焼肉事変 3
──シュバッ!
と、Gを思わせる素早さで、瞬時にオレのフリをしているキメラへと抱き付く社長。
どうやら、オレをキメラと勘違いしてくれたみたいだが……キメラ…………、
『ふぅ──(¬_¬)』
その顔は止めようぜ?
メンドクセ感が半端ない!!!
「ギメラぐんが、失ぜろっで! 失ぜろって私に言っだのよ!? ぶぇえーーーーーーーーーーーーんッッッ」
『ソウデスカ』
泣き上戸に絡み酒……一瞬、言い過ぎたかと心配したオレの時間を返して欲しい。
「酷いばよね!?!!?」
『ハイハイ、ソウデスネ』
「飼い主とじでどうなの!? 私、一応あんだの上司なのに! ごの扱いばなにッッッ!!?」
『ナンデショウネ???』
「──私に秘密にじでもらっでる事だってあるのに! バラずわよ!? バラじでやるッ!!!!!」
『ヒュッ……ま、待て!!! それはや──』
秘密? え、キメラが社長に???
初耳なんだが……?
それにあの焦り様──キメラの奴……一体、どんな秘密を握られてるんだ???
「──ギメラぐんが! アンダの机の中にゴッゾリ蠍を飼っでるっで!! バラじでやる!!!」
………………。
………………………………。
………………………………は????????
「ごめん。今、なんて???」
キメラ????? お前、まさか──?
『──ちがッ! それにはワケがッッッ!!!??』
「主は黙ってて下さい。おい雌、言え」
キメラの制止を無視して、オレは社長に問う。
「──まだ雌っで言っだぁーーーーー!? 蠍飼っでるぐぜに! 私に秘密にじでもらっでるぐぜに!!!」
「ほぅ? 蠍を……ね???」
しかも、オレの机でかぁ……。
「主♡ 後で、ちょっとお話が♡♡♡」
(逃げるなよ? キメラ)
キュルンキュルンな笑顔で、キメラが逃げない様にぶっっっとい釘を刺す。
『──ぴぃッ!?』
あらあら、キメラくんったら♡ 虫なのに、そんな小鳥みたいな悲鳴あげてドウシタノ???
「如月さん!? 顔色がッ!!?!?」
「蒼を通り越して白くなってるよ先輩!?」
『自分の主人に隠し事など……あんなクソ虫捨てて、また私とよりを戻さないか元主よ!??』
純粋に心配してくれる花の二人と、これ見よがしに自分を売り込む悪魔一匹に囲まれるキメラくん。
あとバアル……お前、まさか酔ってるのか???
『──…………』
緊張からか、喉が渇いたのか──キメラは側に置かれたジョッキへと手を伸ばし……そして、
その中身を一気に呷る!!!!!
あれ? あのジョッキ……オレが頼んだヤツじゃ?
無色透明なシュワシュワした液体が、物凄い勢いでキメラへと流れ込んでゆき──ガンッ!
些か、乱暴にジョッキを叩き置くキメラくん。
その顔は赤く、目は……若干、据わっている。
そして──
『──それなら! それなら私だってお前達の秘密を全て暴露してやるぅーーーーーーーーーッッッ!!!』
うわぁーーーーーーんッッッ!!!!!!!!
と、鼻息荒く泣き叫び、カサカサと完全にアレな動きでにじり寄り、抱きついてくるキメラくん……。
そう──この時のオレはまだ、気付かなかった。
タガの外れた、意思疎通持ちがどれほど恐ろしいかと言う事を……!
キメラが普段、どれほど理性的だったかを──!
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