VS AI(後編)
■■■同日/技術室■■■
──諸君、一つ考えてみてほしい。
先日まで推しだった、純情無垢な可愛い子が……急に『尻』とか言い出したら、貴方は耐えられるだろうか?
言葉はやや乱暴になり、行動にも迷いが無い。
……いや、寧ろグイグイ来る。
それは果たして──今まで通りの推しだと、声高々に言えるのだろうか???
「……ひゅッ…………ひゅ……かはッッッ!」
『主ぃいいいいいいいいッッッ!!!??』
「先生ぇええええええええッッッ!?!!?」
「──ぇッ!? お、おいアンタ大丈夫かよ!??」
「来ちゃダメよ綾ちゃん! コイツは多分、重度の解釈違いによって何やかんやでこうなってるの!!!」
社長……貴様、なぜ理解る?????
「──は? 重度の解釈違い???」
…………やめて! そんなガチで分からなそうな声で、不思議そうな目でアタイを見ないでッ(/ω\ )
『推シガ居レバ、誰シモガ通ル道デス!』
「ゲームキャラとかでもあるのよね……過激なファン同士が揉めてたり、クレーム出してきたり。はぁ」
──あー、あるある。イベントやると、『このキャラはこういう事は言わないと思います!』って。
よくクレーム来てたなぁ……。
確かに……この解釈違い病は、今のオレの異常(目眩・息切れ・吐血…etc)にもピッタリ合うな!
あれ? と、すると──
──オレは、もしや綾ちゃん過激派だった……?
「この病はね一喜一憂で直ぐに治るモノじゃないの! だから、貴女はアナタの成すべき事を成しなさい!」
……カッケェ〜、社長かっけぇ〜〜〜!!!
オレを抱き上げているこの素晴らしい筋肉も相まって、ヤバい──新しい推しかもしれん!
「──ごばッッッ!!!!!!!!」
不味い……この解釈違い病は、新たな推しの出現と相性が良いのだ! コレは身が保たん!!!
『主…………相手は、あの社長ですよ?』
──いやそうなんだけどさキメラ!!! この素晴らしい筋肉とあの言葉は結構刺さるんだって!
んで、一度刺さると簡単には抜けないんだってば!
◆◆◆
『デハ、佐藤 綾サン。此方ノ席ヘオ掛ケ下サイ』
「……ああ」
此方を気にしながらも、堂々と綾ちゃんは席へ座る。
『アノ、先ニ一ツ訊カセテイタダキマスガ──』
「……? なんだ??」
『──貴女ハ、恋愛事ヲチャント御存ジノ方デスカ?』
あ、AIさん……トラウマになってる。
AIのその問いに、
「あぁ、それなら問題無い。何なら、絶賛片思い中の女子中学生だよ……オレは」
此方へ微笑みながら、綾ちゃんは言い放つ!
「──カハッッッ!!!!!!!!」
『「──主ぃ/先生ぇ!?!!?」』
「──綾ちゃん!!? お願いだから手加減してやって、じゃないとコイツの身が保たないわ!」
『アッ──ソ、ソレハ失礼シマシタ! デハ、質問ノ方ヲ始メサセテイタダキマス!!!』
…………ん? 気の所為か……???
いま、AIが嗤ったような気が──?
『Q:貴女ノ好ミノタイプヲ教エテ下サイ』
「──一見すると腹黒だし金に汚い人に見えるけど、実際はお人好しの部分もあって頑張り屋で……それで、人に頼る事を恥ずかしがってる度の過ぎた強がりだ」
………………え? 誰、それ???
「良かったわね、如月?」
「おい佐藤、頼りになるってのも付けとけよ!」
『──見る目は、あるようだな』
え? なに、お前らの知ってる奴なの???
あと、何が良いんだ社長……これオレ、フラれた? え? さっきの微笑みは??? ファンサ?
『…………主、マジですか?』
「え?」
何が??? 何でそんなジト目でオレを見てるんだキメラ? オレ、何かした??
『──ホホゥ、オ熱イデスネ……!』
「あ? 恋愛ってそういうモノだろ?」
『フフフッ、確カニ。楽シクナッテ来マシタ!』
盛り上がってるトコすみません。オレは楽しく無くなって来たんですけど退出しても良いですかね!?
──フラれた上に惚気話を聴く趣味は無いんで!
もうお家に帰っても良いですか!!?
『──主。マジですか?????』
だから! 何が!!!??
『Q:ソノ人ノ好マシイ所ヲ教エテ下サイ』
「──さっきも言ったが、お人好しで頑張り屋なトコだ。あと、頼りになるし……あ、でも変な所で抜けてるトコも可愛いと思っ──(限・界☆)」
嫌だぁーーーーーーーーッッッ!!!!!
