焼肉事変 7
──どうして、こうなった???
「ウッ、ウェ……アナタ! キメラが、キメラがぁ!」
「落ち着け母さん! こら虫ちゃん!!! お母さんが泣いちゃったじゃない、ごめんなさい。は!?」
『や。です!』
いや、おかしいって!!!!!
ギャン泣きしたかと思ったら、今度は社長を巻き込んで「ままごと」が始まったし……!
しかも、設定は「反抗期の息子」とその「両親」。
──えらく生々しい設定だなぁ……アレ。
いやそうじゃなくて!? しっかりしろ、僕の頭!
「いいのアナタ……きっと私の育て方が──」
「何を言ってるんだ母さん──」
『絶対にヤ。です! 謝りません!!!』
…………おかしい。いつにも増して、先輩の様子がおかしい。絶対におかしいって!?
思えば、さっきから言動も変だった。
コップに入った水を飲んで、怒ったかと思ったら……急に泣き出して──ん? 水?
まさか──ッ!?!!?
先輩の近くに置いてある、空のコップを奪い……少し鼻を近付けて、そのニオイを嗅ぐ。
「──ちょっ!? 何してんだアンタ!?!!?」
「そういうのは、ちょっと……良くないかと」
『主……気持ちは理解るが、どうかと思うぞ?』
「あれ? 僕ってもしかして、信用無い???」
自身の信用の無さに、心にクるモノを感じつつ……先程嗅ぎ取った予想通りの刺激臭について話す。
本当にザックリと──。
「──驚かせたのは申し訳無かったけど……先輩、たぶん酔っちゃってるから介抱するの手伝ってくれない?」
そう。あの鼻を刺すような刺激臭……アレは、アルコールの臭いだ。
◆◆◆
「いやぁあああああッッッ謀反よ! 私を縛ってどうするつもりよ、乱暴する気でしょR本のように!?」
「──頼まれてもしないから安心しなよ。それより、社長さぁ? このコップの中にお酒入れなかった???」
先輩から引き剥がし、ちょうど落ちてた縄でふん縛って……そう、第一容疑者を尋問する。
「アナタ、アナタぁああああああああッッッ!」
「はいはい。先生はお水を飲もうなぁ〜」
「どうぞ、如月さん」
暴れる先輩を舎弟クンが羽交締めにし、空かさず、佐藤ちゃんが先輩の口元へと水を持って行く。
──よく訓練された二人だな〜。手慣れてる。
「で? どうなの社長???」
そう再度、問うと……
「そりゃ入れるわよ! コップだもの!!!」
と、そう容疑者は堂々と──自身の罪を認めた。
もうコイツ、窓から外に投げ捨てようかな?
あまり堂々さに、↑な事を考えてしまうが……何とか自分を嗜め、簀巻き放置に留める。
酒? もちろん没収したさ!!!
まぁ──
「──私のお酒ぇええええええええッッッ!!?」
って、さっきからビチビチしてるけど……放置で。
それより、先輩は……。
「んッ、んん……は、はぁッ──あむ、ぅ…………」
「──久遠くん。私は今、如月さんにお水を飲まして介抱しているだけです。そうですね?」
「そ、そのはず……だ。うん」
『おい、後生だ交代してくれ!』
………………。
えっと──説明、いる???
──潤んだ瞳、赤く染まった頬、妖艶に息を吐き色気MAXな先輩。
──女の子から、雄になりかけている佐藤ちゃん。
──バアルはコッチ来て、説教するから。
と、ちょっと……いや、かなり危うい。
佐藤ちゃんに至っては、先輩の色気を真正面から喰らった所為で──もはや、獣の眼光をしている。
「3,1415926……」
あの、舎弟クン? 何で急に天井を仰いで円周率を唱え出してるの、君???
「はッ、ぅう…………キメ、ラぁ」
『知りません。フンッ、だ!』
あ、虫くんは何とも無いのね……ある意味凄いな?
と、其処へ──
『元主よ。そんな虫は捨てて、やはり私とやり直さないか? 私なら、絶対に元主を悲しませはしない!』
そう、昼ドラみてぇな台詞を吐きながらバアルが先輩へと詰め寄る。
ホンットに懲りないね、お前も。これ以上、場を掻き回されたくないし……悪いけど、スマホに──
「──ほん、と、に???」
『──え?』
「ちょ、先輩???」
先輩の言葉に、僕とバアルはフリーズする。
そのまま……泣き腫らした紅い瞳でバアルを見つめ、先輩は再度、
「ほん、と、に……オレを、悲し、ませない?」
──問う。
『ぇ? あ、あぁ……無論だ』
と、バアルがそう答えると……
先輩はくにゃりと微笑み、腕を広げ──
「──それなら、いいよ。おいで? バアル」
『──ッッッ!!?!?!!!???』
せ、せせせせせ先輩ッッッッッ!?!!???
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