VS…? マンドラゴラ(中編)
■■■同日/温室前■■■
「──科学部が居ない?」
オレの問いに、田中と大平、あと園芸部の皆様は大きく頷く。
「それはいったいどういう……?」
温室の内部で倒れていた奴らは全員助けた筈だ。
……ならば、可能性としてありそうなのは──
「──逃げた……か?」
全員が昏倒している隙に逃げた可能性は大いにあり得る。クソが、もしそうなら仕事が増えた!
「あの……それは多分無いかと…………」
心の中で中指立てて嘆いていると、あの人は──たしか園芸部の部長さんか? が、手をあげて答える。
「あの糞共、私より先に倒れてましたし……」
柔和なお顔を憎悪に染め、ギリリッと歯軋りしながらド低音な声でお話しを続けられる様なので静聴!
──というか、この人……「糞共」とか言うんだ。
いつもニコニコと花や木の世話してるから穏やかな人だとばかり思ってたわ。
「しかもですよ!? 私の可愛いマンちゃんに変な物掛けやがって……見つけ出して植物達の餌にしてやる」
「まったくっスよ、部長!」
「やってやりましょう!!!」
「「「オーーーーーーーーッッッ!!!!!」」」
と、意気投合する園芸部……怖ッ。
だが──その、盛り上がっている所……大変に恐縮なのだが…………。
「あの、マンちゃんとは……温室の中央に居た、あの奇声上げてるデカい植物の事ですよね? 多分」
と、一応! ワンチャンあるかもなので訊いてみる。
が──
「──はい! 元々は30センチくらいの小さなマンドラゴラだったんですけどあの糞共に変な物を掛けられて大きくなっちゃったみたいで! ふふ、可愛いですよね!!! それだけならまだ良かったんですけど、ビックリしちゃったのか泣き止まなくてホントあの屑共、人の可愛い子に何してくれてんだぶっ●すぞカスがよって感じですよまったく!」
はい確定どうも、やっぱこの世は地獄だわ。
ニコニコ、プンプンと話す園芸部の部長に……オレは今から酷な発言をしなきゃならない。
「そのですね、マンちゃんを駆j──」
「──は? すみません、よく聴こえません」
「……だからマンちゃんを駆──」
「──あら、耳がよく聴こえませんどうしましょう?」
なるほど。意地でも認めんぞと言う事か。
「はぁ……仕方無いか。教頭にはご自分で連絡して許可をもぎ取って下さいね?」
「ふふ、御免なさいね。それと、ありがとう」
「どういたしまして。ま、あの植物も被害者?だと考えると、ねぇ? 仕方ないかなと」
あと、普段怒らない人を怒らせるのは怖いので。恨まれる事も出来れば避けたい。
「──なので無傷で保護する為にも情報提供をお願いします。あの子?はどうすれば大人しくなるんですか?」
「ん〜、そうねぇ……あっ──!」
◆◆◆
「──じゃ、後は作戦通りに。連絡はスマホで」
「はぁ。土いじりをする事になるかもしれないのか」
「あれあれッ!? 連絡はプラカードじゃなくて良いのか如月ぃ、ぷぷッ!」
「──パラサイト、そのアホの痛覚を数分ごとにぶっ叩いて地獄を見せてやれ。加減はいらん!」
「は!? いや唯の冗談で──い"だぁッッッ!!!」
『(あーぁ、要らない事言うから……)』
「いい加減学びたまえよ」
絶叫し床をのたうつアホの首根っこを掴み、温室の扉を開けて中に入る。
【では、オレとアホはマンちゃんの対処をしますので】
【ああ、僕はスレイプニルの機動をいかして科学部を捜索する。埋まっていなければ良いが】
【はい、お願いします。ですが、その前に】
スレイプニルにもパラサイトを寄生させておく。
【コレは……?】
【奇声対策です。あと、目は多い方が良いかと】
【うーん……美しく無いが、仕方ないか】
『(あ"……?)』
──渋々了承すると、大平はスレイプニルに騎乗し飛んで行く。
【さてと……おい、仕事するぞ】
「──その前に! この気持ち悪いのに攻撃させるの止めさせてッッッ!!!!!」
『(^^#)』
自分の耳を指差した後、苦悶の表情で地面を転がり回る田中。……何してんだ、お前w?
【はいはい、仕事が終わったらな】
「!?」
うん。面白いからそんな「嘘やろ!?」みたいな顔でオレを見ないで? 面白いから。
【ほら、サッサとゴーレム召喚しろ】
嘲笑いながら、田中にメッセージを送ると……信じられないモノでも見たような顔で、ゴーレムを召喚する。
【オレは土をありったけ持ってくるから、お前はゴーレムを使ってソレをマンドラゴラに掛けてってくれ】
「ぅう……わかった」
園芸部の部長さん曰く──もしかすると、マンちゃんは寒いからグズっているのでは……?
──との事だ。普段は土の中に居るから埋めれば大人しくなるかも! とも言っていた。
そういや、某魔法学校でも寒くないようにって土掛けてたな? やっぱアレって正しかったんだ!
と、某魔法学校への理解と尊敬を心に刻み──
──作戦『マンちゃんおやすみdeath』の開始を此処に宣言する!
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