修学旅行 〜怪異譚〜 2
「──ッ!?」
「よし! 綾ちゃん、久遠くん今行くからね!!!」
私の唐突な行動に驚いたのか、如月?が歌っていた歌のようなモノが止まる!
ッ──身体が動く……あの歌のようなモノが止まったからかしら?
それとも、痛みで???
…………ま、んなモンこの際どっちでもいいわ!
如月?に背を向け、綾ちゃんの声がした方へと走る。
ふと、如月?へと一瞬目を向けるけれど、
あの如月?が追って来る様子は無いわね……。
ただ、呆然と突っ立っている。
綾ちゃんの悲鳴を聴いても──あの如月?は顔色一つ変えなかった……。
それに──何かしら?
何か、あの如月?の姿には違和感を感じたわ。
ソレが何かまでは……分からないけど…………。
いえ、今はそんな事より綾ちゃんと久遠くんの心配をすべきね……!
──お願い。二人とも、無事でいて!
■■■〜〜〜フロント〜〜〜■■■
『………………』
『………………』
『………………』
「──な、何だよお前ら!? オレ達に何か用でもあるのか!!? オイ、何とか言えよ!??」
「龍鬽くん……その人達、やっぱり何か変です!」
ッ! この声は──!?
「──二人とも!」
「ッ、社長さん!!!」
「女社長ッ!」
良かった! 二人とも、無事ね!!!
ただ……二人の周囲を、複数のフロントマンが取り囲んでいるから、まだ安心は出来ないけれど──。
その瞬間、ギギッ……と、一人のフロントマンの首が──ぎこちない動きで私の方へと向けられる!
「──ッ!?」
私は、思わず息を呑む。
そのガラス玉の様な目に生気は無く、その顔には人間の表情らしい表情も無い。
まるで──精巧に作られた『人形』とでも言えば良いのかしら……そんな気味の悪さを感じる。
『………………』
そして、そのフロントマンは私と目が合った瞬間──まるでターゲットを変えたかのように、
綾ちゃん達から離れ……私の方へと歩いてくる!
カク、カクン──と、
まるで糸に操られる『操り人形』のように、表情一つ変えず、目を見開いて此方へ向かって来る!
「ッ、来ないで! ティア──ッ!?」
その余りの異常さに、スマホを手にティアマトちゃんを召喚しようとした瞬間──!
「斬り刻め──ミシャンドラ!」
「ぶっ潰せ! ゴーレム!!!」
──黒い突風が、私に迫っていたフロントマンを真横から呑み込み、瞬時にバラバラにしてしまう!
「なぁッ!?!!?」
それと共に、上から落下してきた岩の巨人──ゴーレムが、綾ちゃん達を取り囲んでいたフロントマンをまるで玩具のように纏めて薙ぎ払う!
一瞬で蹴散らされたフロントマン達……そして、その光景に呆然とする私と綾ちゃん、久遠くん。
そんな私達三人の前に現れたのは──
「おぅ! 無事かお前ら!!!」
「見たところ、怪我は無いみたいだね……って、社長? ちょっと頬っぺた腫れてない?」
脳筋と狂信者……あ、間違えたわ。
「た、田中と……久保」
──その二人だった!!!
・
・
・
「……って! 助けてくれたのは正直ありがたいけど、バラバラにするのはやり過ぎよ久保!!?」
「──は?」
と、意味が理解らなそうに久保は声をあげる。
「いや『は?』じゃないわよ!? 相手、アレ襲って来たとは言え生身の人間でしょうが!!?」
回復薬を掛けたら、ワンチャンあるかしら???
と、一瞬脳内で考える。
明らかに正当防衛にしてはやり過ぎだけど、助けてもらったのは事実だし──
「……あの、社長さん…………?」
「──全員で口裏合わせたらいけるかしら? 後はずっと下を向いて怖かったんです。とだけ言ってれば」
ギリ、でワンチャンないかしら???
「あの……女社長?」
「御免なさい久遠くん。今、私けっこうガチで考え事してるからちょっと待ってね……」
いや、もうこうなれば埋める? 最初から無かった事にしちゃう???
此処、ホテルだし……スコップや軍手くらい──
「社長さぁ、まさかアレを人間って言ってるの?」
「──ゑ?」
心底呆れた様な、久保の声に顔を上げる。
「はぁ──良く見てみなよ……アレ」
と、先程……バラバラにされたフロントマンの方を指で差す。
「へ……あれ?」
そう言えば──血とか、出てないわね。
何か、妙にキラキラしてるし……って、あら?
不思議に思い近付いてみて、漸く気付く。
其処に、人間の遺体などは何処にも無く……
──まるで代わりだとでも言うように、無数の鏡の欠片だけが散らばっていた事に。
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