VS 粘菌生物(前編)
■■■同日/科学実験室前■■■
前略──お家に帰りたい。
『──主、どうしましょうか?』
「一先ず、オレの縄を解くって選択肢はある?」
オレ、縛られたままあの化物と対峙させられるの? HA・HA・HA☆ 嘘やろ???
綾ちゃんに実験室の扉を少し開けてもらい、再度、内部を確認する。
『げぱぁああああああああッッッ!!!!!』
「…………うん無理☆ なにあれ???」
オレのモンスターにもスライムは居るけど、アレは何というか……レベルが違う。
──実験室の机やら椅子、その他薬品等を全て体内に取り込み、ズリュズリュと徘徊する粘菌生物。
その大きさは見上げる程に巨大だった。
あんなの、縛られたままのオレにどうせぇちゅうねんッ! いや、縛られてなくともキツいわ!!!
『え〜? でも主、縄を解いたら逃げるでしょ?』
「──勿論さ☆」
(──逃げないって! もっと主を信用して!)
………………あ。
『即答ありがとうございます。このままで頑張りましょっか、主♡』
「嫌です、主は頑張りたくありません」
「──なぁ、二人とも」
キメラと程度の低い言い争いをしていると、ふと、綾ちゃんが室内を覗き込んだまま声を掛けてくる。
『なんだ?』
「どうしたの、綾ちゃん?」
そう言葉を返すと、
「いや、あの奥の扉に人が……」
と、科学準備室の扉を指差す。
──ん〜? どれどれ???
……うわ、マジで居るやん。それも複数。
しかも、何か言ってる?
パクパクと口を動かしているので、読唇術にて何と言ってるのか読む。
「えっと──た……す…け……て……?」
『助けて……ですか?』
「そもそも、何であんな所に居るんだ?」
──んーーー? アイツら、まさか科学部か?
いやでも、それならどうして助けを求めてくる? 自分達から入ったんだろうに……。
はぁ、確認するか──?
「心底嫌だけど、オレ、ちょっとアイツらのトコに行って事情を訊いてくるわ」
『? どうやってあの粘菌生物を突破するんです?』
「危ねぇ事するんじゃねぇよな!?」
肩を鷲掴みながら、綾ちゃんが焦った様に問うてくるが──しないしない。
「ジャバウォック、頼むわ──」
と、いつも通りの万能空間を展開してもらう。
この万能空間は、モンスターとプレイヤーは通すが……それ以外は弾かれて空間内には入って来れない。
──まぁ、つまりは……、
「粘菌生物が……消えた?」
『おぉ、さすあるですね!』
「あ、ちゃんと消えたか。内心、ドヤ顔で展開しといて粘菌生物消えてなかったらどうしようかと思ったわ」
と、心の声が思わずポロるが……関係ないね! と、車椅子から降りると室内へと入る。
『あれ!? 主、何でッ!!?』
「縄抜けかよ……やっぱ凄ぇなアンタは!」
「──フハハハッ! 残念だったな虫よ、この脱獄王その気になれば茶番の横で縄抜けなど朝飯前よ!!!」
■■■同日/科学準備室■■■
「ジャバウォック、空間解除」
「──ぇ? えッッッ!?!!?」
「おまッ、いつの間に!?」
「あれ!?? 鍵が……開いてる!?」
と、とても良い反応をしてくれる科学部?共。
ちな、鍵は掛かってたのでピッキングしました。この程度、針金一本あれば余裕よ。
「一先ず訊くが……お前ら、科学部だよな?」
会って早々……そう訊ねると、
「──え? うん」
「せやで」
「あ。ち、違うよぉ……ボクは科学部じゃないよ〜?」
そっか、そっか……君達が科学部か。では──
「──神妙にお縄につけぇい人の心も無ぇドの付くクズ共がッ!」
先程までオレを縛っていた縄で、今度はこのドの付く畜生共を縛る!
ん? 否定してた奴???
──ふッ。勿論、一緒に縛るよ当然じゃん!
「ぎゃーーーーーッッッ!!!!!」
「お前だってドの付くクズだろうがよこの守銭奴が!」
「ブーメラン乙ッッッ!」
「おーおーイキが良いねぇ! テメェらマジで覚悟しろよ生まれた事を後悔させてやる!!!」
◆◆◆
「( ´Д`)y━」
「くすんッ!」
「もうお婿にいけない!!!」
「責任取って!」
はいはい吠えるな、憐れな者共よ。
「──断る! で、あの粘菌生物なに?」
そう、とてもお見せ出来ない縛られ方をしている憐れな者共に問う。
「知らん」
「追手から逃げる為に薬品やら劇物を適当にチャンポンしたら何か出来た」
「因みに、オレらの言う事もきかない」
ほう……ほぅ…………?
その場で、大きく息を吸う。
そして次の瞬間──!
「──バァーカブァーカッッッッッッッッ!!!」
と、中指さんを立て、オレはそう……室内を揺らすほどの大声量で怒鳴っていたのだった。
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