悪魔召喚
■■■同日/技術室■■■
『──これで良かったのか、主(`・ω・´)キリッ』
「はいはい、お疲れさん。パラサイト」
白崎パイセンに寄生したパラサイトを労いつつも、奴が現れるまで待つ。
「ねぇ、ホントに来るの??? あの放送で?」
「うーん……流石に無理そうな気が──」
──パラサイトと合流し、奴を待つ事数分……。
久遠がそう、フラグを建設したと同時に……ズダダダダッ! と、何かが廊下を駆けてくる音が響く。
ふ、甘いな久遠。奴は、ヒナちゃん先輩はな!
「──白崎! アンタ漸く恋愛の素晴らしさに気付いたのね!? いいわ、朝まででも語り合いまs──ッ」
「「「──確保ぉおおおおおおおおッッッ!!!」」」
自分の欲望にクッッッソ正直な、欲望沼の主なんだよ!!! 奴は絶対に己の獲物を逃さねぇ!
──故に、白崎パイセンには申し訳ないが彼にはヒナちゃん先輩の餌、兼、獲物になってもらった!
許可? 本人は憶えて無いんだから不要だろ?
75日もすれば、皆んな忘れるって! な?
……と、いうワケでGO! バインドロープ!!!
本来はモンスターを一定時間拘束するゲームアイテムだが、相手はヒナちゃん先輩だ!
あの人は半ば別種のモンスターみてぇなモンだから、遠慮なく使わせてもらうッ!!!
「──ぬぅおぁああああああああッッッ!?!!?」
奇声とも悲鳴とも取れる咆哮を上げ、尚も拘束から逃れようと踠く奴を確認し、確信した!
「よし! 分身では無く、ちゃんと本体ですね!!!」
と──我らは、遂に元凶たる奴を捕える事に成功したのだ! ありがとう、白崎パイセン!
「新たな友との語らいに分身など不要! なのに酷いよキー様、白崎!!! ウチを騙したのッ!?」
──お、漢らしい! 流石はヒナちゃん先輩だ!
だが──
「──フッ、騙される方が愚かなんですよ!!! さてと、では教頭のトコに行きまちょうねぇ〜〜〜ッ!」
「むきーーーーーーーーッッッ!!!!!」
ふははは! 漸くこのクソ茶番も終わる!!!
オレは元の身体へと戻り、そして──例のケチャップによりムッキムキの肉体美を手に入れるのだ!
「ふははははッ! ぬぁ〜はっはっはぁ!!!」
失ったモノはあれど、それでも得たモノもある!
──オレは、筋肉と恋人になる!!!!!
『……おいキメラ。なんか、主おかしく無いか?』
『訊くな。色々あったんだ』
拘束済みのヒナちゃん先輩を立たせ、生徒指導室まで歩かせる。後、それだけで──オレの夢が叶うのだ!
──では、キリキリ歩いてもらおうかぁ!!?
■■■同日/RO・U・KA■■■
「〜〜〜♪」
「──うぅ、酷いよキー様、白崎! ウチ、信じてたのに……騙すなんて、乙女の純情を弄ぶなんて!」
ふははははッ!!! もっと泣け、喚け! 今のオレにはソレさえ讃美歌に聴こえるわ!!!!!
バインドロープをズ〜リズリと引き摺り、目指すは生徒指導室!
泣き落としに出たヒナちゃん先輩だが──
──普段が普段故に、廊下ですれ違う皆さんも大人しくこのド●ドナを見送っている。
ふははッ! 貴様に助けなど無いと言う事だ!!! ザマァねぇな、やっぱ日頃の行いは大事だわ。
「うぅ……呪ってやるぅ、祟ってやるぅ!」
はいはい、負け惜しみ負け惜しみ^ ^
『──ふむ? よくよく考えてみたら、オレはお前の描いた本好きだぞ? 絵も綺麗だったし』
「え?」
『いや、騙されたと言っていたから訂正しておこうと思ってな? 実際、語り合うのも楽しそうだ』
──え?
お前……マジか?
