?」
いきなり椅子をひっくり返したり、テーブルの裏やらクロスまでめくり出した久保が問うてくる。
「そ、そうだけど……アンタ、何してんの?」
何かを探しているのか、テーブルと椅子を何度も念入りに確認し、唸る久保。
コイツ……マジで何してんの?????
「あれぇ? 僕の予想が外れた???」
は? 予想……???
「──予想って何だよ、久保?」
と、ずっと成り行きを見ていた田中が口を挟む。
心の中で、グッジョブ! と、親指を立てておくわ。
「ん〜、てっきり先輩の復讐かなって思ったんだけど、ホラ──昨日、色々あったんでしょ?」
曰く──
コレは、如月の持つジャバウォックの能力ではないかと。久保は言う。
先ず、此処にはプレイヤー以外居ないこと。
次に、ジャバウォックとは鏡に関わりのあるモンスターであること。
……そう言えば、アイツ──良く万能フィールドとか何たらこうたらスキルを使ってやってたわね?
んで?
へぇ〜〜〜、そのジャバウォックってとある物語の詩の中で語られている怪物だと??? ほ〜〜〜ぅ?
奴が口ずさんでいた、アレよね( ^ω^ #)
それってもう、何処からどう見ても確黒って事で宜しいのよね????? ねぇッ!?!!?!??
じゃあ、ナニ???
あのガキ、私達の慌てふためく様が見たくてこんな素敵でも何でも無い嫌がらせを仕掛けてきたって事?
素敵でも笑えもしないドッキリってね、唯の嫌がらせなのよお分かりかしら???
「──で? その嫌がらせにビビってる私達を奴は高みから見物してるってコト?」
「多分……?」
おっほぉ〜〜〜〜〜??? なるほどね〜〜?
沸々と、沸いてきた怒りが恐怖を塗り替えてゆく。
「──す──わよ!」
「へ? 社長さん、今なんて──?」
「え? あの、お、女社長???」
フ"チ"ッッッ──と、その瞬間……私の頭の中で、何かがキレた音がした。
「総員、草の根を掻き分けてでもあのド畜生を捜すわよ! モンスターの使用も許可するわッ!!!」
鏡も見つけ次第全て叩き割りなさい!!!!!
私が許可するわッッッッッ!!!!!!!!
私は、そう、声を張り上げる!
「………………うーん?」
「お、如月を捜すのか社長!」
「そうよ!!! 見つけ出して私の前に引き摺り出してちょうだい! あの野郎、目にモノを見せてやる」
そうして、私達は──このホテルを舞台に、モンスターを含めての如月狩りを開始したのだった。
◆◆◆
「うーん……やっぱり、妙……だね」
「あん? どうしたんだよ、久保?」
「──いや、社長やお前だけなら兎も角……佐藤ちゃんや舎弟くんまで巻き込むなんて先輩らしくない」
いの一番に先輩を疑っておいてアレだけどね……。
でも、そうは言っても……社長が聴いたって言う歌、詩のようなモノに、鏡から出て来る人達。
挙句、現在このホテルにはプレイヤーしか居ない。
……ジャバウォック以外に、そんな事が出来そうなモンスターって居たっけ?
それに……プレイヤーだって。
このホテルに居るプレイヤーは、僕、田中、社長、佐藤ちゃん、舎弟くん……後は先輩の計6人。
僕達5人は既に集まっている。
だとすれば、やはり可能性があるのは先輩だけだ。
でも、この胸騒ぎはいったい……?
「んー、そうか? でも、オレらと如月以外にプレイヤーって居たっけか?」
「そうなんだよね……ま、もし考える事があるのなら先輩を見つけた後で、かな?」
まぁ、血眼になって駆けずり回っている社長含め──モンスター達から逃げ延びるのは、いかんせん先輩でも難しいだろう。
要は、先輩が捕まるのは時間の問題で──
「──あ! そう言えばオレ、一回トイレに起きた時に如月が着替えを用意して出て行くのを見たな」
「………………………………は?????」
お前……は???
「アイツ、もしかしてまた風呂に入りに行ってたりしてな? な〜ん──へぶッッッ!!?!?」
「──ねぇ、田中? 僕、いつも言ってるよね??? そういう事は、早く、言えぇぇえええッッッ!!!」
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