VS 悪魔(後編)
【──お前ら、少なからずオレに借りがあるよな?
記憶にある奴……はよ助けに来い!!!!!
記憶に無い奴……助けて下さい! (土下座)
……只今、悪魔からリアルで逃走中!
もう一度言う──変態からリアルで逃走中!!!
助けて下さいお願いします!!!!!
如月より 愛を込めて】
■■■同日/グラウンド■■■
「──い"や"ぁあァぁぁーーーーーッ!?!!?」
『お待ち下さいご主人様ぁぁーーーーーーーーん♡』
ぬぉおおおおおおッッッ!??!! 頑張れ、オレの足! 前へ! 少しでも前へ進むんだぁあああッ!!!
『──おっと如月選手、グラウンドの第一コーナーを左折し尚も突如現れた巨大な化物から逃走中!!!
皆様どうも! 機材があれば何処でも放送!!!
──放送部、部長です☆』
『…………特別ゲストの教頭です☆』
『ドローンカメラ提供の技術部です☆』
いや助けて!? 呑気に放送してないで助けて!!?
『いやー、マジで化物デカいっすね〜!』
『匿名希望のHちゃんが召喚したらしいですぞ?』
『──あ! いま、その匿名希望さんから追加情報が入りました!!! なになに…………
……キー様ごめーん!!!!!
いま、その変態を魔界にクーリングオフる為に魔法陣を消滅させてるからもうちょい頑張って!
あと、出来れば校舎付近に近付けさせないで!!!
──だ、そうです!!!
如月、ファイト! 100m12秒の実力見せてやれ! さて、如月選手──今のお気持ちは?』
小型プロペラの音と共に、カメラとマイクがセットされたドローンがオレの元へ飛んでくる!
「お前ら全員4ね! マジで呪ってやるからな!?」
……人の不幸を楽しみやがって! この屑共め!!
オレも楽しむ側に回りたかったよクソがッ!!!
『──おっとカメラに中指立てて、まだまだ余裕アピールだぁ!!! 流石は我らが魔王ですね!』
『彼には是非とも、逃げ切ってもらいたいですね』
『はい。でないと、次回から小説のタイトルが……
【突如召喚された悪魔にご主人様認定されたオレが魔界に異世界転移させられた件について】
…………とかに、成りかねないですからね!』
和気藹々と、そんな話をして盛り上がっている屑共め! 貴様ら、後でマジ覚えてろよ!?
あと、オレはそんな誘拐認めねぇッッッ!
──校舎付近に近付くなって事は、必然的に瓦礫戦法は使えないワケだから……時間を稼ぐには!
『おっと如月選手! 校門から外へ出たぁーーーッ!』
『ぁあーーーとッ!? コレは教頭の胃が逝くぞ!』
『ドローン部隊追跡! 並びに近隣住民の皆様へ避難勧告発令!!! 家や道路の修理は文化祭後、手の空いた生徒と首謀者共で執り行う! いいな!!?』
──教頭の怒声とも悲鳴とも取れる声をBGMに、オレは叫ぶ!
「ジャバウォック──この悪魔を『隔絶』しろ!」
◆◆◆
「──ゼェ、ハァッ……げほ」
ふぅ、ざまぁみろ! この変態めが!!!
このオレが、近隣住民の皆様にご迷惑をお掛けすると思うなよ!? 街中に、誰が化物連れて逃げるか!
悟られない様に、逃げたフリをし──相手が追ってきた所で、ジャバウォックの結界に閉じ込める。
え? ガチで逃げてただろって???
──そりゃお前、自分を追って変態が全力疾走してくるんだぞ? 走って距離くらい取るだろ?
捕まったら何されるか理解ったモンじゃないしな!
ん??? それなら最初からやれ?
…………それはそう!
まぁ、でも途中からだしね思い付いたの。
仕方無い仕方無い! それはそうと──
「──放送部、あと教頭と技術部……それと結局、誰も助けに来なかったなぁ? お前ら???」
ドローンに向けて、微笑む。
『『『──ぴッ!!!??』』』
……この怨み、晴らさでおくべきか?
「私、如月さん……今から貴方達をのろ──ッ!?」
──コッ! コンッッッ!
ッ、何だ? 空気が、震えて……!?
それに、この音は!!?
ゴッッッ! ガンッッッッッ!!!!!!!!
……まさか…………ッ!?!!?
空気が、空間が振動して──!?
──バキンッッッッッッッッ!!!!!
「ッ!? 来い──リンドブルムッ!!!」
蜘蛛の巣状に空間がヒビ割れる!
こりゃイカン! と、言う事で飛行モンスターを召喚し、その背に騎乗する!!!
──バキャァァアアアアアアンッッッッッ!!!
まるでガラスが割れる様な破砕音と共に、巨大な腕が、結界の向こう側より此方に現れる……!
『逃がさぬよ……ご主人様ぁあああああん♡♡♡』
そして、心臓を凍えさせる様な変態の声!