確かに、ヒナちゃん先輩は絵が上手い。それは認める! だが……うん。てかお前…………
「お前、読んだのか? ヒナちゃん先輩の作品を?」
『? あぁ。適当な作品の話題をして誘き出せ、と主は言っていたが……当の作品を全く知らなかったからな』
──だから読みに行った!
と、胸を張るパラサイト。
なるほど、予習がてらヒナちゃん先輩の本を読んでたから作戦が遅れてたワケか。納得したわ。
「あー、それは悪かったな。パラサイト?」
『いや、中々に面白かったぞ? キメラがコッソリ書いては隠している小説も描いてほしいくらいだ』
『──は?』
いきなり矛先を向けられた挙句、多分、自身の秘密がバラされた事にキメラは声を漏らす。
『……ぇ……は…ぁ…………え???』
そして、みるみる顔が赤く──
『──ッ〜〜〜貴様ぁ! どれだ!? いったいどれを読んだ!!? 正直に言え!!!!!」
『? お前が文字の練習用と表紙に書いてるノートのNo.1〜No.74までだが? まだあるのか?』
『全部じゃないかッッッ!!!??』
……あ〜、そう言えば最近買い溜めてた筈のノートの減りがだいぶ早かったんだよな?
キメラ、お前だったのか。
『──違います!!! そんなノート知りません!』
叫ぶキメラ。
だが──パラサイトは止まらない。
『嘘をつくな。主人公に自身を投影して、ヒロインの女には主を投影して書いてるだろうが?』
「──あー、自己投影は初めての人がやりがちだから気を付けた方が良いよ?」
『だから違う! そんな小説知らん!!!』
キメラ…………お前、マジかぁ。
『だが、ヒロインに主を投影するのは止めた方が良いと思うぞ? どう頑張ってもゲロインにしかならん』
『──は? そのクソさが良いんだろうが!?』
「よし……今日のお前らの晩メシは殺虫剤な!」
誰がゲロインだ、誰が!
あとノートの件も、キメラのお小遣いから引いておきますからね!!! まったく失礼な奴らめ( *`ω´)
『待て、主。その殺虫剤はガスのヤツか?』
「は??? いや、まだ考えてなかったが……何だ? 何かあるのか?」
『──ッ、待てパラサイト!?』
『出来れば、固形タイプにしてほしい。じゃないと、キメラが屋根裏に匿ってる虫達が全滅してしまう』
………………は?????
◆◆◆side:ヒナちゃん先輩◆◆◆
──あれ? これ、チャンスなんじゃ???
「……キメラ? お前、またやったのか???」
『やってません! 虫なんて知りません!!!!!』
『嘘だな。この間、ゴキ美とゴキ男の挙式をあげたばかりだろう? 今は卵持ちだ』
ッ、何とか! 指先だけでも!!!
「久遠、急ぎで殺虫剤のセールやってる所を調べてくれ。第二次虫戦争を始めるぞ!」
「うっす!」
この、注意がウチから逸れている内に!!!
『──やめて下さい主! 屋根裏にはアシダカ軍曹もいるんですよ!?』
『ああ、それにスズメバチの姉貴も居る!』
くぅ、あとッ! もうちょい!!!
「ますます放置できるか!!!」
「オレもやるっすよ先生!」
っ、よし! 動いた!!!
魔法陣はもう展開してる!
──後は、供物を捧げれば!!!
人差し指を曲げ、その先に力を込める!
…………ブツッ!
瞬間、親指の腹から少しばかりの痛みが駆ける!
けど、コレで!!!!!
「──我が願いに応え、魔界より出でよ! 偉大なる名を冠する悪魔よ!!!」
声の限り叫ぶ!!!
カッ! と、ウチの呼び声に呼応し溢れ出た光が視界を燃やす!!!
……アハッ! まだ、終わらせないよ!!! キー様に教頭──そして皆んな! さぁ、刮目せよ!!!
ここまでお読み下さりありがとうございます! 宜しければ是非ともブクマなどをお願いします(゜∀゜)ノシ