憑依 VS 憑依
──ドクッ、ドクン……
普段よりもずっと速く、強く脈を打つ心臓。
胸部の不快感、一向に治らない嘔吐感──口の中には、鉄の味が広がっている。
「…………ッハ!」
無意識に止めていた息を吐く。
新鮮な空気を取り入れた肺から、ゴロゴロと異音がし──不快感がより大きなモノへと変化した。
……恐らくは、身体が悲鳴を上げているのだろう。
前方から放たれる、無数のエネルギー弾を──真正面から躱し、弾きながら相手の懐へと飛び込む。
『ッッッ!!?!??』
何を驚いているんだか……お前もした事だろ?
──あぁでも、お前は確か……あの時、オレの背後に回り込んでたっけな???
口角を上げ、そのまま影の身体を両の手に持った剣で……斬払う!
『ぐゥ……ッ!』
だが即座に、影も自身の細剣を突き出し──
何とかソレを──双剣で防いだものの、衝撃をモロに受け……オレは後方に弾き飛ばされた!
「──田中、岩をオレの後方に投げろ!」
「へ、ぇ?」
「はよしろッッッ!!!」
「お、おぅ!!!!! ゴーレム!」
中庭に飾ってある岩を引っこ抜き、ゴーレムはソレをオレの後方目掛けてぶん投げる!
大きさも申し分無い。よくやった!
心の中で、親父さんに手を合わせながら……投げられた岩を踏み台に、再び影に向かって突っ込む!!!
すまん親父さん!
あの岩……多分二度と使い物にならないわ!!!
後方で上がる岩の破砕音を聞きながら、そう思う。
『──いいなぁ…………』
あと悪魔。その目をやめろ。
次はお前を踏み台にしてやるから、やめろ。やめてってばッッッ!!!!!
だが、流石だなコレ。
視界がいつもより広い……デバフは凄まじいが、身体も軽いし、あの影とも渡り合える。
流石は『激化薬』パイセンだ!
…………うん? なんだ???
え? 激化薬ってどういう事だって……?
──? いや、言葉通りの意味だが???
修正中にさ、激化薬をゴックンとね? 美味しく頂いたのよ。オレ。
じゃなきゃ、あんなに早くバグ修正終わらんて。マジ無理っすよ、ねぇ〜〜〜?
──手に持った双剣を、影目掛けて投擲する!
『くゥッ!?』
パラサイトが遮断してくれているから痛みこそ無いが、身体の違和感的に色々とヤバそうだなぁ……。
──ギギィンッッッ!!!!!!!!
はぁ、救急車呼ぶ時間あるかな?
「パラサイト、大剣!」
そのまま、パラサイトを大剣に変化させ──双剣を弾いたばかりの影に斬り掛かる!
『──ぁアああァァッッッ!!!!!』
「おっと!」
上半身を大きく晒して、影が突き出す細剣を躱わし、
「──地上部隊! 総員、爆弾投擲よろしく!!!」
キメラが半泣きで伝えて回っている爆弾の出番だ!
…………いやぁ、キメラがそこまで誰かを助けたいと思ってくれていたとは──成長したな、キメラ。
ほろり──と、溢れそうになる涙を抑え、轟く轟音と純白の爆煙の中……薄氷に覆われた影を斬る!
『かハァッ!』
横一文字に、影の身体を斬払い……素早く後退し距離をとる!
──ステータスは…………。
確認すれば、影の残りHPは五分の一程度。
身体の所々からは、黒い靄が噴き出し続けている。
だが──漸く、見えた!
影の、その胸部……其処に、一際濃い闇がある。
アレが、影の核だと直感した。
その闇の塊が、鼓動する度に──
──周囲に霧散した靄が、再び影の鎧を形成する。
さすがに……大事なモノは、直ぐに再生させるか。
だが、構わない。
何度でも削るまでだ。
そして、影……お前が、外を繕うのに集中してくれれば尚、良い。
──その間に、内に潜んだ毒は……間違いなく、お前を蝕む事だろう。
頼んだぞ……イヴィル。
憑依には──
──憑依を持って、挑むまでだ!
■■■
ナんで……どうシテ…………?
先輩ハ、戦うンダろウ???
ぼロボろなのに──怪我もイっぱいシテ……
「──ドウしテ、先輩は……ソウまデして、戦ウの?」
誰モ、何も答えテクレない闇ノ中……
私ハ、僕は、一人呟ク。
『そんなの……あの人が助けたいと、そうしたいと決めたからだよ。そんな事も理解らないの?』
──ぇ?
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