商売
◆◆◆( ´Д`)y━~~◆◆◆
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(※タ●コではありません。煙が出る棒チョコです☆)
「ふぅー……千尋さん、いい加減決まりました?」
オレは半ば呆れたように訊くが、千尋さんは……。
「──待って! もうちょっとで決まりそうなのよ!! だから待って!!」
と、先程と全く同じ台詞を繰り返す。
「…………さっきからそればっかりですよ千尋さん。もういっその事、全部買っては如何ですか?」
今、オレは千尋さんに自身のモンスターを売りつけている。
「馬鹿言わないでよ!! この値段で全買いとか馬鹿でしょ!? というか、何でこんなに高いのよ!?」
ふむ……千尋さんの疑問も最もだ──では理由を説明しよう。
「──そりゃあ、『現実にモンスターが出てくるバグ』の所為ですね」
考えてみてほしい……このゲームではモンスターが現実に出てくるのだ。つまり、今オレはこの社長に化物を売っているのも同じではないだろうか?
「それは分かってるわよ! でも、所詮はデータじゃない!! このゲームの製作者である貴方なら幾らでも複製できるでしょ!?」
……おぉ、さすが千尋さん──良いところに目をつける。だが、残念!
「──それが出来ないから高く値段を設定してるんですよ」
「………………は??」
──普段であれば、このゲームの管理用端末を使う事で、モンスターを幾らでも複製する事が出来るハズなのだが、
「だから、モンスターのデータを複製する事が出来ないんですよ。何故か……」
……それが何故か出来ないのだ。
オレの管理用端末には、このゲームの『全て』のモンスターデータとアイテムデータが保存されていた。だが、
「試しにモンスターをオレのスマホへと移した瞬間、そのモンスターのデータ全てがオレの管理用端末から『消えた』んです」
──そう、つまり……モンスターを他人の端末に送ってしまったら、事実上そのモンスターは『オレの所有物』では無くなるという事だ。
いやはや、無双できると思ったら……人生とはそれほど甘くは無いらしい。
「なるほど……つまり、如月くんが『第三者』にモンスターを送ったら──『そのモンスターはその第三者のモノになる』って事ね?」
「そうですね。あまり認めたくない事ですけど」
オレの言葉に、千尋さんは少しの間唸っていたが……ふと、何かを閃いたように顔を上げる。
「……ねぇ、如月くん? 一つ質問なんだけど、その第三者に送ったモンスターを如月くんが再度入手する事自体が出来ないの?」
──おっと鋭い。ホント、この人……感だけは凄いんだよな。
「いえ、実を言えば『野生では出現する』ので……自力で入手する事は可能です。面倒臭いですけどね」
実を言えば……そうなのだ。再度モンスターを入手する事自体は出来る。
──オレが今回作ったのは俗に『位置ゲー』と呼ばれる類いのゲームであり……画面のマップ上にランダムで出現するモンスターを『捕獲』して仲間にしたり、『討伐』して自身のモンスターを成長させたりする戦闘型育成ゲームなのだ。
「つまり、野生なら普通に出てくると?」
「はい……モンスターのランクが『低い』ほど高確率で出てきます。まぁ、モンスターの中には『特殊な条件』や『合成限定』などでしか入手できないモノもいますけど──基本は野生で出ます」
……それと、この情報も無償で提供するとしよう。千尋さんなら普通に気付きそうだし。
「──それとですね、今のところ野生のモンスターは『現実には出現しない』みたいです」
「へ? それって……つまり『このゲームのプレイヤーが入手したモンスターだけが現実に現れる』ってこと?」
流石だ。話しが早くて助かる。
「はい。そのとおりです」
「……ふぅ〜ん?」
オレの言葉に、千尋さんは不敵に笑う。
──ふむ、コレは嫌な予感がするぞぅ?
「なぁ〜んだ、それならそうと早く言いなさいよ如月くん。『一番強いモンスター』はどの子なのかしら??」
……ッ!! やはり、そう来るか!!!
野生モンスターは『捕獲』する事が出来る。それなら、一番強いモンスターだけを買って、後は野生モンスターを『捕獲』すれば良いじゃない! ……って事だろ。
「さ、さぁ? どの子なんでしょう?? マジわかんねぇっスわ!!」
「……如月くん?」
「あ、コイツとかどうです? 高ランクですし、イケメンな人型モンスターですよ? 千尋さん、イケメン大好物でしたよね??」
「………………如月くぅ〜ん??」
「──ちッ! 『ランクL/ティアマト』……育て方次第ですが、ステータスも高く特殊能力を持つ最高ランクのモンスターです」
仕方が無い。ここは素直に答えておこう……あんまり、こういう所で時間を取られたくないし。
「……それに、育て方次第ですし……?(ぼそり)」
「え? 何か言った??」
「いいえ、何も言ってませんよ……千尋さん☆」
◆◆◆( ^∀^)ノ 毎度!!◆◆◆
「それではお買い上げ、ありがとうございます☆」
オレは営業スマイルを千尋さんに向け、言う。
……まぁ、この人相手に一匹売れただけでも良しとしよう。(←自分が使用するモンスターは全て確保済み)
「うぅ〜、楽をする為とは言え……なかなかに痛い出費だったわ」
そう千尋さんは嘆くが、何を言っているのやら。
「──う〜ん、モンスターの単純な額で言うと……カイザー佐藤さんほどでは無いですよ? あの人、高ランクのモンスターを山程買ってくれましたから」
いや、本当に! あの人、マジで神だから!!
