真の勝者は…?
■■■3日後/病室前■■■
──すぅーーー、はぁーーーーーッ!
深呼吸をし、純白の扉を叩く。
「──せ、先輩? えっとその……お見舞いに来たんだけど、あの、入っても良いかな???」
扉越しに、中に居るだろう先輩へと問い掛ける。
「ーーーーーッ! ーーーーーーーーー!?!」
「………………先輩?」
おかしい……中から物音はするのに…………?
「あの──入るよ? 先p」
返事が無い事を不審に思いつつも、僕は純白の扉を静かに開けた。
「──嫌だぁあああああッッッ甘い! 甘いモノが、甘いモノが来るぅうううううううッッッッッ!!!」
「落ち着いて如月さん!? 大丈夫、もう甘いモノは全て回収しましたから! はい、ナイナイ!!!」
「先生ッ! 鎮静剤用意出来ました!!!」
「は〜ぃ、ちょっとチクっとしますよ〜〜〜!」
「──ィィイャァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァーーーーーーーーッッッゔ!」
絹を引き裂いた様な悲鳴を上げていた先輩は、医者が打った注射によってパタリと力無く倒れる。
……いや、即効性過ぎない? 大丈夫、アレ?
ていうか、いったい何があったの???
「ふぅ! とりま寝かせておき──うん? えっと君は……もしかして如月さんの知り合いかな???」
先輩に注射を打った医者が問うてくる。
「えと、はい。その、お見舞いで……」
「あー、ごめんね〜! 彼、いまちょっと錯乱してて鎮静剤打ったところだから今日はちょっと──」
苦笑いを浮かべ、医者が言う。
「あの、待たせてもらう事も難しいですかね?」
「う〜ん、いつ目を覚ますか分からないからね〜。君もしかして、遠くから来たの?」
「え──あ、はい。なので無理を承知でお願いします、どうか待たせてはもらえませんか?」
先輩から伝授された「愛想良くお願いする」を発動し、医者に頭を下げ頼み込む。
……本当は、帰って出直すのが正しい。
それは理解ってる。理解ってるんだ。
…………でも、どうしても──早く、先輩に謝りたかったから……だから──!
「──そういう事なら、仕方ないね。もしかしたら、今日は目を覚まさないかもしれないけど、良いの?」
「はい! その、無理を言ってしまいすみません」
再度、頭を下げる。
「はは、構わないよ。にしても、わざわざ遠くからお見舞いに来るなんて──友達想いなんだね〜!」
小さく笑い、医者は踵を返す。
「じゃ、僕達はもう行くね。其処に椅子があるから、好きに使ってね」
「はい! その、ありがとうございます。それと、あの──先輩はどうして錯乱を──???」
「それがねぇ……可愛い女の子と、彼そっくりの男の子、あと美形の男の人が来たんだけど」
うん?
可愛い女の子と、先輩そっくりの男の子……あぁ、あの綾ちゃんって子と、虫くんか。
でも……美形の男??? もしかして、バアル?
え──いつの間に、仲良くなったの?
「お見舞いの品を見た瞬間、錯乱したらしくてね? 美味しそうなスイーツの詰め合わせだったのに」
◆◆◆先輩……( ̄人 ̄)◆◆◆
「──あれ? 久保じゃない、久しぶりね。如月は、あら? 寝てるの???」
げ……社長…………。
ノックもせず、無遠慮に入って来た社長が問う。
「そうだよ。鎮静剤ぶち込まれてね」
「は? 鎮静剤???」
どゆこと? と、顔を向けてくる社長。
「はぁ……先輩が気に入っている子と、虫くん、あと多分バアルがお見舞いに来てたみたいでね……?」
「……ほん? あ、ちょっと待って──まさか!」
「そのまさかだよ。スイーツの詰め合わせを持って来られた先輩が錯乱して、こうなったワケ」
思わず、口から溜息が漏れる。
「それは──如月も災難ね……」
「まったくだよ。ホントにタイミングの悪い」
そう、愚痴を吐き出す。
はぁ──ようやく動けるようになったから、お見舞いに来たって言うのに……本当についてない。
「あー……そういや、アンタもあの後倒れてたわね? もう大丈夫なの???」
「──お陰様でね。僕の場合、体力を消耗し過ぎただけだし……先輩みたいに怪我だってしてないしね」
肩をすくめ、息を吐く。
……いっそ、僕が怪我をすれば良かったのに。
先輩の為なんて言いながら、先輩を傷付けて。
救うなんて言って、結局、また先輩に助けられて。
「──何が後輩だよ……馬鹿みたいだ…………」
下を向き、唇を噛む。
恩人を傷つけて……
結局、何も救えなかった……。
というか、もう、あの人は救われてた。
それを──僕が認めようとしなかっただけで……。
でも、丁度良かったのかもしれない。
重い口を開き、僕は社長に問う。
「──ねぇ、社長なんでしょ? 先輩を負かしたの」
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