VS…? マンドラゴラ(後編)
■■■同日/温室内■■■
………………。
「なぁ、如月……コレで良かったのか?」
【訊くな。オレにも分からん】
『(…………普通に失敗じゃね?)』
──オレ達の眼前にこんもりと聳える土の山。そこから頭部だけ出たマンちゃんが未だに奇声を放っている。
【コチラ、大平だが……やはり科学部は何処にも居ない。ホントにまだ此処に居るのかい?】
【オレに訊かれても困ります】
……なぜ皆、オレに訊いてくるんだ?
【一先ず、撤退します? もう土も有りませんし……】
【そうだね……一度退いて、改めて園芸部の子達に話しを聞こうか。あの植物も未だ煩いし】
「──はぁ!? 撤退って失敗したのかよ!!? オレとゴーレムの努力はいったいどうな──ッ」
「パラサイト」
『(はいよぉ。坊ちゃん静かにしようぜ^ ^)』
再度、地面に沈んだアホを引き摺り……オレ達(ゴーレム以外)は温室を後にした。
■■■同日/温室前■■■
「──ちょっと部長さんどうなっていますの!? お宅の植物さん、全っ然泣き止みませんことよ!!?」
ストレスか、ちょっと鬱陶しい隣のB──ゲホン! 隣のおば様口調でそう問うてみるが……。
「あれぇ? おかしいですね???」
「──すね。寒さでグズってるワケじゃ無い、と?」
「でも、他に理由なんてあります?」
と、園芸部の方々も難しい顔で話し合っている。
「それに、温室内を隈なく探してみたが何処にも科学部が居な──」
「──あの糞共はどうでも良いです! いま大事なのは何故マンちゃんがグズっているか、という事です!」
「…………ぇえ……?」
諦めろ大平、園芸部にとって大切なのは植物>>>>>>>>>>科学部への憎悪、だから。
何言っても無意味d──
「──科学部の奴ら、あの植物に食われたんじゃね?」
だ……っえ?
オレは視線を田中へと向ける。
……呑気に鼻をホジホジしてるこの男、いま、何と言ったんだ? ん???
「田中……repeat after me」
「──え? り、りぴーとあふたみー???」
「違う! 植物うんたら言ってた方!!!」
「──ぇ? いや、だから科学部の奴ら……あの植物に食われたんじゃないかって…………」
ここまで捜索して見つけられないとか、ありえなくね? ……と、田中は唇を尖らせて言う。
──Σ(°Д° )──ッ!?
ッ、確かに……失念していた!
オレは、部長さんの方へと向き直り……真面目な顔で訊く。クソ、まずコレから訊くべきだった!
田中に教えられたみたいで癪だが、仕方ない──
「──お宅の植物、人を食うタイプだったりします?」
■■■同日/温室内■■■
【田中……準備は良いか?】
「むごぁーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」
(良いワケあるかぁーーーーーーッッッ!)
ゴーレムに田中を担いでもらい、オレは今──土の山の頂上、マンちゃんの頭部に居る。
──あの問いをした後、園芸部の奴らの様子が明らかに変わったのだ。
尋常じゃないくらい目が泳いでいたり!
滝のような汗をダラダラと額から流していたり!
部長に至っては──
「そ、そそそそんな事はあありままませんよ? ち、ちょっと指をか、噛んできたりしたて、程度で……」
──と、立ったままバイブレーションしていた。
そう言えば、科学部を植物の餌にしてやる。とも言ってましたよね? 貴女。
と、ジト目で問えば……
「そ、それならマンちゃんが科学部を食べたって証拠はあるんですか!? 無いでしょう!!?」
……そう、言われてしまったのだ。
確かに証拠が無い。
そして、碌な証拠も無いのに人を疑っちゃいけない。常識だ。
それはそうと──世の中には言い出しっぺの法則と言うモノがあるのを、皆様はご存知だろうか?
この場合……園芸部のマンちゃんが、科学部を食べたんじゃないかと言い出した奴。
それが言い出しっぺ。な、ワケだ──なぁ、田中?
後は、言わなくても理解るだろう?
【大平さん、そっちはどう?】
【縄は問題無いが……ホントにやるのかい?】
【はい! 大丈夫ですよ、人を餌にした釣りみたいなもんですよ! それとも、餌、代わります?】
【え、遠慮しておくよ……】
「むごぉーーーーーーーーーッッッッッ!!?」
(見捨てられたーーーーーーーーッッッ!!?)