「リンドブルム! 飛翔しろ!!!」
──悪魔怖いッッッッッ!!!!!!!!
巨大な腕は、まるで這い出るようにバキバキとジャバウォックの結界を破壊し……外に出てくる!
腕、頭、胴体……と、やがてその全身が現れ、
『──空へ逃げるか……だが、その程度で我が野望、我が悲願、止められるとでも──?』
バサァッッッッッッッッ!!!!!
巨大な一対の蝙蝠の様な翼が、奴の胴体、その背から突如として現れ──大きく広がる。
そして、バサッバサッ──と、数回、羽ばたくと……奴のその巨体は、大空へと飛翔した。
……うん…………うん……ッ!
悪魔の執念怖いッッッッッ!!!!!!!!
◆◆◆
「たーーーすーーーけーーーてーーーーーッッ!!!」
──神様仏様森羅万象全てに願い奉る! どうか、どうかオレを助けて下さい!!!!!
今後、悪どい事は控えますッ!
金儲けも、なるべく控えますッッッ!!!!!
だから、だからッ──助けて下さい!!!!!
『ハァッ、ハァ……ご主人様ぁあああああん♡♡♡』
この、ド変態クソ悪魔から!!!!!
「──来んじゃねぇこのド変態クソ悪魔め! とっとと去れ!!! オレの前から永久に消えろカスッ!」
『はぅんッ──何という罵倒♡♡♡ もっと言って♡』
………………………………絶句。
無敵かコイツ!? 逃げても追ってきて、結界に封じても自力で出てきて、罵倒すれば喜ぶ。
──オレにこの変態をどうしろとッ!?!!?
『ピッガガッッピー……よっしゃ、ハッキング成功!
──聴こえるか、如月ッッッ!!?』
………………ふぇ?
眼下の街から、大音量で技術部の声が聴こえる。
『──いま、お前を助けに援軍が向かっている! もう少しで合流する筈だからそれまで耐えろ!!!
あと、悪い知らせだが……
──Hさんが魔法陣を消した。なのにその悪魔が消えないって事は、その悪魔は倒さないと──もしくは消滅させない限り消せないのかもしれん!』
……何ですと!!?!? Σ(°Д° )!?
もうそれ悪い知らせじゃなくて、実質死刑宣告じゃないですかヤダァーーーーーッ!!!
『おやぁ? 顔色が悪くなられた様ですが……どうかされましたかぁぁご主人様ぁ♡♡♡』
フシュルルッッッ──と、興奮した様な吐息を吐き、悪魔は言い迫る。
──が!
「破ぁああああああああああッッッーーーーー!!!」
突如──金色に輝く一線の極太レーザーが悪魔へとぶち当たり、その巨体を僅かに仰け反らす!
続いて、
「バハムート、混沌龍! あの悪魔にブレス!!!」
──高温故に、蒼白く染まった炎が瞬時に悪魔の巨大な身体を包み込む!
ぁ、あぁ……!
「久遠……あと、えっと──レーザー出す槍の人!」
「──東雲な!!!!!」
あーそうだった、そうだった。確かに、槍の君はそんな名前だったわ。うん。
久遠の混沌龍に騎乗し、槍を構える東雲くん。
そして、バハムートに騎乗する久遠。
──なんてこった、イケメンが過ぎるぞ二人とも! コレが、吊り橋効果と言うモノか!!!
『我を……舐めるなぁああああああああッ!!!!!』
瞬時に自身を包み込んでいた炎を吹き飛ばし、
『よくも、よくもご主人様と我の楽しい追いかけっこを邪魔してくれたなぁあああああああッッッ!』
と、変態がブチギレ状態で突っ込んで来る!!!!!
──すみません! オレは微塵も楽しくなかったんで寧ろ、邪魔してくれてありがとうなんですけどッ!?
「ッ!? オレの技が効かねぇだと!??」
「化物かよコイツ!!?」
「流石、変態は打たれ強いな……(諦)」
──だが! コレならどうだッ!?
怒りに任せて真っ直ぐ突っ込んでくる変態に、手に隠し持っていたモノを投げつける!
最終兵器──BOM!
皆様御存じ、敵を消滅させるアイテムである!
──本物の悪魔に効くかは不明だが、現実でも回復薬などが使えるのだ。それなら、可能性はある!
さぁ、そのまま突っ込んでこいや悪魔め!!!
『──ッ!?』
なッ……!!?
悪魔はBOMに衝突するそのほんの手前で、急に後ろへと後退する!
──標的を失い、力無く落下していくBOM。
「チッ! BOMを撃て、リンドブルム!!!」
このまま落下したBOMが誰かに当たって起動したら事なので、リンドブルムのブレスで消滅させる。
その光景に──悪魔は、その牙だらけの口を歪に歪めると、
『フハッ……フハハハハハハァァッッッ! 矢張り、アレは危険なモノだったようですねぇ、ご主人様♡』
空間すら振動させる程に、嗤う!
──自身の危機を察知でもしたか? それとも、未来予知の類い???
