データと想い
「──は? 私が如月を負かしたって??? 今日はエイプリルフールじゃないわよ?」
と、マジで理解らないのか社長は呆然と告げる。
………………はぁ。
溜息が出る──自覚無かったのか、この人。
まぁ、社長っぽいっと言えばぽいけどね。直感だけで生きてる様な人だし……頭がね?
正直、言いたく無いんだけどなぁ──。
でも、言わないと……本人はアレだし、僕もいい加減吹っ切りたいしね…………仕方無いか。
「──今、社長の会社から出てる大ヒットのゲーム……あれ、先輩が作ったゲームだよね?」
「へ? ぇ、えぇ。でも、権利諸々はちゃんとアイツから買ったわよ? しかも言い値で」
ふぅ、と息を吐き……答える。
「それだよ」
「──はぁ???」
少し逡巡した後、ようやく理解が及んだのか……
「え!? アイツ、まさかその一件を勝ち負けどうこう言ってたの!!? え? 馬鹿なの???」
──( ^ω^######## )
「はぁ……? 人の先輩を馬鹿呼ばわりしないでくれる??? あと、どっちかって言うと勝ち負け騒いでたのは僕だから。先輩じゃないから。思い上がらないでくれるかなぁ!?」
「え? ご、ごめんなさい???」
◆◆◆
「──で? 結局、先輩に一杯食わせたのは社長なんでしょ??? 社長だよね? 違うの??」
「それは、まぁ……そうね? 私ね」
…………騙しては無いけどね。あと、私は何で怒られているのかしら???
私、まだ何もしてないわよね? ただ、始末書を書かせようと思って持って来ただけだし──。
「やっぱそうだよね。はぁ………………」
……何で正直に答えて溜息吐かれなきゃいけないのかしらね? え、なに???
情緒不安定なの? この子???
ぬかったわ……ただの嫌がらせのつもりが、完全に来るタイミングをミスったわね、私!
「本当にさぁ──何で社長……よりによって社長に先越されたとか……はぁ、認めたく無いねホントに!」
大袈裟に天を仰ぐ、久保。
喧嘩売ってるのかしら、コイツ……買うわよ?
「はぁ……認めるとか認めないとか良く理解んないし、あの時、アイツにも言った事だけどね──」
全く、好き放題ぎゃーぎゃーと!
要はアレでしょ?
よくも先輩をハメやがったなって事でしょ???
「──ゲームはねデータが全てじゃないのよ! お客様の声、そこに込められた想いを汲み取りなさい!」
別にハメて無いわよ!
さっきも言った通り、私はソイツの言い値であのゲームの権利諸々を買ったの!!!
それは正当な取引よ!
「アイツが作ったゲームはね、すっごく面白かったのよ! だから、どうしても欲しくなったの!!!」
簡単に言えば、キラキラしてた!
だからこそ、同時に許せなかった。
「──テストプレイをして、協力してもらった人達からデータを集めて……あのゲームの価値を決めた」
それが間違ってるとは言わないわ。でも、
アイツは、自分のゲームの限界を決めつけた。
それが、どうしても許せなかったのよ……!
「画面に示されたデータばかり見て、文字列としてでしかアイツはこのゲームを評価して無かった」
信じられなかった。信じたくなかった。
──こんなに素晴らしいゲームを作れる奴が、そんな表面上のモノだけしか見ていなかった事を。
その文字列に、どれほどの想いが込められていたのか──気付いてさえいなかった事を!
「──悔しかったわ。目にモノを見せてやるって思ったの……だから、使えるモノは全部使った」
持ってる手札を全て使って、頭を下げて。
このゲームがどれほど面白いゲームなのか、胸を熱くさせるゲームなのかを宣伝した。
「その結果、サービス開始直後から如月の予想を遥かに超える人数があのゲームをプレイしてくれた」
ガッツポーズしたわ!
あのキラキラを、本当に多くの人が知ってくれたんだから!!! 嬉しかった!
「楽しいモノはね、広まっていくのよ」
それに、如月の驚いた顔も見ものだったわ。
全てを見透かしたかのような、あの退屈な顔が、
初めて、年相応な表情をしてたんだから──!
今思い出しても、ふふん! と、笑みが浮かぶ。
「…………何笑ってるのさ、社長……?」
「べっつに〜〜〜???」
イマイチ理解出来ていないのか、苦い表情をしている久保に……告げる。
「フッ、如月信者のアンタにはまだ難しい話だったわね。まぁ、詳しい事はその先輩にでも訊きなさい」
──起きてるんでしょ、如月?
と、呼びかける。
すると、苦虫を噛み潰したような顔をした如月が上半身を起こして此方を見る。
「…………あー、おはようございます?」
「先輩!? ぇ、起きてたの!!?!?」
私の話の途中くらいから、ピクピクしてたわよ?
「まぁ、邪魔者は退散するから……お二人でごゆっくりどうぞ? あ、始末書は此処に置いておくわね☆」
そう言い残し、私は病室を後にしたのだった。
いやぁ、やっぱ青春は良いわね!
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