天才
──『天才』……その言葉は嫌いだ。
全ての努力を、天からの才能なんて言葉で締め括るその言葉が……僕は大嫌いだ。
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「──いや、だから言ってるだろ? お前がオレに勝てないのは、オレが天才を超えた天才だからだって」
「天才超えた天才isなに?」
「フッ…………オレ」
違う……違う、違うッ!!!
「ッ、それなら僕だって言うよ! 何度だって言ってやる、先輩は天才なんかじゃ決して無い!!!」
そんな事、絶対に認めない!
──認めてたまるか!!!!!
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「いつも余裕そうな顔をしてるけど、陰で人一倍努力してるのを僕は知ってる!」
「──あー。確かに……」
「シッ! 久遠くん、シッ!!!」
「本人は余裕ぶってるパティーンですな!」
「…………いや、違うし。オレ、努力なんてs──」
『──ウチの主は努力できる子なんです!!!』
キメラ……お願いだから、ちょっと黙ろうか。
「テストだって何日も前からプリントや教科書で予習してるし、人に教えながら自分で確認だってしてる!」
「分かる! 先生、教え方めっちゃ上手だよな!」
「あらあら^ ^」
「まぁまぁ^ ^」
「違います! アレは暇だったからで!!!」
『ぐすッ…………あるじ……ッ!』
ホントにやめて! アレはマジで暇だっただけで、あんな簡単な問題に悩んでたから仕方なく──!?
「授業中は余裕ぶって僕達の前では居眠りしてるくせに、後でコッソリ復習プリント貰いに行ってるし!」
「先生……」
『──ん? 居眠り???』
やめてキメラ。その取り出したスマホはしまお? いったん、しまお? そんでお話ししよっか???
「ゲーム作りだって最初は全く分からなかったから、プログラムの作り方から技術部に訊きに行ってた!」
「毎日、毎日、倒れるまで数字と睨み合って……」
「テストプレイをしてる僕達の顔色を伺って、ゲームの改善点を調べ直して、少しでも良いゲームをって」
「……如月。アンタ──」
「あーでも、拙者達が境夜たんのゲームをテストプレイしてる間……境夜たん、ずっと顔を見てたでつね」
違いま〜す。それ多分、別の境夜たんでつ!
「何徹もして、分量間違えたコーヒー粉を水で練って固めたモノを羊羹だって言い張って食べたり!」
「理性無くして、ダンボール被って移動したり!」
「挙句、どうやってか天井にまで張り付いてたり!」
久保さんや……何故、今それを言うのかね!?
「──あ。あの奇行は前からなんすね!」
「舎弟にまで奇行言われてるわよ、如月」
「病院行った方が良いでござるよ、境夜たん」
『主、だからちゃんと寝て下さいとあれほど……!』
うん……もうホントにやめて? オレにもプライバシーはあるんだよ??? ──え、あるよな?!
「なのに、僕の為に……僕の所為で、自分を天才だって言い張って、演じ続けてる!」
………………。
「──自分の努力を自分で貶め続けて! 弱音も吐かずに耐え続けて……ぁ、ハハッ! アハハハハッッ!」
…………久保。
「ッ、ごめんなさい……ごめんなさい、先輩。僕のせいだ、僕が弱いから──だから、先輩はずっと……!」
あの日のこと、まだ気にしてたのか。
「──だけど安心して……もう、弱い僕とは『さよなら』するから。強くなるから…………ッ!」
「ッまて! お前まさか!??」
アレを使うつもりかッ──!!?!?
「さっすが先輩、察しが良いね──そう、僕のアプリの中には今、72柱全ての悪魔が登録されてる」
覚えているよね?
と、泣き笑いを浮かべ……久保は言葉を紡ぐ。
──ああ、覚えているとも。
隠し要素の一つだ。
72柱という強力な悪魔を全て入手した場合のみ顕現する……73柱目の悪魔。
その名を──『ミシャンドラ』
集められるワケ無いじゃん!? って、言ってたクセに……手段はどうあれ、集めたのか。
だが──その悪魔は……。
「特性は『憑依』。ゲーム内では、手持ちのモンスター一体を依代にして顕現するんだよね? でも──」
とある不具合により、管理者権限でロックしておいた筈だ。それを……
「──不具合でモンスターじゃなくて、人……つまりはプレイヤーを依代に顕現する。だよね、先輩?」
…………解いたのか。
ハッキングをした時に──オレに、勝つ為に。
「ッ! やめろ、久保!!!」
そもそも、お前は勘違いしてる。
──オレは、本当はもう…………ッ!
「ハハ! や〜だよ……先輩に勝たなきゃ、先輩は救われない。なら、僕は勝つ為に悪魔にでも魂を売るさ」
その言葉を最後に……久保の元へ、影とも闇ともつかないモノが群がり、一つに混ざり合ってゆく。
「社長、急ぎ綾ちゃん達を探して連れて来て下さい」
「──え?」
「早くする! 鈴木さん、今すぐアテナを召喚して魔法使用からの無敵付与。久遠も魔法使用、迎撃準備!」
ロックを強引に解いたと言うのなら、どんな不具合が発生していてもおかしくない。
なら、出来うる事は全てやる!
「パラサイト! モブ共から離れ、オレに寄生しろ! キメラは散開、状況を見つつ遊撃頼む!!!」
その上で──
──あの思い込み激しい後輩の頭に、鉄拳制裁をプレゼントからの説教だ!
覚悟しておけッ!!!!!
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