「──さてパラサイト、中で科学部を見つけたら……分かるな?」
『(フッ、世界一の悲鳴を轟かせてやるよ^ ^)』
──よしよし、分かってるな。
では……オレのストレス発散9割の実験、兼、釣りをこれより開始する!
頼んだぜ、田中!!!
ははッ、ビチビチして活きが良いなぁ!
「よし! 投げ入れろ、ゴーレム!!!」
「もごぉーーーーーーーーッッッッッ!?!!?」
(やめろ糞野郎めぇーーーーーッ!?!!?)
◆◆◆( ´Д`)y━ ◆◆◆
「──部長さん、コレはどういう事カナ?」
釣りあげた戦利品達を指差し、問う。
「お宅の植物の腹の中から、コイツら出てきたワケやけど──言い訳ありまっか?」
「──いやぁ〜、こんなモノ食べたらそりゃグズりますよねぇ? 出してくれてありがとうございました〜!」
今はグッスリと寝しているマンちゃんを眺めながら、部長さんは言う。
そりゃもう、開き直った様な素晴らしい笑顔で!
「そりゃぁ良うございましたな〜、じゃあ、ワシちょっと教頭に連絡をせなあきまへんので──」
「──要求は何ですか〜?」
………………ふぅ、話しが早くて助かる。
「除染効果のある新種植物のデータ、あと、オレの好奇心を満たす為にマンちゃんのデータ下さい」
「──へ? それだけですか???」
それだけって……結構要求してるんだが?
「お金とか、現ナマとか、金一封とかは……?」
「は? いや、この場合データの方が価値あるので要りませんけど???」
──まぁ、くれると言うのなら貰うがな!
「へぇ、そうなんですか……あ、じゃあ持って来ますね! なので、くれぐれも教頭には」
「フッ、この件は墓まで持って行くのでご安心を」
固く握手を交わし、部長さんはデータを取りに行った。
──さて、オレの方は……。
◆◆◆
「……ぅ、ぐすッ! ひっく……」
「今回ばかりは同情するよ。よしよし」
お、居た居た! 温室の隅に蹲って何してんだお前ら??? アリ観察?
「よぉ、今回はご苦労さん!」
と、上機嫌で話し掛けると──
「──シャーーーーーーーッッッ! 来んじゃねぇこの人でなしの糞野郎が!!!!! テメェとは絶交だ!」
と……田中が威嚇してくる。
──あらあら、困ったわね^ ^
「そっか。今回の礼に肉の食い放題でも奢ってやろうかと思ったんだが、絶交か……なら、別の奴さそ──」
「──マジで!? いつ何処で、何時集合!??」
フッwww おま、早すぎるだろw
「ぶふッw でも、絶交するんだろ?」
「はぁ!? するワケ無いだろ、オレ達ズッ友!!!」
「そ、そうか──ズッ友か」
「おう! だから肉!!!」
「わ、分かった。日時決まったら連絡するわ」
「ψ(`∇´)ψ」
──コイツ、大丈夫か???
よく今まで誘拐とかされずに生きてこれたな?
お前さ、大平の顔見てみろよ? 今すげぇ顔してるから、あの人。
「──大平さんも来ます? 奢りますよ?」
「いや、遠慮しておくよ。学生に奢られるのは大人としてどうかと……」
「何を今更! 変な組織つくって世界征服企んでる時点で大人としてちょっとアレじゃないっスか!!!」
そう笑いながら言い放ったオレは、気付かなかった。
──正論って、何よりも鋭い凶器だと言う事を。
正論という刃によって、夢が砕け散った大人が一人……大いなる地面にKissをした。
◆◆◆
「お待たせしました〜って、あら? 馬のお兄さんはどうかされたんですか???」
「──お気になさらず。大人としての誇りを捨てきれなかった奴が自滅しただけですので」
夢と誇りの両立は難しい……ハッキリ分かんだね!
「それで、データは?」
「あぁ、コレです。はい、どうぞ!」
渡された紙の束をペラペラとめくっていくが……
「? あの、コレ……マンちゃんのデータしかありませんけど?」
マンちゃんの育て方とか、その注意点とか──マンちゃん関連ばかりなのだが?
新種の除染植物のデータは……?
「はい! ふふ、何を隠そうマンちゃんこそが除染効果を持つ新種の植物なのですよ!!! 凄いでしょう!」
………………ゑ?????
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