聴きたくないぃーーーッ好きだった人間の惚気話聞かされるとかコレ何て拷問よ!!? マジ無理勘弁してぇええええええええッッッッッ!!!
『…………主……マジですか???』
◆◆◆
「──世界マジ滅べ_:(´ཀ`」 ∠):」
かぁ〜〜〜、ペッ!!!!!
あーはいはい、惚気話ご馳走様でした幸せになりやがれ畜生め!
永遠に続く惚気話……ニタニタしているAI。なに笑てんねん! あ"?
「あ"ぁーーー気ぃ悪ッ! 社長、今度奢るんで飲みに行きません? 久遠とキメラは強制参加な☆」
「──アンタ、マジで言ってんの? まぁ、行っても良いけど、アンタ達、酒はダメだからね?」
「うえッ!? ま、マジっすか!??」
『主、正気ですか???』
「──だから何が?????」
そう答えた瞬間──何故オレは、社長のみならずキメラや久遠から信じられないモノでも見たような顔をされたのだろう?
……オレだって奢る時くらいあるぞ?
『フム──結果ガ出マシタ!』
AIの声に、ビクッとオレの肩が揺れる。
──はぁ〜、嫌だなぁ。聴きたくねぇなぁ。
だってあんな凄まじい惚気話の後だぞ?
──オレ、フラれるの確定みたいなモンだし……綾ちゃんにそこまで好きな奴が居たとか知らなかった。
ま、オレ……まだ告ってすら無いんだけどね☆
逆に良かったよ、玉砕するのが理解って。
こんな巫山戯た茶番で発覚するとかちょっとアレだけど、人生の先輩としてね……潔く、祝福しようか。
『貴女ハ……ソノ方トハ上手ク行キマセ──ガッ!?』
AIの穢らわしい言葉が、途中で止まる。
というか、オレのアイアンクローがモロに入ったらしくAIの頭部が宙へ飛んだ。
「──おい如月ッッッ!?!!?」
ずっと様子見に徹していた技術部が声を上げる。
まぁ、自信作を壊されたらな。キレるか。うん、まぁそうだろうな?
後で幾ら請求される事やら。はぁ、怖いなぁ。
「ん?」
「──ひッ!?」
…………? どした???
そんな悲鳴みたいな声あげて?
寧ろ、請求書の事を考えると──悲鳴をあげたいのはオレの方なんだけどなぁ……。
『──ァ、ガガッピ……ナ、何ガ……?』
硬い金属音と共に、床に落ちた鉄屑は未だに言葉を発している。
お、まだ話せるのか。流石は技術部の最高駄作。
頑丈だなー。
「──おいAI。ちょっと今からオレと二人っきりでお話しよっか?」
AIの頭部を鷲掴み、技術室の扉へと手をかける。
『ナンデスカ貴方ハ!? 離シテ下サイ! 離ッ──』
「──黙れ」
『──ッ!』
何だ、ちゃんと話しが理解るじゃないか。
「そうそう。そうやって静かに良い子にしててねぇ〜、じゃないと……解体しちゃうぞ♡」
『ッッッ!!!??』
ガラガラッ──と、扉がやけに大きな音を立てて開く。ははッ、話し合いが楽しみだなぁ〜。
──廊下に足を踏み出した瞬間……ふと、ある事を思い出した。
足を止め、オレは背後を振り返ると──
「──綾ちゃん。綾ちゃんは、その人ときっと上手くいく……何ならオレが保証しても良い。だから、どうかこの先も、その人とずっと幸せにね」
そう、AIに代わり祝福を贈った……。
■■■
──【如月退出中】──
「……嘘でしょ? アイツ、真正面から好きだって告白されてキスまでされてるのに──嘘でしょ!?」
「…………(°-° ) 」
「──虫ちゃん、アナタちょっと今からでも如月の所に行って訂正して来なさいよ。お付きでしょ?」
『無茶を言うな! 主は完全に思い違いをしているのだぞ!? そんな所に行って訂正などしてみろ私の首が飛ばされる事になる!!! 舎弟、お前が行け!』
「いや無理だって!? 女社長、頼みます!」
「──私に、死ねって言ってるの? 久遠くん」
「──あんなガチ切れした如月、初めて見た」
「AIどうするよ? 壊されたけど???」
「お前、アイツに請求書送れる自信ある?」
「ハッハッハッ! ご冗談を──無理に決まってんだろふざけんな。オレはまだ未来ある若者なんだよ!」
「オレだってそうだよ!!!」
「でもさ、あのAIにあんなプログラムあったっけ?」
「あー、恋愛診断?」
「それ。オレは記憶にねぇぞ」
「オレもだ。どうなってんだ???」
「……勝手に付け足された?」
「誰に?」
「「「──さぁ?????」」」
「………………ぇ…如、月さん???(°-° )???」
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