「……ちょい待ち。え、なに? 佐藤にもモンスターを売ったの!?」
「そら『売って欲しい』って言われ──」
「──売ったのね!?」
「YES☆」
そりゃあ売るよ! よく言うじゃん『金で買えないモノは無い』って!! まさにソレだよ!!
「……ついでに訊いとくけど、他の馬鹿共には売ってないでしょうね?」
「売りました☆」
そりゃあもう! タンマリとね!! アイツらメッチャ金持ってたわ!!
「〜〜〜ッ、如月ぃいいいぃぃッッッ!!!」
おっと、ヤバい……千尋さんのガチギレだ!! 此処は早めにターゲットを変えるべし!!
「──待ってくださいよ千尋さん。オレにキレてる場合じゃないですよ!」
「ぁあん!? どういう事だテメェ??」
もう完全にヤの付く職業のソレだが、オレは落ち着いて千尋さんに告げる。
「──千尋さんがどのモンスターを買うかで悩んでた時に、オレ……一度トイ──お花摘みに行ったじゃないですか?」
「ぁあ、そうだったなぁ??」
「その時ついでに、カイザー佐藤さんに『やっぱ千尋さんの陣営に付きます』って送ったんですよ」
「ゔぉぅ!! それで??」
……すまんカイザー! オレにはやっぱこの人を売るなんて出来なかったんだ!(←保身のため)
「そしたら、カイザー佐藤さんから──こんなモノが」
オレはカイザーから送られてきていたメッセージを開ける。
◆◆◆メッセージ カイザー佐藤→如月◆◆◆
『──ふむ、それならば仕方が無い。他の「組織」や「結社」よりも先に、彼女を潰しておくとしよう。そうすれば、君も安心して我が陣営に来られるだろう??』
『それにしても、君も大変だね? あんな我儘な女の元では苦労するだろ?』
『私も昔から、あの女には迷惑ばかり掛けられているからね? 君の気持ちは分かるよ。大方、あの凶暴女に脅されでもしたのだろう。可哀想に……』
『そうだ、あの女を討ち倒す為に君も協力してくれないか? 勿論、報酬は弾ましてもらうよ?』
『先に我が愛娘「騎士」綾を君の元へ送り込もう』
『君も「綾」の事は良く知っているだろう? ぜひ、あの子と協力し……あの凶暴女に泣きっ面をかかせてやるといい』
◆◆◆終了◆◆◆
「──との事です! いやホント、カイザー佐藤さんマジ調子乗ってますよ!!」
華麗な掌返しを披露し、オレは千尋さんに媚びへつらう。
…………ん? 誇り?? なにそれ美味しいの???
「………………」
「──千尋さん? お〜い、聞いてますか??」
瞬間……、
「「「……佐ぁあああああぁぁぁ藤ぉぉおおおおおおおおぉぉぉッッッッッ!!!」」」
──と、千尋さんは般若のように顔を歪め、雄叫びを上げる!!!
「あんのハゲェッ!!! 今までどんだけ私に迷惑掛けてきたと思ってんだテメェごらぁ!!! 幹部にまで取り立ててやったっていうのにいい度胸じゃねぇかおぉん!!? その喧嘩買ってやらぁッ!!!」
……凄いな、人間って本気でキレるとこうなるのか。あ、ちなみにカイザー佐藤さんはハゲてないよ。あの人の為にも一応言っておくけど。
「ゔぉおい、如月ぃいいいッッッ!!!」
「ッ、はい! 何でしょう!?」
千尋さんの声に、オレは即座に返事をする!
「今から私の言う通りにメッセージを送れ! いいなぁ!?」
「はい! 千尋さんの御心のままに!!」
あ〜、うん……本当にゴメンね? 佐藤さん、綾ちゃん。骨は拾っとくから安心して逝ってくれ。
◆◆◆メッセージ 如月→カイザー佐藤◆◆◆
『──現在、千尋さんは絶賛油断中です☆』
『会社のフロントにも話しを通しておきましたんで、いつでもどうぞ☆』
『オレは綾ちゃん来るまで待機していますので……。それにしても、千尋さん油断してるなぁ(笑)』
『でも、千尋さんを潰すって……それ結構難しいと思いますよ?』
『千尋さんに脅されて、オレ、モンスターを大量に奪われたので(怒)。それなりに人数は必要だと思います』
『あ、それと……オレは千尋さんの陣営に付くとは言いましたが、千尋さんの為に戦うつもりは微塵もありませんのでご安心ください☆』
◆◆◆終了◆◆◆
「ふぅ、こんな感じでどうっスか? 千尋さん」
オレは送信したアレンジ済みのメッセージを千尋さんに見せる。
──いや、流石にね? いくら言う通りに送れって言われてもさ……あんな解読不能なメッセージは送れんでしょ。
「さっすが如月くん!! よくもまぁ、これだけ出鱈目な事を書けるわね!? 貴方、いまメチャクチャいい笑顔してるわよ!!」
……よし、どうやらオレへの怒りは解けたみたいだな? 無償で千尋さんに協力するのは嫌だが、千尋さんをブチギレさせても得なんて無いし──仕方が無い。
「では、オレはお客様をお迎えする準備をしてきますね」
「えぇ! 私もモンスターを召喚して『おもてなし』の準備をしておくわ!!」
オレと千尋さんは互いに不敵な笑みを浮かべると、それぞれが別々に『おもてなし』の準備を開始するのであった。
この度はご覧いただきありがとうございました。
面白かった、続きはよ! と、思われましたら是非ともブクマなどを宜しくお願いします!! 作者のオカメ脳がフル回転し──略!