焼肉事変 1
「──はい! 先輩、これ良く焼けてるよ!!!」
「あぁ、ありがとな。久保」
取り皿に山盛りにされた焼き加減が完璧の肉を久保から受け取り、そう礼を述べる。
『主! お肉ばかりでは健康に悪いです!!! 此方のお野菜も食べて下さい!』
「あ、あぁ。ありがとう、キメラ」
と、コチラもキメラが山盛り野菜を乗せた皿を差し出して来たので、礼を言って受け取る。
…………後でコッソリと田中の皿に移そっt──
『──主?』
「ちゃんと食べますごめんなさいッッッ!!!」
くそぅ! 誰だコイツにテレパシーなんてチート能力持たせた奴は!?
………………あ、オレか。そっか(・ω・`)
「──如月さん! コレ、よく焼けてますよ!」
「あぁ、あり──が、と?」
………………。
そう、満面の笑みを浮かべた綾ちゃんが差し出してくれた取り皿には……焼き、マシュマロが──。
「………………お、おいしそう……だ、なぁ〜!」
待って?
ぇ? 何で、え──焼いたの? 肉の代わりに?? マシュマロを??? 何で?
「はい! このチョコソースに付けて食べると絶品だと店員さんが教えてくれました!!! どうぞ!」
「──チョコソース??? 焼肉屋に?」
「はい! とっても美味しいです!!!」
あ、あぁ…………そぅ(諦め)
眼前にあるタレ入れの中に、並々とチョコソースが注がれてゆく。
「──なぁ、久保知ってるか? 何でこの店のタレ入れが三つに仕切られているのかを……?」
「え?」
「それはな……塩とタレとチョコソースを入れる為だよスゲェよなオレ初めて知ったよアハハハハ…ハァ……」
おかしいな……目から、塩水が…………。
「先輩!? ちょッ、泣くほど辛いのならやめなって! 手だって震えてるじゃん!!?」
「ハハッ──大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫ダイジョウブ、オレナラデキルヤレルタエラレルガンバレルカラ!」
「お? なに、何を頑張るの??? がんばぇ〜!」
──うん社長。オレ、頑張るよ!!!
高速振動を晒す箸で、取り皿に盛られたマシュマロを掴み……チョコソースを付ける。
「はぁッ、ハァッッッ!」
「先輩。今、先輩すごい目してるよ──親の仇に向ける様な目してる……」
止めようとする久保を振り切り……マシュマロを、口へと──入れた。
「──ど、どうですか? 如月さん」
と、綾ちゃんが問うてくる。
……なぁ。お前らに一つ訊きたい。
善意で差し出されたモノに、ダメ出し出来る奴って居るの?
引き攣りそうになる顔に、強引に微笑を浮かべる。
そして──一言。
「うん! すっごく美味しいね、コレ☆」
少なくとも……オレには出来ねぇよ!!!!!
「あ、ごめ〜ん! ちょっとお花摘みに行ってくる。キメラ、一緒に行こうぜ!!!」
『──え? 私は別に──ひッ』
キ メ ラ ? ? ? ? ? ? ? ?
行きたいよな?
お前も……オレと一緒に、連れション。
行きたいだろ? ん???
『──は、はい。ぜひ同行させて下さい主ッ……!』
『ん? あぁ、それなら私も共に──』
「──お前は其処で黙って肉でも食ってろセクハラ割引変態狂信悪魔」
ささッ、ではトイレに行きましょうね〜〜〜!
・
・
・
『………………ぐすんッ』
「可哀想だけど今のはお前のタイミングが悪かったと思うよ。ほら、肉でも食って元気出しなよバアル」
◆◆◆
「さて、キメラくんや……」
『は、はい』
場所はトイレ、その個室。
オレは俗に言う壁ドンをし、キメラに迫る。
狭い個室に、男が一人とモンスターが一匹……コレで何も起きない筈もなく──
「──オレと入れ替わって下さいお願いします!!!」
『へ???』
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