焼肉パーティー開幕
■■■数日後/自宅/玄関■■■
「──タマ、本当に悪いとは思っている」
『なぁ〜ん……』
(ご主人様……)
そんな悲しげに鳴かないでくれ。
いや、内心喜んでいるのかもしれんけど。
だが、もう時間も無い。故に──!
タマ用に用意した高級キャットフード缶の中身を床にぶち撒け、その上からチュー●を垂らし、
「──あの店は動物禁止なんだ。だから……」
邪悪な笑みを浮かべ──一言。
「お前は床に落ちたソレを食うがいい……愚鈍な肉壁の分際で良くやった。ご褒美だ」
告げる。
──先に言い訳しておくが、オレはあの変態が用意したカンペ通りにやっているだけだからな?
動物を愛する皆さん、勘違いするなよ???
「………………うわ」
『──主…………』
勘 違 い す る な よ ? ? ?
あと、その生温かい目もやめて。
──泣くぞ? オレだって普通に泣く時はあるんだからな??? あとガチで引いた様な声もやめて。
心に来るから。マジで。
「あぁもう! タマ、契約は守ったんだから大人しくしてろよ!? わかっ──ん、タマ???」
『………………』
どうしたんだ? 何故、ピクリとも動か──?
「──あら? 境ちゃん、猫ちゃんったら白眼向いて気を失っちゃってるわよ???」
「は?」
玄関まで見送りに来てくれた母さんが、言う。
「よっぽど境ちゃん達と離れるのがショックだったのねぇ〜。猫ちゃんの面倒は、母さんが見ておくから」
境ちゃん達は気にせず行ってらっしゃい。と、笑顔で昇天した変態を抱える母。
「──あ、はい。行ってきます!」
『行って参ります、お母様!』
と、礼儀正しく言う久遠とキメラ。
「じゃあ、その変態を宜しくね母さん。アレだったらその辺に捨て置いてくれて良いから──あと、その餌はちゃんと食うように言っといてもらえる?」
じゃあ──行って来ます。
そう言い残し、オレ達は家を後にした。
■■■焼肉屋/店内■■■
「……はい、それではね! 先日、皆様には大変なご迷惑を掛けたお詫びとしてね──」
ジョッキを手に持ち、挨拶を始め……
「──長い挨拶はいいから早く始めろーーー!」
…………ようとしたら、既に出来上がっていた社長が爆笑しながらヤジを飛ばす。
なぁ、先に訊いておくな?
この店、貸りたのはオレなのに──どうして貴様、先に入店して酒を飲んでいたんだ???
今抱えてるその一升瓶も、この店の中じゃ中々にお高い酒だよな? もしかしなくても、喧嘩売ってる?
ま、まぁでも長い挨拶は嫌われかねないのも確かか。
社長の言う事を聞く様で癪だが──仕方無い。
簡潔に、簡潔に言おう。
「コホン、長い挨拶はさて置き──今日はオレの金で、存分に贅肉という名の脂肪を蓄えて下さいね!」
「──これ以上無く食べにくいが!?」
「さっすが境夜たん! 適度に食欲を奪うでござる!」
「……いや、大人が子どもに奢られると言うのもどうかと思うが……?」
と、佐藤(父)、鈴木、大平は言ってくるが──嘘付けよ、お前らも、もう酒飲んでるよな?
「──よっしゃぁッ! いっぱい食うぞぉーーー!」
「先輩、やっぱり僕も半分出すよ。田中が本気出したらヤバいの、知ってるよね?」
気にするな、久保。
田中ぁ、テメェちょっとは加減しろよ!? ポンポン君を大事にしなさい高いのばかり見ないの!
「先生、ゴチになります!」
「デザート類はえっと……?」
久遠、いっぱい食べなさい。
綾ちゃん、此処、焼肉屋。
『そら、真っ黒に良く焼けたぞ。主の奢りらしいからな、ホラ食え割引悪魔』
『おっとすまんなクソ虫。あ、此方の肉も炭の様に良く焼けているぞ。まさか残しはすまいな?』
『モグモグ( ^〜^ )モグモグ』
──やめて! そんな嫁姑みたいな争いやめて!
あと、キメラとバアル……お前ら、ソレちゃんと食えよ? 残したら許さんからな???
ティアマトちゃんはお行儀が良いね〜! バクバクとまるでダイ●ンみたいに肉を吸い込んで──は?
『美味ィイイイイイイイイイッッッ!!!!!!!』
『げぷぉおおおおおおおおッッッ!!!!!』
………………。
「──はい。はい、では皆様どうぞ楽しんで下さい! 以上、挨拶終わり!!!!! (ヤケクソ)」
乾杯ッッッ!!!!!
と、ジョッキを掲げ……挨拶を終える。
こうして後の、飲み会史上に残る──焼肉事変は、その幕を開けてしまったのだった。
ここまでお読み下さりありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