いや、未来予知ならば久遠や東雲の介入を事前に予知する筈だ……クソが…………!
『フフフッ! では、次は先程のアレにも注意しながら、其処の羽虫共を蹴散らすとしようか!!!』
再度、大きく翼を広げ──悪魔は向かってッ!?
「──させないよん♪」
「──遅くなってすみません、如月さん!」
レヴィアタンの頭部に乗り、綾ちゃんとヒナちゃん先輩が突っ込んでくる!
そのまま、ヒナちゃん先輩はバラバラと空中にお札をばら撒くと──呪文を唱え、
「悪いけど、閉じ込めさせてもらうよ!」
と、悪魔を囲うように鳥籠の様な檻を作り出す!
『──ぬぅ!?? まだ我とご主人様のランデブーを邪魔するか羽虫共がぁああああああああッッッ!』
口から黒炎を吐き出し、悪魔は檻を攻撃するが──
──瞬時に黒炎は檻へと吸収され、そして、
『なにッ……ッッッ、あんッ♡』
…………聞いて貰えば理解る通り、悪魔へと反射からの──悪魔さん大歓喜である。
コレはあれだ、マジで紛う事なき──(´H`)
『はぁ、ん♡ 我の攻撃を反射するのか……フゥ、フゥゥッ……何と、小癪な──しゅごい♡──小娘め!』
「ヒナちゃん先輩……」
「言わないで。ウチが一番不思議に思ってるから!」
檻の中で、喜びながらも攻撃を続ける悪魔。
「あれ、どうすんだよ?」
「魔法陣消しても、悪魔は消えなかったんすよね?」
「ですよね……? どうすれば???」
──悪魔は契約どうのと言っていたが、確かに、このままだとこの変態はずっと居座るワケだ。
難しい問題である。
あぁ、でも──。
「──その、ありがとうございました……わざわざ、来てくれて。正直、助かり──」
『──コレならばどうだ! くぅッ♡ で、ではコレとコレならば!? はぁんッッッ♡♡♡ 最・高♡』
………………おい。
今さ、オレが珍しく感謝を伝えようとしてたのに──なに、邪魔してくれてんだこの変態が!!!!!
「お前、マジでちょっと黙れ。あと自分の攻撃反射されて喜んでんじゃねぇよ……このド変態マゾ悪魔がッ!」
■■■覚・醒☆■■■
「──ちょっ!? キー様ッ!!?」
「あ。ごめん、つい!」
『──ド、変態……マゾ、悪魔…………? ふぅ、ふぅぅッッはぁあああああああああんん♡♡♡♡♡』
やっべ。変態を覚醒させちまった……。
『ご主人様♡ ご主人様ぁ♡♡ ご主人様ぁあああああああああああああああああああんんんッ♡♡♡』
悪魔の歓喜による大咆哮によって、ビリビリと周囲の空気が振動する!
「キー様ぁああああああああッッッ!!!!!」
「先生ぇええええええええええッッッ!!!!!」
「如月さぁあああああああああんッッッ!!!!!」
「何やってんだよアンタはぁあああッ!?!!?」
「ごめん、つい、我慢出来ず──テヘペロ!」
四人からの怒声+悪魔の歓喜により、大変、いま耳が痛いですッッッ!!!!!
そして最早、嵐の様な歓喜の咆哮の中……!
『申し訳ありませんご主人様ぁ♡ 直ぐに、直ぐにこのような檻など破壊してお側にぃいいいッ♡♡♡』
悪魔は、新たな変態を遂げていた。
──一対の翼は、三対へと変化し……その巨大な身体を更に巨大化させ、紫電を纏っている。
身体の所々から骨の様な棘まで生えて、控えめに言ってもメッチャ強そうに見える。変態だけど。
『こんなモノなど、ぬぅうううんッッッ!!!!!』
檻を形成している光の線を掴み、力づくで檻をこじ開けようとする悪魔。
光の線を掴んだ腕からはバチバチと放電音が上がり黒煙を上げているが、お構い無しにこじ開ける!
「うそッ!? 中から無理やり!??」
『ふッフハハハハハハッッッ! この程度の痛み、ご主人様の罵倒を思えば、ん♡ 屁でも無いわ!!!』
──そして、遂に……バリンッッッ!
光の檻は跡形も無く砕け散り、中からは悪魔が這い出てくる。
『フフフッ、さて、どうしてくれようか……?』
ヒナちゃん先輩達を一瞥し、悪魔は告げる。
…………はぁ。ここまでか。主にオレのせいで。
『ご主人様とのお楽しみを邪魔した報い、受けてもらうぞ羽虫共めがぁッッッ!』
悪魔に呼応する様に、紫電が迸る!!!
──ッ!
「待て!」
オレは声を張り上げる!
背に腹は変えられない。そして、何ならオレがあの変態を覚醒させちまった疑惑がある以上──
「──オレの負けだ! お前と契約させてほしい!」
ここまでお読み下さりありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